アンドロメダ銀河で発見された「星の大量移住」の証拠

【▲研究チームは、アンドロメダ銀河に星が大量に移住したことを示す新たな証拠を明らかにしました。画像の各ドットはアンドロメダ銀河の個々の星を表しており、銀河に対する星の動きが、青 (こちらに近づいている) から赤 (こちらから遠ざかっている) に色分けされています（Credit: KPNO/NOIRLab/AURA/NSF/E. Slawik/D. de Martin/M. Zamani）】

天の川銀河や「アンドロメダ銀河（M31）」のような銀河は、新しい星を作り出しつつ、多くの小さな銀河が合体して大きな銀河へと成長する過程に、何十億年という長い年月を費やして進化し続けています。

ある銀河が他の銀河と合体するイベントは「銀河移住（Galactic Immigration）」とも呼ばれています。銀河内の個々の星の運動や、星とダークマターハロー（※）の広がりを調べることで、天文学者はこのような「移住」の歴史を明らかにしようとしています。

※ダークマターハロー：ダークマター（暗黒物質）が自らの重力で集まった塊

このたび、天の川銀河から最も近いアンドロメダ銀河で大規模な銀河移住イベントが発生したことを示す新たな証拠が、国際的な研究チームによって明らかにされました。本研究は、米国のキットピーク国立天文台にあるニコラス・U・メイオール望遠鏡（口径4m）に設置された「DESI（Dark Energy Spectroscopic Instrument：ダークエネルギー分光装置）」を用いて行われたものです。

【▲アンドロメダ銀河での星の大量移動が示す複雑なパターンから、天の川銀河と非常によく似た星の移住の歴史が明らかになりました（Credit: KPNO/NOIRLab/AURA/NSF/Local Group Survey Team/T.A. Rector (University of Alaska Anchorage)/D. de Martin/M. Zamani）】

研究チームは、アンドロメダ銀河の内部ハローにある約7500個の星の運動を測定しました。その結果、これらの星が約20億年前にアンドロメダ銀河と合体したことを示す明白なパターンを発見したといいます。このようなパターンは理論的に予測されていたものの、これほど明確に見られた銀河はなかったとのことです。

本研究論文の共著者であるエジンバラ大学の天体物理学者セルゲイ・コポソフ（Sergey Koposov）氏は、「星の動きをこれほどはっきりと見たことはありませんでした。また、この合体から生じる構造の一部も見たことがありませんでした」「アンドロメダ銀河の歴史は、私たちの天の川銀河の歴史と類似しているというのが、私たちの新たな考えです。両方の銀河の内部ハローは、1つの移住イベントによって支配されているのです」と述べています。

この研究は、天の川銀河の隣人であるアンドロメダ銀河の歴史だけでなく、天の川銀河自身の歴史にも焦点を当てています。天の川銀河のハローにある星のほとんどは別の銀河で形成された後、今から80億年〜100億年前に起きた銀河の合体で天の川銀河に移動してきたとのことです。

本研究で用いられたDESIは、ダークエネルギーが宇宙の膨張に及ぼす影響を測定する目的で、近傍宇宙の数千万個の銀河とクエーサーをマッピングするために建設されました。DESIは世界で最も強力な多天体サーベイ分光装置であり、一晩に10万個以上の銀河のスペクトルを測定することが可能とのこと。その性能はアンドロメダ銀河の調査でも発揮され、研究チームにとって必要不可欠な装置となりました。

また、メイオール望遠鏡は完成して50年が経過しましたが、継続的な改良と最新鋭の装置により、現在でも世界的な天文学研究施設のひとつとして活躍しています。

研究チームは今後、DESIとメイオール望遠鏡を駆使して、アンドロメダ銀河周辺の星々をさらに探査しようと計画しています。

本研究成果は2022年8月24日付けで「The Astrophysical Journal」に掲載されました（2023年1月21日付けで最終改訂）。

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文／吉田哲郎