西武平良は熾烈な新人王争いを制するか? 専門家が求める「特筆すべき数字」

西武・平良海馬【写真:荒川祐史】

18日のオリックス戦では1点リードの8回に登板し1回無失点で25ホールド目

■西武 3-2 オリックス(18日・メットライフ)

西武は18日、本拠地メットライフドームで行われたオリックス戦を3-2で勝利した。パ・リーグ新人王候補のセットアッパー、プロ3年目の平良海馬投手は3番手として8回に登板。1イニングを無失点に抑え、ホールド数を25に伸ばした。新人王は楽天・小深田大翔内野手との一騎打ちの様相。現役時代、ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜で活躍し、18年まで2年間、ヤクルトでバッテリーコーチを務めた野球評論家の野口寿浩氏は「これまでの2人の活躍の印象は同じくらい」と明かし、平良がタイトルを獲得するためには「防御率、ホールドポイントを上げ、印象を残すことが大事」と話した。

この日も馬力のある直球は健在だった。3-1と2点リードの中、8回のマウンドに上がった平良。オリックスは1番からの好打順だったが佐野を二ゴロに抑えると、福田にはカーブを2球続けた後、153キロ直球で空振り三振。続く安達も二ゴロに仕留め、1発のある4番吉田正に回さず、守護神・増田にバトンを渡した。

平良は八重山商工からドラフト4位で18年に西武に入団。プロ2年目の昨年は26試合2勝1敗6ホールド、防御率3.38の数字を残し、プロ3年目の今季はここまで44試合に登板。1勝0敗、リーグ2位の25ホールドで防御率1.70、42回1/3を投げ、49奪三振と、高い奪三振率を誇っている。開幕からヒットを許すことなく27連続アウトを奪い、自己最速の160キロもマーク。8回のセットアッパーのポジションを担う。

野口氏は今季の平良について、こう解説する。

「150キロ台後半の直球をバンバン投げて、高めのボールで空振りを奪うイメージがあったが、それだけではないピッチングをしていて、変化球も投げ切れている。球が強い投手がしっかり変化球も投げ切れると、バッターは嫌。変化球でもコントロールがつくようになったことで、安心して変化球も投げられるようになった。困ったら直球なんだろうが、直球1本槍ではなくなったことで困ることがなくなった。こういうタイプの打者は直球待ちで打席に立つが、その中で変化球を同じ腕の振りで投げてくるので、打ちにくい。これだけ数多くの試合に投げていて、防御率1.70というのは、かなり信頼のおけるセットアッパーです」

ライバルは楽天・小深田「ここまでの活躍の印象は同じくらい」

一方、ライバルとなる今季ドラフト1位入団の楽天・小深田はここまで95試合に出場し、打率.280、1本塁打、22打点、15盗塁。走攻守で安定した成績を残している。新人王争いは、まさに両者一騎打ちの状況。野口氏は「投手同士、野手同士の比較ではないので、比較するのは難しいが、今年の新人王は平良か小深田のどちらかになると思う。ここまでの活躍の印象は同じくらい。2人とも新人王を獲れるだけのものを見せてくれている。ロッテの安田は4番を打っているが、(打率.224、6本塁打、48打点と)数字的に何かずば抜けたものがある訳ではない」と語る。

では、平良がタイトルを獲得するためには、残り19試合で何が必要になってくるのか。野口氏は、印象を残すことが大事だと強調する。

「平良は残り19試合の中で、何試合、勝ち試合で投げるか。もう1点も与えずに、防御率をさらに良くしていき、ホールドポイントを増やしていくことが、新人王に近づく道。投手は、毎日試合に出る野手と比べて出場機会が限られるので、強いイメージを残さないといけない。その中で野手よりも印象を残すためには、特筆すべき数字を残すことが大事になると思う」

西武では現在、増田が守護神として君臨しているが、野口氏は平良も将来的に抑えを担えるだけの逸材だと断言する。だが、守護神の座を任せられるようになるためには、年間を通しての安定感が必要になってくるという。

「今の平良は、今年の開幕の頃と比べて、直球の勢いが落ちている。疲労はどんな投手でも仕方のないことだが、ほかの投手と比べて、その差を大きく感じる。だが、投げてみないと分からない投手は安心してクローザーとして出せない。体が元気な時の球と、シーズン終盤の疲れてきた時の球の差がもっとなくなれば、クローザーも任せられる。それはスタミナをつけていけば改善される。難しいことだが、シーズンを乗り切る体力は絶対に必要」

新人王、そしてさらに先を見据えれば、クローザーのポジションも見えてくる平良。タイトル獲得のチャンスを前に、シーズン終盤の残り試合でどういった投球を見せてくれるのか。その投げっぷりに注目が集まりそうだ。(Full-Count編集部)

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