都市農業の可能性追求 “高付加価値品”に注力、横浜・永島農園

 シイタケとキクラゲに特化した栽培を行う農家が、横浜市金沢区にある。永島農園の永島太一郎さん(34)。都市部ゆえの狭い耕作面積でも栽培、収穫ができ、収益をあげられるものをと、2012年から始めた。現在は「おひさま」ブランドとして生で販売するほか、加工品の開発、販売にも力を入れている。

  シイタケやキクラゲは通常、遮光性が高い場所で栽培するが、永島さんはあえてビニールハウスの天井に青いビニールシートを張り、薄く日光が入るようにしている。湿度、温度管理に多少の手間はかかるが、原木シイタケにもっとも近い栽培方法で、味が濃く収穫量も多くなるという。昨年は約500平方メートルのハウス内で、シイタケ約20トン、キクラゲ約3トンを収穫。今年はハウスを増床し1・5倍ほど収穫量を増やすのが目標だ。

 午前中に収穫し、午後に納品できる都市部ならではの利便性を生かし、取り扱ってくれるスーパーや青果店、飲食店を増やそうと奔走する日々。現在、周辺の一部スーパーで取り扱うようになった。特に生キクラゲは希少であるからこそ、売り込みにも力が入る。あまりなじみがない食材でもあり、レシピ開発も行う。県内の若手農家らとチームを組み、各地で開かれるマルシェなどにも積極的に参加している。

 同区内で年々畑が減少する中で、あえて都市農業の可能性を追求する永島さん。高齢化と後継者不足の影響は深刻だが「複数の品種に手を出さず、安定した栽培と販売、付加価値の高い加工品づくり、収益性の向上といったことをしっかりと形にすることで、農業の活性化につながるのでは」と考えているからだ。

 10月から6月はシイタケ、5月から10月はキクラゲを栽培。どちらも収穫体験ができるほか、敷地内に設置した手作り石窯を利用し、ピザやバーベキューを楽しむことができる。加工品では、乾物のほかにつくだ煮、洋風だし、シイタケラーメン、あられを開発し、直売所とオンラインショップで販売している。永島さんは「おいしい楽しいから、農業の新しい形を知ってもらいたい」と話している。

 問い合わせ先は同農園電話045(780)5706。平日午前9時から午後4時まで。

© 株式会社神奈川新聞社