【連載】World Baseball Classic あの瞬間をもう一度⑤

今年3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック。第5回となる本大会には20ヵ国のスター選手が「ベースボールの世界王者」をかけた熱戦を繰り広げる。本シリーズでは2006年の初大会から撮り続けているカメラマン田口有史氏が捉えた、代表の母国を歓喜で打ち震わした歴史的な瞬間を紹介する。写真を振り返りながら、感動で泣け叫んだ瞬間、悔しさでうなりを上げた瞬間を思い出そう。

第3回ワールド・ベースボール・クラシックにおいて準決勝で敗れた日本。2017年の前回大会でのトロフィー奪還を目指して、2009年にイチローさんの伝説の一打が生まれたドジャースタジアムへ乗り込んだ。

優勝まであと2勝。準決勝の相手は今回こその優勝に向けて、結束力が高まりつつあったアメリカ。試合は小雨の降りしきる中、ミスの許されない1点を争う痺れる展開となった。

先発の菅野智之が4回、名手菊池涼介のエラーで出たイェリッチをマッカチェンのタイムリーヒット1点のみに抑えると、6回エラーを取り返すべく、その菊池涼介がまさかのホームランで試合は1対1に。7回からは今シーズンよりメッツに入団する千賀滉大がアメリカ打線を無失点に抑え同点のまま8回へ。

しかしこの回アメリカはクロウフォードのヒットとキンズラーの2塁打で1アウト2、3塁とすると、打席にはアダム・ジョーンズ。千賀のカーブにバットを折られ内野ゴロ。

日本がピンチを凌いだかと思ったその時、サード松田の手からボールがファンブルする姿をレンズ越しに捉えた。

本塁への送球は間に合わず、クロフォードが生還してもぎ取った1点が決勝点となり、日本は2大会ぶりの世界一への道が絶たれ選手たちは涙と悲しみに暮れ、アメリカはこの接戦を制することによって勢いに乗り、決勝戦では2次ラウンドで敗れたプエルトリコを8-0と圧勝してついに初優勝を達成した。

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田口 有史(たぐち ゆきひと)/日系アメリカ人の親戚がいたこともあり、幼少の頃よりMLBに興味を持ち、中学生の頃からよりのめり込む。アスリートになれなかったため写真を始め、MLBを撮りたくてアメリカ留学。そのままフリーランスとして活動をし、30年近くMLBを撮影。全30球団を毎年必ず撮影することを自身に課し、1年の半分近くをアメリカで過ごす。オフィシャル・フォトグラファーとして予備予選なども撮影しているので、おそらく世界で最もWorld Baseball Classicの試合を撮影している。(写真:田口有史)

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