SOMPOの「MYパーパス」って?一人ひとりの働く意味を企業価値につなげる

参加者同士が約8分の対話を通じてMYパーパスづくりを体感した

SB国際会議2023東京・丸の内 ワークショップ/オンデマンドセッション

パーパス経営に取り組む企業が増える中、SOMPOホールディングスは、社員一人一人が働く意味や生きる目的、つまり「MYパーパス」を作成し、それを起点とした経営を進めている。MYパーパス作成のメリットは何か。企業価値の向上につながるのか。MYパーパスづくりを体感したワークショップと、オンデマンドセッションの様子を紹介する。(眞崎裕史)

パネリスト:
富岡洋平・THINK AND DIALOGUE 代表取締役社長
平野友輔・SOMPOホールディングス サステナブル経営推進部 部長
加藤素樹・SOMPOホールディングス 人事部 特命部長

3つの鍵は「WANT」「MUST」「CAN」

「目の前の仕事、取り組みは『何のため?』『誰のため?』という問いかけが大切になってきた」

ワークショップでは、SOMPOグループのマネジメント研修で講師を務めるTHINK AND DIALOGUEの富岡洋平氏が参加者に語りかけた。VUCAと呼ばれる予測不可能な時代に対応するには、上司と部下、経営者と社員がつながる必要があるという。そこでSOMPOグループが取り入れたのが「MYパーパス」だ。

それぞれのMYパーパスを明らかにする三つの鍵は、内発的動機の「WANT」(心が動く瞬間)、社会的責務の「MUST」(解決すべき社会課題)、保有能力の「CAN」(運命が与えた能力)だ。この3つが重なった領域こそ「自らを突き動かすもの」、すなわち「志」であり、MYパーパスであるという。ワークショップではこのうち、WANTの問いかけから参加者が2人一組になって対話を体験する時間が設けられた。

「これまでの仕事の経験で、どんな瞬間にワクワクしましたか」
「それはなぜですか」
「いつ、どんなきっかけでしたか」

問いを重ねるごとに、考えが広がり、まとまっていく。あるペアは、昔からサブリーダーの立場が多かったという女性の、「リーダーが優しいタイプの人になら、解決策や自分の考えを言いやすい」という話をきっかけに、どのような組織なら自身の能力を発揮できるかについて、対話を深めた。

8分ほどの短い時間だったが、参加者の収穫は多かったようで、「初めて会った方に自分の体験を話す中で、その時に何を感じていたのか、元々の経験を考えるきっかけになった」「自分が気づいていない部分や、自分にとって大切なものは何かを引き出してもらった」とそれぞれに手応えを語った。

社員と会社をつなぐサステナブルな新しいカタチ

実際、どうやってMYパーパスにたどり着くのか。富岡氏は「皆さんの中にすでにある。人生の物語、過去の体験に隠されている。それを仲間との対話で深く掘ることで思い出し、MYパーパスが浮かび上がり、言葉になる」と説明し、原体験と対話の重要性を強調した。SOMPOでは、MYパーパスを巡って上司と部下が対話する「1on1」研修を続けている。

ワークショップにはSOMPOホールディングスから、サステナブル経営推進部部長の平野友輔氏と人事部特命部長の加藤素樹氏も登壇し、2021年度から実践しているパーパス浸透への取り組みを説明。「1on1」参加者の満足度は95%以上といい、「飲み会では聞けなかった部下の本音が聞けてハッとした」といった感想が寄せられていると紹介した。加藤氏は「MYパーパスが、社員と会社をつなぐサステナブルな新しいカタチとして機能すると実感している」と強調した。

一方、参加者からは、MYパーパスと人事制度との連動に関する質問があった。これに対し、加藤氏は「上司にウケそうなパーパスをつくろうとする」といった問題が起きないよう、MYパーパスを人事制度からあえて切り離していると回答。MYパーパスを起点としたキャリア形成に向け、メンバーシップ型からジョブ型へと、人事制度の移行を検討していることが説明された。

変革のスピード感増す大きなムーブメントに

富岡氏(左)と平野氏

オンデマンドセッションでは、富岡氏と平野氏が対話形式で、SOMPOのパーパス実現に向けた取り組みを紹介した。29カ国・地域で事業を展開し、約7万4千人の社員を抱えるSOMPOグループ。「“安心・安全・健康のテーマパーク”により、あらゆる人が自分らしい人生を健康で豊かに楽しむことのできる社会を実現する」とのパーパスを明文化し、ステークホルダーに示している。

その会社のパーパスの起点が「MYパーパス」だ。「パーパス経営を実働させるには、従業員一人一人に伝わって、共感を得られることが重要」と平野氏。MYパーパスとSOMPOグループのパーパスを重ね合わせることで、パーパスの実現に向かっていくと説明した。富岡氏が「やらされ感がないことが重要」と強調すると、平野氏は「トップの発信とボトムアップ、引っ張り上げていくアーリーアダプターの存在で、大きなムーブメントになっていく。変革のスピード感が増すと感じている」と応じた。

一方、ステークホルダーが求めるのは「企業価値の向上」だ。パーパス実現の取り組みは、そこにつながるのか。SOMPOグループは、人的資本を起点としたインパクトパス(経路)を示し、財務価値・企業価値につながるルートを可視化している。MYパーパスの追求は、短期的には品質の向上や顧客評価の獲得により、売り上げが増加。中長期的には、新たなソリューションの開発につながり、社会課題の解決や大きなインパクトを生み出すという。

MYパーパス作成による社員のエンゲージメントの向上など、実際のデータを紹介した平野氏は「パーパス実現に向けたストーリーや取り組みを発信・訴求し、ステークホルダーとコミュニケーションを取りながら、より良い社会に向けて共創を進めていければ」と力を込めた。

本オンデマンドセッションは、3月31日までSB Online(アーカイブ視聴サイト)でご視聴いただけます。
※ご参加登録者様限定
https://sustainablebrandsonline.jp/login
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