【高校野球】「何の特徴もないチーム」の市船橋が得た手応え V候補・習志野に勝てた訳とは?

先発した市立船橋・中村倭士【写真:小西亮】

先発した背番号「11」の中村は習志野打線に「雰囲気があってかっこいいな」

一気呵成に強敵を飲み込んだ。高校野球千葉大会の第2地区トーナメント決勝に挑んだ市立船橋は10日、昨年春の選抜準優勝の習志野に12-2の大差で5回コールド勝ち。全8地区の優勝校による15日からの決勝トーナメントに駒を進めた。優勝候補相手に予想外の一方的な展開にも、市立船橋ナインには確かな自信があった。

「実績では1ランクも2ランクも上」と櫻内剛監督もいう手強い習志野に、初回から一歩も引かなかった。1番・菅谷真之介内野手の二塁打で口火を切り、犠打と犠飛で先制。機先を制すると、2回に長短7本の快音を重ね、一挙6点を奪った。3回も2点を加えて習志野のエース山内翔太投手をマウンドから引きずり下ろした後も、攻撃の手を緩めない。4回にも3点を奪い、終わってみれば17安打12得点。完勝だった。

「初回に僕が出ることが重要だと思っていました」。この日3打数3安打4打点と大暴れだった菅谷は振り返る。思惑通りの役目を果たし、チームは乗った。ナインの共通意識は「丁寧なプレー」。2回の猛攻についても「いつもは雑になってしまう部分があるんですが、しっかりみんなで丁寧につないでいけました」と菅谷はうなずいた。

攻撃の勢いは、守備にも伝播する。先発は、今大会初登板となった背番号「11」の2年生・中村倭士投手。この日の朝に告げられたといい「まさか自分が投げるとは思ってもみませんでした」と驚いたが、その分気負う暇もなかった。選抜準優勝のメンバーが多く残る習志野打線と向き合っても「テレビで見ていた選手たちで、雰囲気があってかっこいいな」と思ったほど自然体で構えていた。

大会に入って選手たちの成長を実感「今までやってきたことが出ているんだと思います」

初回は先頭に中前打を許したものの、続く打者の犠打で一気に緊張がほぐれた。「1つアウトを取れたことは大きかったです」。無我夢中で腕を振り、右のふくらはぎがつった3回途中に降板した。1点は奪われたものの、プロ注目の好打者が居並ぶ打線を考えたら十分すぎる出来。「もう少し体力をつけないと」と頭をかいたが、表情は充実感にあふれていた。

「何の特徴もないチームですよ」。櫻内剛監督はそう言う。投打ともに絶対的な存在はいない。だからこそ、攻撃では丁寧に安打を重ね、守備は丁寧にアウトを重ねていくことが勝利への近道だった。「きょうの勝ちが(チームの)すべてだと思います。逆方向やセンター方向にコツコツ打って点を取っていけました」。強引にならず、それぞれが役割を完遂し、夏をつなげた。

昨秋は打力に課題を残し、冬はとにかくバットを振ってきた。櫻内監督も「いい形で春を迎えられそう」と手応えを感じていた矢先のコロナ禍。自粛期間が明け、練習試合が再開されると、思うような結果が出ずに夏を迎えた。「大会に入って振れるようになったのは、今までやってきたことが出ているんだと思います」とナインの躍進に目を細める。積み上げてきた練習量は裏切らない。千葉の頂点まであと3勝。丁寧に、ひとつずつ上っていく。(小西亮 / Ryo Konishi)

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