ハマ発“投げ銭ジャズ” 国内初、著作権問題クリア

 「日本初」となる“投げ銭ジャズ”の団体「YOKOHAMA JAZZ EGGS(ヨコハマジャズエッグス)」が立ち上がった。プロのミュージシャンがバーや居酒屋などに出向いて演奏するが、ギャラや機材は一切不要。お客さんからの投げ銭だけをいただきます、という仕組みだ。3日午後7時半からは、横浜・馬車道の「bar・BRICKS」で設立記念の投げ銭ライブを行う。

 同様のライブ形態は以前からあった。ただベーシストで団体代表の小澤基良さん(34)は、ずっと満たされないものを感じていた。

 ジャズになじみが薄い人向けには、人気曲をカバーして聴かせるのが常道だ。そのためには本来、日本音楽著作権協会(JASRAC)に申請し著作権(演奏権)使用料を払う必要がある。だが店側にその意識、知識がない場合も多く、申請せずに「グレーゾーン」で済ます場合がほとんどだった。それが後に発覚して、多額の著作権料を請求されるケースもあったという。

 「結局それだと派手に宣伝もできず、演奏していてもすっきりしない」と小澤さん。思案するうち、団体を立ち上げてJASRACと契約を結べば、投げ銭でも問題をクリアできるのではと思い至った。

 交渉は難航した。同様のライブの場合、JASRACが契約するのは通常、ライブハウスや店などの「場所」単位。「団体」が契約をして「流し」のように各店舗を渡り歩くケースはこれまでになかったからだ。

 交渉の窓口を任されたジャズプロデューサーの江口丈典さん(31)は、「例えば僕らが1万人の会場で演奏して不申告だった場合、『団体』だと移動してしまうので確認が得られないとか、申請そのもののやり方だとか、ともかく前例がないので苦労した」と振り返る。

 数カ月にわたる交渉の末、ようやく合意を取り付けた。「最後はJASRACからも、『あなたたちのやり方は日本で初めてだ』とお墨付きをもらいました」と江口さん。晴れて、大手を振って投げ銭ライブができることになった。

 団体立ち上げのそもそもの動機は、危機感だ。「横浜でやるジャズプロムナードには何万人も来るのに、ジャズクラブは閑古鳥。ジャズとの距離が遠かった」と小澤さん。このままでは若手も育たたず、じり貧になると危惧していた。

 団体には30人のプロが登録し、横浜市内を中心に活動していく。現在は理解のある10店舗ほどと連携、運営にはサポーターやクラウドファンディング(インターネット上の寄付)も募る予定だ。江口さんは「本物に触れる入り口をつくってジャズファンを増やし、ミュージシャンの仕事も増やす。人と店をつなぐ役割を果たし、街全体の活性化にもつなげたい」と展望を語った。

 問い合わせは、同団体ホームページ。

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