2月23日は中島みゆきの誕生日!その歌から “生きるためヒント” を見つけてみよう  6分超の大作「誕生」。収録アルバム「EAST ASIA」も必聴!

2月23日は中島みゆきの誕生日

2月23日は天皇誕生日ですが、同時に中島みゆきさんの誕生日です。ですので、この日はファンにとって、中島みゆきさんの誕生を祝う重要な1日でもあるのです。

思えば3年前の2月、コンサートツアー『中島みゆき 2020ラスト・ツアー「結果オーライ」』のNHKホール公演を運よく観ることができました。しかし、コロナの影響で8公演を終えたところで中止になってしまったので、貴重なコンサートを観ることができてとてもラッキーでした。この幻のツアーはライブCDになって発売されていますので、気になる方は是非チェックしてみてくださいね。

中島みゆきは1975年にシングル「アザミ嬢のララバイ」でデビュー。1977年に「わかれうた」、1981年に「悪女」が1位を獲得し、「悪女」のアルバムバージョンを収録した『寒水魚』が1982年の年間チャート1位を記録しています。この時期からユーミンと共に「ニューミュージックの女王」と呼ばれるようになりますが、そんなことで満足しないのが中島みゆきです。1984年のアルバム『はじめまして』から数年間、様々なアレンジャーと組み、新たなる自身の音楽を追求することになります。この時期の活動を総称してファンは “ご乱心時代” と呼んでいますが、1988年にアレンジャー・瀬尾一三との出会いで、ついに “ご乱心時代” が終焉を迎えます。

1988年のアルバム『グッバイガール』から現在に至るまで全曲のアレンジを瀬尾一三が担当することになるので、ここが “新生・中島みゆき” の誕生と言っても過言ではないでしょう。瀬尾一三がアレンジを手がけるようになり、中島みゆきは多くの名曲を世に送り出していくことになりますが、「浅い眠り」「空と君のあいだに」「旅人のうた」「地上の星 / ヘッドライト・テールライト」はミリオンセラーを記録しています。1989年から “言葉の実験劇場” である「夜会」が始まります。コンサートでもない、演劇でもない、ミュージカルでもない新しい表現方法で始まったこの舞台は大きな話題になりました。

“人間賛歌” がテーマ、6分51秒の大作「誕生」

今回はみゆきさんの “誕生日” に引っかけて、名曲「誕生」をピックアップしてみようと思います。「誕生」は1992年3月4日に発売された27枚目のシングルですが、なんと6分51秒もある大作です。当時は8cmシングルとして発売されていたのですが、8cmシングルとしても異例の収録時間だったかもしれません。この「誕生」は、この世に生を受けた人すべてを祝福する “人間賛歌” がテーマで、これでもか! というくらいに盛り上がる感動のバラードです。

 ひとりでも私は生きられるけど
 でも誰かとならば 人生ははるかに違う
 強気で強気で生きてる人ほど
 些細な寂しさで つまずくものよ

―― こんな印象的なフレーズで始まる歌詞ですがそこには、みゆきさんの優しいまなざしが溢れています。「誕生」は、東宝創立60周年記念作品として制作された映画『奇跡の山 さよなら、名犬平治』の主題歌として書き下ろされた曲ですが、失語症の少女(中江有里)とガイド犬(平治)の交友を描いたストーリーです。

 わたしいつでも あなたに言う
 生まれてくれてWelcome

―― この感動的なフレーズで圧巻を迎える「誕生」ですが、「こんな自分でも生きていていいんだ」という “自己肯定感” を持たせてくれる人間賛歌なのです。当時、最高位こそ13位でしたが、ベストアルバム『大吟醸』に収録され、「夜会」の中でもクライマックスシーンで歌われ、『中島みゆき 2020ラスト・ツアー「結果オーライ」』の中でも選曲されるなど、数ある代表曲の中でも重要な位置に存在している!曲です。

中島みゆきのエッセンスが凝縮された「EAST ASIA」

1992年10月7日に「誕生」を収録した20枚目のオリジナルアルバム『EAST ASIA』が発売されていますが、この時期の中島みゆきのエッセンスが凝縮されている作品と呼べるでしょう。

「誕生」をはじめ、キャリア初のミリオンセラーを記録した「浅い眠り」、前年に行われた「夜会Vol.3 KAN(邯鄲)TAN」で歌われた新曲「萩野原」が収録されています。しかし、何といっても「夜会」のテーマソングである「二隻の舟」を収録されていることも見逃せません。「二隻の舟」の存在をなくしては、中島みゆきを語れないほど重要な1曲になっています。この曲はその後も「夜会」の中で必ず取り上げている1曲ですが、8分13秒という長さの超大作です。

発売当時の『EAST ASIA』のセールスポイントは、ミリオンセラーになった「浅い眠り」と「夜会」のテーマソングである「二隻の舟」が収録されていることでしたが、このアルバムのラストには「糸」が収録されているのを忘れてはいけません。しかし当時はあくまでもアルバムの中にひっそりと収録されていた1曲だったので、まさか20数年後に平成を代表するスタンダードナンバーになるとは夢にも思わなかったと思います。

のべ40組以上のアーティストにカヴァーされた「糸」

「糸」は1998年にシングル「命の別名 / 糸」として発売されていますが、話題になったのは2004年に、Mr.Childrenの櫻井和寿と小林武史が結成した、“Bank Band” のカヴァーアルバム『沿志奏逢』で取り上げられたことが大きかったと思います(ちなみにこのアルバムの中で中島みゆきの「僕たちの将来」もカヴァーしています)。

その後「糸」は多くのアーティストにカヴァーされ、2022年現在、のべ40組以上のアーティストによって相次いでカヴァーヴァージョンが商品化されているそうです。日本音楽著作権協会(JASRAC)の著作権使用料分配額(国内作品)でも、毎年のように上位にランクインしていて、2016年と2017年には1位(金賞)を獲得しています。発売から20数年後にこのような現象が起きるのも、中島みゆきの楽曲が常にスタンダード性を帯びている所以でしょうね。

そんな中島みゆきですが、3月1日に44枚目のオリジナルアルバム『世界が違って見える日』をリリースします。コロナ禍の世界になって約3年が経過しますが、現代を生きる我々の気持ちを代弁しているかのような意味深なタイトルがつけられています。

2020年代に入り世界中が混沌としていますが、中島みゆきはいつの時代にも歌を通して大切なことをメッセージとして発信してきました。そして、人間が抱えている傷を癒してくれる存在でもありました。現代はSNSの普及で、言葉が軽んじられていますが、今一度みゆきさんの歌詞を深読みしていただきたいと思っています。読んだ後に、生きるヒントのようなものを見つけてもらえたら、ファンとしてこんなに嬉しいことはありません。

カタリベ: 長井英治

アナタにおすすめのコラム 名曲がズラリ!中島みゆき「寒水魚」1982年の年間アルバム売上第1位

▶ 中島みゆきのコラム一覧はこちら!

80年代の音楽エンターテインメントにまつわるオリジナルコラムを毎日配信! 誰もが無料で参加できるウェブサイト ▶Re:minder はこちらです!

© Reminder LLC