障害者施設開設で「恩返し」 秋田出身の看護師・加藤さん 西海へ移住し古民家活用 長崎

グループホームを開設した加藤さん(右)と、スタッフの藤谷さん=西海市西彼町

 秋田市出身の看護師、加藤嵩啓さん(28)が、長崎県西海市西彼町亀浦郷に移住し、古民家を活用した障害者向けグループホームを運営している。地元の高齢者らをスタッフとして雇用するなど地域と連携。「お世話になった地元の人たちに恩返しをしたい」と意気込む。
 大村湾沿いに建つホームの名称は「101ハウス亀浦」。築約50年の木造2階建て(延べ約158平方メートル)を改装した。1階に4部屋、2階に1部屋の個室があり、定員は5人。昨年9月、運営会社「西海サステナブルソリューションズ」を立ち上げ、今年2月オープンした。
 ホームは看護師2人とスタッフが交代で対応する。スタッフは家事などの手が空いた時間を有効活用。介護職の経験がある藤谷秀子さん(75)は、主に朝と夕方ホームで掃除や洗濯など入居者の生活をサポートする。「この年齢で給料をいただけて助かっている。少しでも皆さんのためになり、喜んでもらえるならば」とやりがいを感じている。
 加藤さんが初めて亀浦郷を訪れたのは2019年夏。「充実した生活を送りたい」と看護師を辞め、近くの無人島、田島などで体験事業をしている「大村湾リゾート」(谷山哲浩社長)で約4カ月、アルバイトをした。
 自然豊かな環境での生活を満喫していた時、島のオーナーでもある谷山社長から、資格を生かした社会貢献を勧められた。これをきっかけに訪問看護事業を考えるようになり、全国を見て回った。「温かい人たちばかりで景色もいいし、食べ物もおいしい。やっぱり亀浦」と移り住んだ。
 亀浦では田島の関係者が設立した職業体験学校「101カレッジ」の校舎長などを任された。一方、訪問看護事業をどう展開するかを模索。「まずはできることから」とグループホームの開設を決めた。
 地元の人への感謝は尽きない。物件探しや「101カレッジ」卒業生の受け入れなど「皆さんの支援なしには何もできない。今度は経済的な面からこちらが貢献できれば」と思っている。
 当初の構想だった訪問看護をはじめ、高齢者グループホームの開設も今後は視野に入れている。「県外から来た若者たちが働き、地域の人と過ごすとともに、地域の方々はこの地で生涯を終えられるようにできたら」。理想とする福祉へ一歩踏み出した。

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