【連載コラム】第7回:史上4チーム目の開幕11連勝! 「貧乏球団」のレイズはなぜ強いのか

日本時間12日のレッドソックス戦の7回裏にレッドソックスを突き放すソロホームランを放ったジョシュ・ロウ @Getty Images

日本時間4月12日、レイズがレッドソックスを7対2で破り、開幕からの連勝を11に伸ばしました。開幕11連勝は、1981年アスレチックス(11連勝)、1982年ブレーブス(13連勝)、1987年ブリュワーズ(13連勝)に次ぐ史上4チーム目の快挙(1900年以降)。メジャー記録の開幕13連勝まで「あと2」に迫っています。タイガース、ナショナルズ、アスレチックス、そしてレッドソックスと対戦相手に恵まれている感は否めませんが、下位チームから取りこぼさないのは強いチームの証。実際、チームOPS.945(メジャー1位)、防御率1.73(同)など各部門で圧倒的な数字を残しています。

1998年に「デビルレイズ」として誕生したレイズが最初の10年間で地区最下位9度と低迷し、チーム名から「デビル」を外した2008年にいきなり地区優勝&リーグ優勝を成し遂げたのは有名な話ですが、そこから6年間でポストシーズン進出4度と躍進。2014年から4年連続で勝率5割を下回りましたが、2021年に球団史上最多の100勝を挙げるなど、2019年から昨季まで4年連続でポストシーズン進出と安定した強さを誇っています。しかし、レイズの年俸総額はこれまで1度も1億ドルを超えたことがありません。本拠地トロピカーナ・フィールドが満員になることも滅多になく、メジャー屈指の「貧乏球団」と言っても過言ではありません。

では、なぜレイズはこんなに強いのでしょうか。ロースターを見渡してみると、ランディ・アロザレーナ、ワンダー・フランコ、シェーン・マクラナハンといった好選手はいるものの、全国区のスーパースターがいるわけではありません。マクラナハンとともに先発ローテーションの中心を担うジェフリー・スプリングスやドリュー・ラスムッセンも素晴らしい投手ですが、知名度は低く、スターと呼ぶには程遠い選手です。しかし、その一方で、全く戦力にならなそうな、「ロースターの枠埋め」だけに使われているような選手は1人も見当たりません。エリック・ニアンダー編成本部長は「デプス(選手層)とタレント(才能)の両方が必要だ。片方だけでは勝てない。勝つためには両方が必要だ」と話しています。つまり、才能豊かな選手を多く揃えていることこそがレイズの強さの源と言えます。

今や正遊撃手として定着したレイズのワンダー・フランコ @Getty Images

たとえば、有望株フランコのメジャー昇格を見据え、正遊撃手ウィリー・アダメスをブリュワーズへトレードしたことがありました。このトレードで獲得したラスムッセンは今や先発の柱の1人へと成長。アダムスもブリュワーズの正遊撃手として活躍していますが、レイズではフランコが正遊撃手に定着したため、アダムスの放出はレイズにとってマイナスにならず、むしろラスムッセンの活躍によって大きなプラスを生み出しています。このトレードに代表されるように、巧みなチーム編成で「デプス」と「タレント」をバランスよく兼ね備えたロースターを築き上げてきたのがレイズなのです。

故障者が発生しても、その穴を埋められるだけの実力を持った選手がいる。主力がトレードやFAで抜けても、その穴が全く問題にならないほどの選手層がある。「数人の選手だけを軸として作られたチームもあるが、我々はチームの35番目や40番目にも優秀な選手が揃っている」とケビン・キャッシュ監督が語るように、メジャー屈指の育成力と編成力で才能豊かな選手を多く揃えていることが「貧乏球団」の強さを支えているのです。今季の開幕ロースターの年俸総額はメジャー27位。それでもニアンダー編成本部長が「究極の目標」に掲げる球団史上初のワールドシリーズ制覇が非現実的に思えないのがレイズの凄さと言えるでしょう。

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