ロッテ2年目左腕がマウンドで持つ冷静さと熱さ 成長を支える「野球ノート」の存在

ロッテ・小島和哉【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

今季先発ローテの一角を担う小島和哉、プロ入り後に目にした活躍の舞台裏

プロ2年目ながら早くも先発ローテーションの一角として、存在感を大きくしているロッテ小島和哉。9日の日本ハム戦では7回を投げて5安打1失点と好投して勝利投手となった。

今季は12試合の先発を終えた時点で、5勝5敗、防御率3.52の成績を残し、チームに勝機を与えている。その左腕から繰り出されるストレートは140キロ前後ながら球威は抜群。大胆に内角を攻めることを恐れず、スライダーやチェンジアップといった変化球を織り交ぜながら、アウトの山を築いていく。

ルーキーイヤーだった昨季は、1軍で10試合を投げ、プロ初勝利も飾ったが、定着するまでには至らなかった。1軍と2軍を行き来しながら心掛けたのは、シーズンを通してローテを守れる体力作りだ。足を踏み入れた憧れのプロ野球。そこで目にしたのは、華やかな活躍の裏にある先輩たちの努力だった。

「自分がアマチュアの時に見ていたプロ野球は華やかで格好いいというイメージで、そのイメージを持って入ってみたら、活躍する人たちというのは準備だったり考え方だったりが本当に凄かったんです。自分はウエイトをたくさんするタイプではなく、基本的にランニングをメインとしてやっているんですけど、去年だったら涌井(秀章)さんや益田(直也)さんの走る量に驚かされました。あれだけ走るから、長く投げても体が壊れないし丈夫。今年、涌井さんの勢いが止まらないのも、そういうところに理由があるんじゃないかと。実際にこの世界に入ってみて、活躍する選手を身近で見たからこそ、準備や考え方の大切さを痛感しています」

1年目に得た学びをしっかり生かし、今季は開幕から順番を空けることなくローテを守っている。「1試合だけすごいピッチングをするよりも、全試合でクオリティスタート(6回以上自責3以下)を達成したり、試合を作ることの方がすごく重要」というのが信条だ。

「やっぱり自分に勝ちがつけばチームの勝利にも繋がるので、そこを目指すことが一番。ただ、味方が打つ打たないはピッチャーがどうすることもできない部分でもあるので、まずは攻撃にいい流れで繋がるようなピッチングをしたいと思っています。そうすれば、勝つパーセンテージは上がると思うので、今は試合を作ることを最重要視しています」

課題整理のためにフル活用する「野球ノート」の存在

試合を作り、チームに勝つチャンスを与えられる投球を積み重ねれば、自然と信頼も増してくる。チームが安心してマウンドを任せられる投手に成長するためにも、欠かさずつけているのが「野球ノート」だ。浦和学院高時代は毎日書き残していた「野球ノート」だが、その重要性を再認識したのがプロ初登板を果たした2019年4月4日の西武戦だった。この試合で2回8失点とプロの厳しさを味わった左腕は、翌日に1軍登録抹消。「本当に数少ないチャンスを物にするしかない。最低でも同じ失敗を次の試合ではしないように」と、頭の中で課題を整理する意味でも「野球ノート」をフル活用することにした。

試合開始から降板まで、対戦相手の打順を追いながら良かった点と悪かった点を書き出す。さらに、次の先発試合までの期間に意識的に取り組みたい課題を書き込んで、視覚化させている。「常に目に見えるところに書いておくと、取り組むべきことが明確になります。もちろん、書いたからと言って同じ失敗を繰り返さないわけではないんですけど、やりっぱなしにしないで復習することは大事」と話す。

中には、振り返るのが辛い試合も「メチャメチャあります」と笑うが、成長するためには自分の弱点と向き合う強さも必要だ。書き出してみると「前回はでなかったけど前々回に課題に挙がっていたことだったり、ミスすることは大体同じようなこと」と、自身の傾向も自覚できるようになった。

「最近だと、2アウトを取っても回を締めくくれずにリリーフ陣にバトンを渡す形が続いてしまっている。信頼は1試合1試合の積み重ね。まずは目の前の1試合を大事に、そしてがむしゃらにやっています」

グラブに刺繍した「気持ち」の文字「若手だからと一歩引いていたらやられてしまう」

「野球ノート」のおかげで見つかるのは課題ばかりではない。自信を持って伸ばしていきたい長所も見つかる。小島が伸ばしていきたい長所は「インコースにしっかり投げきる」スタイルだ。

「自分の中ではインコースにしっかり投げきることが特徴というか、自信を持っているところ。内角球の再現性を高めたり、勝負勘をしっかり磨いていきたいと思います。もちろん、インコースに投げるのは勇気がいること。でも、そこに投げきれないと、結局は打たれてしまう。今は投球術があるわけではないので少し偏った配球になってしまうかもしれませんが、勝負しにいかなければ勝負にならない。まずは特徴をしっかり出せるようにしたいと思います」

愛用するブルーのグラブには「気持ち」と刺繍されている。大学時代、ヤンキースの田中将大がグラブに「気持ち」という刺繍を入れているのを見て、自分を鼓舞する意味でも入れるようになった。

「練習では投げ方とかを意識するんですけど、試合になったら相手のバッターと対戦するので、自分との勝負にならないように、投げ方がどんなにグチャグチャでも抑えられればいい。パ・リーグはすごいバッターが多いけれど、若手だからと一歩引いていたらやられてしまうので、本当に向かっていく気持ちは大事だと思います」

「野球ノート」で冷静に自己分析をしながら、マウンドに上がれば熱い気持ちでぶつかっていく。2年目左腕の挑戦は始まったばかりだ。(Full-Count編集部)

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