さだまさしの歌詞が心に残る3つの理由!投票1位に選ばれた「主人公」の魅力とは?  今年でデビュー50周年。あなたの好きな、まっさんの曲はなに?

さだまさしデビュー50周年

昨年の松任谷由実に続き、今年はさだまさしがデビュー50周年を迎える。前人未到のソロコンサート4,500回超えをはじめ、半世紀にわたるご活躍にはスゴイの一言しかない。私も彼の曲にはよく励まされたので、現役でいてくれて素直に嬉しい。

最近のさだまさしは、朝ドラ『舞い上がれ』のナレーションをはじめ、『鶴瓶の家族に乾杯』のテーマソングや『今夜もさだまさし』への出演など、NHKでご活躍されている印象が強い。これは、彼の軽快なトークや親しみやすい人柄はもちろん、大ヒットした「雨やどり」や「関白宣言」をはじめとする楽曲の歌詞が、NHKのメイン視聴者である中高年層の心をつかんでいるのも大きいと思う。

あなたが選ぶさだまさし国民投票、1位は「主人公」

そこで、10年前のデビュー40周年記念アルバム『天晴〜オールタイム・ベスト〜』の選曲時に実施された「あなたが選ぶさだまさし国民投票」で1位に選ばれた「主人公」を例に、さだまさしが紡ぐ歌詞の魅力を改めて探りたい。まず、国民投票のベストテンを紹介する――

1. 主人公
2. 風に立つライオン
3. 奇跡〜大きな愛のように〜
4. 案山子
5. まほろば
6. いのちの理由
7. 道化師のソネット
8. 修二会
9. 黄昏迄
10. つゆのあとさき

2位、3位、4位、7位以外はアルバム収録曲で、発売時期も1977年から2009年まで幅広い。投票者は彼の作品を隅々までじっくり聴き、心に刺さった曲を厳選しているようだ。

中でも「主人公」は、過去のファン投票でも1位の常連曲。多くのリスナーが納得できる結果だと思う。

何度聴いても心に刺さるフレーズとは?

「主人公」は、大人の女性が学生時代を振り返る曲である。1番では、思い出の場所が次々と歌われる。プラタナスの並木道、喫茶店、バス、愛した人の服の模様を想起し、その人や友人に囲まれて自分は幸せだったと思う。ここまではごく普通の回想シーンだ。

一転して2番では、回想から思考に入る。私が選んだ道は果たして正しかったのか? でも、選んだ以上は精一杯生きるしかない。そうしないと、愛した人に恥ずかしいから…。

ここから2番のサビに入り、タイトルのキラーフレーズが歌われる。

 あなたは教えてくれた
 小さな物語でも
 自分の人生の中では
 誰もがみな主人公

人生の主人公が私であることは、教わるまでもない事実である。しかし、思い通りにいかないのが人生。日々の仕事や雑事に忙殺され本当にやりたいことを見失いがちなことは、多くの人が実感している。だから、このフレーズは何度聴いても心に刺さる。この曲が1位に選ばれたのも無理はない。

さだまさしの歌詞が心に残る理由

ここからが本題だが、この「主人公」には、さだまさしならではの詞の特徴、言い換えればリスナーの心に刺さるエッセンスが凝縮されている気がする。その理由を3点に分けて紐解きたい。

1点目:回想
昔を懐かしむ歌詞は演歌に多いが、彼の作品にも回想シーンがよく出てくる。「精霊流し」は亡くなった従兄、「無縁坂」は母の人生、「親父の一番長い日」に至っては、妹の誕生から結婚に至る半生を壮大に回想している。

回想が歌われると、時の流れやノスタルジーに共感し、つい聴き入ってしまう。しかも「主人公」では、「あの時、あなたが教えてくれた言葉」としてキラーフレーズが歌われる。このモチーフは強烈だ。言葉とともに、その人が眼前に迫ってくる錯覚に陥るからである。

2点目:情景描写
さだまさしの歌詞には、具体的な情景描写が多い。だから、行間を読まずとも情景がすんなりと頭に入ってくる。「案山子」がその典型で、田舎町の情景が思い浮かぶからこそ、遠く離れた街で暮らす「お前」への思いがひしひしと伝わってくる。

「主人公」も、1番での学生街の描写が想像できるから、2番の歌詞が生きてくる。思えば彼の作品には、2番以降に泣けるフレーズがセットされた曲が多い。まるでリスナーが情景を思い描いてからインパクトある言葉を投入し、感動を誘発しているようだ。

他にも「まほろば」や「修二会」の情景描写は凄まじく、眼前に迫ってくる迫力がある。情景が想像できた曲は、心に残る。

3点目:思考
多くのリスナーは「主人公」を聴き終えた時、

「自分は人生の主人公を演じているか」

―― と考えてしまう気がする。それくらいキラーフレーズは強烈だが、単に聴いて満足するだけでなく思考に至った時、曲は自分の一部になる。50年前のアルバム収録曲が人気を保っているのも、聴いた後に思考を伴う点が大きいと思う。

他にも「風に立つライオン」や「いのちの理由」を聴いた後は、つい自分の生き方を考えてしまう。

これら3点のエッセンスが楽曲に程よく散りばめられている点が、彼の歌詞の魅力だと私は思う。そして、これらが凝縮された「主人公」は、やはり1位にふさわしい。

卒業式で先生から生徒に贈られた「主人公」

最後に、私の想い出を少しだけ。今から42年前に私が中学校を卒業した時、担任の先生が卒業文集に書いてくれた言葉が、「主人公」のキラーフレーズであった。先生から贈られたこの言葉は私の心に刻まれ、一生離れることはない。これは推測だが、同じように卒業式で生徒にこの曲を贈った先生は多かったのではないか。

思えば社会に羽ばたく生徒へのメッセージとして、これほど響くフレーズはない。この曲が1位に選ばれた隠れた要因はこれではないかと、密かに思う。

カタリベ: 松林建

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