今年のロッテなぜ強い? チーム防御率&打率は下位も、専門家が指摘する「しつこさ」

ロッテ・井口資仁監督【写真:福谷佑介】

「これで安田まで打ち出したら、手がつけられなくなる」

■ロッテ 5-4 ソフトバンク(5日・PayPayドーム)

パ・リーグ2位のロッテは5日、敵地PayPayドームで首位ソフトバンクを5-4で破り、1.5ゲーム差に肉薄した。リーグ3位からクライマックスシリーズを勝ち上がり日本一に輝いた2010年以来の、“マリーンズ旋風”が吹き荒れるのだろうか。

好調のロッテだが、チーム防御率はリーグ5位の4.38(成績は5日現在、以下同)。打線の方も、チーム打率はリーグ4位の.245、規定打席到達者の中での打率チームトップは.277の中村奨とそれほど目立った成績ではない。それでも貯金9を稼ぎ首位に迫れているのは、なぜか。元ヤクルト外野手で、昨年までソフトバンクのコーチを5年間務めた飯田哲也氏は「ロッテの強みは、送りバントでも進塁打でも、とにかく走者を得点圏にキッチリ進め、しつこく1点を取る野球を徹底できているところ」と分析する。

この日もしかりで、2点ビハインドの7回、先頭の加藤が三塁手・松田宣のエラーで出塁すると、以降の打者はライト方向への打撃を徹底。マーティンが右前打、清田も右前適時打と続いて1点差に迫り、なおも1死一、二塁から、4番・安田は初球の真ん中の速球を一塁ゴロにして走者を二、三塁に進めた。続く中村奨の逆転2点二塁打へ、効果的につなげたのだった。

確実に得点圏に走者を進めるからこそ、19本塁打・48打点のマーティン、12本塁打・52打点の井上の存在も、より相手にとって脅威となる。

「ロッテは次世代を見据え、育てながらこれだけ勝てているのだから立派」

対照的に、負けたソフトバンクは1点ビハインドの5回、先頭の明石が右前打で出塁したが、続く甲斐は送りバントをファウルにした挙句、カウント1-2からバスターエンドランのサインに対し、低めのボール球を空振りし三振。スタートを切っていた一塁走者・明石も刺されて併殺となり、チャンスの芽を摘んでしまった。柳田ら主軸が好調の時は、豪快に打ち勝つ野球を展開できるソフトバンクだが、現状のように打棒が振るわない時には、ロッテのように自分がアウトになっても走者を進めて次へつなげる姿勢が必要になる。

また、井口監督は7月中旬からプロ3年目・21歳の安田を4番に置き、打率.217、4本塁打の不振にも関わらず動かしていない。育成型の4番といえる。飯田氏は「確かに、安田の長打力には非凡なものがある。首脳陣は、同い年のヤクルト・村上があれだけ打っているのだから、おまえもやってみろ、とハッパをかけているのではないですか?」と評する。「ロッテは次世代を見据え、育てながらこれだけ勝てているのだから立派。いまのロッテ打線で、安田が打ち始めたら手がつけられなくなる。そういう意味で、今季の残り試合のキーマンといえるかもしれません」と続けた。

今季のロッテは、オリックス(12勝2敗1分)とソフトバンク(7勝3敗1分)の2球団から“大口”の貯金を稼ぎ、日本ハムとはほぼ5分(7勝5敗)。西武(5勝9敗)、楽天(6勝9敗)には負け越している。優勝にこぎつけるには、“お得意様”との関係を維持しつつ、苦手なチームからも星を拾いバランスを取ることも必要になりそうだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

© 株式会社Creative2