岡山大教授、がんの論文で捏造113ヵ所 他論文も不正認定

 岡山大学は24日、医歯薬学域の神谷厚範教授が2019年に発表した論文に多数の捏造が認定されたと発表し謝罪した。捏造は113ヵ所にも及んでおり、さらに他の論文でも不正が認められたという。

実験に使用したマウスの数を大幅に水増し

 岡山大学が調査報告書とともに発表した内容によると、捏造したと認定されたのは同大学医歯薬学域の神谷厚範教授が2018年に発表した論文。当時は国立循環器病研究センター(大阪府)に所属していた。

 論文の内容は自律神経を操作することで乳腺がんを抑制する治療法の可能性を示したもので、有力な学術誌に掲載され、他の論文から100回以上も引用されるなど卓越した研究成果だと評価されていた。しかし不正を示唆する告発が日本学術振興会から行われ、同大学と国立循環器病研究センターがそれぞれに調査委員会を設置し、関係者からヒアリングを行うなど調査していた。

 今回この論文で認定されたのは113ヵ所にも及ぶが、悪質性が高いと特に指摘されたのが実験に使用したマウスの数。論文に書かれているのは874匹だが、調査したところ神谷教授が使うことができたと考えられるマウスは65匹で、10分の1にも満たなかった。また論文で使用した「ラット」とされる画像と「マウス」とされる画像が同一のものであったなど、悪質な捏造が多く見られた。

 また、調査委員会のヒアリングで神谷教授は「1匹のマウスの8つの乳腺にがん細胞を移植し、8匹のマウスに移植したかのように記述した」などと回答したり、調査のための試料提出の要求に「大阪北部地震でデータの入ったハードディスクが落下して失われたため破棄した」などと協力を拒否したという。調査委員会は報告書の中で「科学者としてあってはならない」と厳しい言葉で糾弾している。

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