横浜・上郷猿田地区 東急建設が大型開発断念 盛り土の安全対策、建築コスト高騰で JR港南台駅の南1キロ

上郷猿田地区開発区域

 準大手ゼネコンの東急建設(東京都)が、横浜市栄区の上郷猿田地区で進めていた住宅や商業施設などの大型開発計画を断念したことが3日、分かった。造成に必要な盛り土の安全対策や建築コストの高騰を踏まえ、事業継続が困難と判断した。撤退後も、土地の所有者として緑地などの維持管理を続けるという。

 開発計画の対象地は約32ヘクタールと広大で、JR港南台駅の南約1キロに位置し、「瀬上市民の森」に隣接している。同社は西側の約11ヘクタールを「市街地エリア」、それ以外を「環境保全エリア」と位置付けて事業計画を策定。市街地エリアで予定していた一戸建て住宅やマンション、商業施設、医療モールなどの複合開発について、計画を廃止した。

 理由の一つとして、同社の広報担当者は「盛り土」を挙げた。2021年7月に発生した静岡・熱海での土石流災害を受け、今年5月に施行される「盛り土規制法」は、安全性の確保に向けて全国一律の基準を設けている。開発は大量の盛り土を前提としていたが、担当者は「想定していなかった配慮事項が増えた」と明かした。

 さらに、建築資材の急激な上昇により、総工費の見込みが「想定を大幅に超えた」ことが追い打ちとなり、2月28日に市へ開発計画の廃止届を提出した。

 また、対象地の7割弱を占める環境保全エリアでは、都市公園の整備や樹林地の保全を予定していたが、同社は市街地エリアとの一体開発を目指していたため、今後については「市や地権者と相談したい」とした。

 同社によると、対象地の大半は同社が所有しているが、民有地もあるという。複数の民間地権者との交渉内容については「回答を控える」とした。近隣住民への説明会の開催意向についても明らかにしなかった。

© 株式会社神奈川新聞社