舞台「ヴァニタスの手記」上演中

月刊「ガンガン JOKER」(スクウェア・エニックス刊)にて 2016 年 1 月号より連載中の望月淳による漫画を原作とした舞台「ヴァニタスの手記」昨年惜しくも 1 ステージのみの上演で幕を下ろした本作の再演公演となる舞台「ヴァニタスの手記」-Encore-、無事に幕を開けることができた。また、Blu-ray&DVD の発売も決定! 千穐楽公演は DMMにて配信。

初日公演に先立ちおこなったゲネプロ、舞台写真到着。
物語の舞台は 19 世紀のパリ。吸血鬼(ヴァンピール)の青年・ノエ(菊池修司)は、恩ある“先生”から頼まれ、 あるものを見つけるために飛空船でパリへ向かっていた。あるものとは、童話「蒼月の吸血鬼」に登場する機械 仕掛けの魔導書「ヴァニタスの書」。

まもなくパリに到着するかという時、ノエは飛空船の中で呪い持ちの吸血鬼の暴走による事件に巻き込まれる。 すると突然、ノエの前に吸血鬼専門の医者を自称する人間・ヴァニタス(植田圭輔)が現れ、あっという間に呪 いを治療して事件を解決してしまう。その手には一冊の本が…。その本こそ、ノエの探し求めていた「ヴァニタスの書」だった。

ヴァニタスは、吸血鬼はこのままでは呪い持ちの増加とともに滅びゆく運命だ、とノエに語る。高い戦闘力と頑 丈な体を持つノエを見込んだヴァニタスは、ノエに力を貸せと言い、2 人は共に長い旅を始めることになった。
「オレはオレの選んだ方法でお前たちの意志に関係なく必ず吸血鬼を救ってやる」。ヴァニタスの真の目的は、 そしてノエは旅路の果てにいったい何を見つけるのか…。

ほぼ 1 年越しのアンコール上演となった今作。積み重ねてきた再演への思いと、それぞれが別の現場で得てきた 経験値、深め育ててきた「ヴァニタスの手記」原作とキャラクターへの解釈を、カンパニー一同が全力でぶつけ る公演となった。
植田圭輔は、一見軽薄で尊大、しかし重い過去を想像させるヴァニタスを熱演。終盤に向けて少しずつキャラク ターの深部を観客に伝え、カンパニーを引っ張りながら物語の世界を深めて表現するさまは見事。昨年の公演よりも、さらにナチュラルにのびのびとヴァニタスを演じることを楽しんでいるように見える。

もう 1 人の主人公・ノエを演じる菊池修司は、くもりのない真っ直ぐ純真な熱さを持った芝居がノエのキャラク ターにマッチ。ヴァニタスを振り回し、振り回されながら謎に足を踏み入れ、自らの過去に向き合い成長してい くさまを体当たりで表現している。1 年越しにノエを演じられ、本作の舞台に立てる喜びが伝わってくるようだ。 また、丘山晴己演じるローランが登場する後半以降は、緊迫感と力を抜いて笑える箇所の緩急がより鋭くなっていく。

舞台美術で特に強い印象を残すのは、ライトに照らされて紅く蒼く浮かぶ月。彼らを見下ろすかのように常に存 在している。パリの街並みを模したセットは、時に飛空船の内部となり、大聖堂の地下にもなり、役者の芝居と 照明でまったく違う風景に見えるように作られている。ジャンヌ(七木奏音)の紅いガントレット、ローランの デュランダルといった大ぶりな武器も見栄えがする。

「ヴァニタスの書」の力の発動時には、映像と照明を併用したアニメーション的な表現が舞台上に再現される。 一方、黒い影などの禍々(まがまが)しく襲い来るものは、女性ダンサーたちが高い身体能力で表現。人ならぬ 動きで、怪しさ・恐怖・重苦しさを観客に感じさせる芝居を見せる。手段としてデジタルとアナログが融合して いるが、受ける印象としては作品の世界観そのままに、アナログのマンパワーの力が強い。
男性アンサンブル・ダンサーたちも、吸血鬼(ヴァンピール)、狩人(シャスール)の隊員など八面六臂の活躍 だ。アンサンブルメンバーがこの「ヴァニタスの手記」の世界観をがっちりと作りこんでいるからこそ、メイン キャストたちがそれぞれの役を演じることに集中し、まっとうできている。

脚本は、原作・アニメをベースに、大事なエピソードを積み重ねてヴァニタスとノエの関係性に変化を与え、2人の間に絆を生み出している。特に冒頭とラスト近くのシーンでのノエのセリフは、同じことを口にしていても ヴァニタスへの気持ちの変化が現れていて胸を底からわしづかみにされる気持ちになるだろう。

原作のコミックスファンはもちろん、アニメから入ったファンにとっても嬉しい演出も盛り込まれている。もち ろん、原作を知らずに舞台から入っても大丈夫だ。所々に「過去に何があったのだろう…」と想像をかきたてら れる描写が差し込まれているので、観劇後は舞台で描かれている先の展開が気になること間違いなしだ。
上演時間は、途中休憩 15 分を含んで約 2 時間 30 分。-Encore-(アンコール)でありながら、昨年の公演日の続きでもあり、菊池が戻っての初演でもある本公演。ノエ役に高本学を迎えて昨年上演できたあの 1 公演があっ たからこそ、この物語をさらに多くの人に届けたいというカンパニーの気持ちが強まったのではないかと感じる。
ヴァニタスとノエの関係性の変化、そして旅の始まりと最初のピリオドを劇場で確かめ、見届けてほしい。
公演は 3 月 12 日(日)まで。千穐楽公演は DMMにて配信も予定。

<公演概要>
日程・会場:2022 年 1 月 21 日(金)~30 日(日)シアター1010
タイトル:舞台「ヴァニタスの手記」
原作:望月淳「ヴァニタスの手記」/「ヴァニタスの手記」製作委員会 【脚本・演出】山崎 彬
出演
ヴァニタス:植田圭輔 ノエ:菊池修司/
ジャンヌ:七木奏音 ドミニク:澤田美紀 ルカ:前田武蔵 ルイ:矢代卓也 オルロック:中村哲人 Dr.モロー:鈴木理学/ ルスヴン:鷲尾 昇/
ローラン:丘山晴己
SUBCAST
先生、ほか:浅野康之 ノックス、ほか:香月ハル マーネ、ほか:酒井翔悟 アメリア、ほか:渡辺菜花 ベロニカ、ほか:下村 彩 カトリーヌ、ほか:野島怜衣珠 マリア、ほか:黒須杏樹 ジョルジュ、ほか:海本博章 蜘蛛の仮面の男、ほか:佐松 翔
【制作】ナッポスユナイテッド
【主催】アニプレックス/ソニーミュージック・エンタテインメント/ナッポスユナイテッド
◆公式サイト http://vanitas-stage.com
◆公式ツイッター @vanitas_stage

©望月淳/SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会
©舞台「ヴァニタスの手記」製作委員会

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