【ウクライナ侵攻1年】市場価格高騰が直撃 ラーメン店受難、小麦も背脂もメンマも 「全部のせ」千円台に

原価の高騰で値上げされたラーメン=「京都ラーメン森井」愛甲石田店

 ロシアがウクライナに侵攻を始めて24日で1年。食料やエネルギーの供給不安が世界的に高まり、産出国の輸出制限などによる市場価格の高騰は神奈川県内企業も直撃した。幅広い産業で経営が圧迫され、手探りの価格転嫁を強いられている。停戦の兆しはなく、なおも試練が続く。

 京都の熟成しょうゆに、国産鶏と背脂で炊きだしたスープが自慢の「京都ラーメン森井」。愛甲石田店(厚木市)の券売機は、ほとんどのメニュー価格がシールで上書きされている。

 定番のラーメンは780円。昨年8月、2020年11月の開業後初めて30円の値上げに踏み切った。「本当は800円台にしたいが、お客さまに心苦しくてできない」。直営するクレアーレ(伊勢原市)社長の谷川敏弘さん(33)は明かす。

 看板の「全部のせ」5種は100円ほど引き上げ、全て千円台になった。長引くコロナ禍も響き、来客は2割ほど減ったという。

 原料の小麦は国内消費量の9割近くが海外産で、安定確保のために政府がまとめて輸入している。国が製粉会社に売り渡す半年おきの価格は、21年10月に19%、22年4月にさらに17.3%上昇した。

 世界的な小麦需要の増加や主産地である北米の不作が主因で、ともに輸出国のロシアとウクライナの情勢緊迫化による供給懸念も国際相場を釣り上げた。

 22年10月は戦闘の長期化や円安の影響を考慮し、異例の物価高対策として据え置かれた。本来なら2割近く値上がりし、最高水準になるはずだった。

 総務省の小売物価統計調査によると、中華そば(ラーメン)1杯の平均価格は全国で上昇している。例えば、「家系」発祥の横浜市内は580円(昨年12月)。1年前より35円高い。

 同店の仕入れ麺の価格はこの1年で1.1倍に抑えられているものの、具材が軒並み急騰。背脂は1.3倍、メンマは1.4倍に跳ね上がった。

 谷川さんは厚木市内にイタリア料理店も展開し、原価高騰はパスタやピザにも及ぶ。各メニューに1品添えて商品価値を高めたり、従業員の効率的な配置で人件費を抑えたりしてしのいでいる。

 据え置かれた輸入小麦の売り渡し価格は、4月の改定で上昇する見込みもある。谷川さんは「早期終戦を」と願う。

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