吃音に苦しむ少年の人生を変えたジョージ・スプリンガーとの出会い

メジャーリーグを代表する強打の外野手として活躍中のジョージ・スプリンガー(ブルージェイズ)は子供のころから吃音に悩まされ、それを受け入れられるようになったのはメジャー昇格後だったという。現在は吃音の子供たちを支援する団体のスポークスマンを務めるなど、自身の経験を若い世代へ積極的に還元しており、スプリンガーとの出会いに救われた子供も少なくない。メジャーリーグ公式サイトのジェシー・サンチェス記者の息子マテオくんもスプリンガーとの出会いによって人生が変わった子供の1人である。

サンチェス夫妻はマテオくんが吃音を克服できるように様々な方法を試した。しかし、吃音はそう簡単に克服できるものではない。吃音に対処するためのテクニックは存在するものの、基本的には吃音は治らないのだ。様々な方法を試しているうちに、サンチェス夫妻はマテオくんに余計なプレッシャーを与え、負担を強いていることに気がついた。

そんなある日、マテオくんは吃音を持つ有名人を調べるなかで、スプリンガーが吃音であることを知った。野球記者のサンチェスは「スプリンガーなら息子と会わせることができるかもしれない」と考え、当時スプリンガーが所属していたアストロズでベンチコーチを務めていたアレックス・コーラ(現レッドソックス監督)に連絡を取った。

2017年8月、アストロズが敵地アリゾナでダイヤモンドバックスと対戦するときにスプリンガーとマテオくんの出会いは実現した。マテオくんは勇気を振り絞って「1つだけ質問があります。どうやって吃音を克服したのですか」とスプリンガーに尋ねた。「正直に言うと、まだ吃音はあるよ」とスプリンガー。それからの数分間、マテオくんとスプリンガーは2人だけの世界で会話を楽しんだ。その時間がマテオくんの人生を変えた。サンチェス記者は「あまりにも親密な雰囲気だったので、私は部屋を出ていかなければならないように感じた」と記している。

スプリンガーとの出会いのあと、マテオくんは吃音を受け入れ、人前でも自信を持って自分らしく話せるようになったという。「なぜ普通に話せないの」と言われて傷つくこともあったが、6年前の夏のスプリンガーとの出会いがマテオくんを支えている。2人は2017年以降、定期的に連絡を取り合い、先日はスプリング・トレーニングの場で再会を果たした。

吃音と付き合いながらメジャーリーグの舞台で活躍するスプリンガーの姿は、マテオくんに限らず、世界中の多くの人々や子供たちに勇気を与えているに違いない。

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