北朝鮮、新型固体燃料式のICBM「火星18」の発射初成功と発表 液体燃料ICBMからわずか6年の速さ

By Kosuke Takahashi

北朝鮮が発射した新型ICBM「火星18」。白い噴煙が固体燃料使用の特徴(労働新聞)

北朝鮮国営メディアは14日、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の立ち会いのもと、従来の液体燃料式よりも迅速に発射できる固体燃料式の新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星18」の初めての発射実験を13日に行い、成功したと発表した。

北朝鮮の発表が事実であれば、液体燃料使用の2017年の最初のICBM発射実験成功からわずか6年で固体燃料使用のICBMの実験に成功したことになる。北朝鮮アナリストのスコット・ラフォイ氏によると、これは米国とソ連以外のICBM開発国では最速となる。大型固体燃料ミサイルの初の実験成功にインドは13年、中国は19年、フランスは21年もの時間がそれぞれかかった。

●固体燃料式ミサイルのメリット

固体燃料式ミサイルは、液体注入で発射までに時間がかかる液体燃料型とは異なり、短時間で発射でき、相手国への奇襲性が高い。日米韓の事前探知と迎撃を避け、米本土を打撃できる能力を確保できる。

アメリカの北朝鮮分析サイト「38ノース」が昨年12月に公開した、元米国務省核不拡散担当官のバン・バンディーペン氏の評価分析によると、固体燃料は、特にモバイルランチャー(移動式発射装置)に配備されている場合、現場での取り扱いがより安全だ。また、輸送起立発射機(TEL)を隠しやすくできるなど、ロジスティクス(兵站)上の痕跡もより小さくできるメリットがある。

●発射実験の目的

朝鮮中央通信(KCNA)によると、火星18の試験発射の目的は、「多段式ミサイル用の高出力固体燃料エンジンの性能と単分離技術、さまざまな機能操縦システムの信頼性を確認し、新しい戦略武器体系の軍事的有効性を評価すること」だった。つまり、発射実験には成功したが、まだ完成しておらず、今後も実験は続くことになる。

KCNAは、火星18の発射成功を同国の迅速な「核反撃」能力の向上であると誇示した。そして、「朝鮮民主主義人民共和国を防御し、侵略を抑え、国家の安全を守る上で最も強い威力ある核心主力手段として重大な自己の使命と任務を引き受けて遂行することになる」と述べた。

また、火星18のICBMの多段階分離の画像も公開され、近隣諸国の安全を念頭に置いて発射が行われたと述べた。

北朝鮮メディアが公開した写真では、固体燃料式の新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星18」の上昇時、字幕で「1段階分離」「2段階分離」「3段階分離」とそれぞれ説明しており、3段式を示している。(労働新聞)

写真ではミサイルの上昇時、字幕で「1段階分離」「2段階分離」「3段階分離」と説明し、3段式を示した。そして、多段階分離が成功したと述べた。1段目は通常の角度で発射し、2段目と3段目は高い角度をつけたロフテッド軌道で放たれ、時間遅延の分離始動方式でミサイルの最大速度を制限しながら、技術的な特性を確証する方法で進めたと説明した。

分離されたミサイルの1段目は東部・咸鏡南道の虎島半島沖10キロの海上、2段目は北東部・咸鏡北道の東335キロの海上にそれぞれ落下したと説明した。3段目の落下地点は明らかにしなかった。

北朝鮮メディアは火星18の到達高度や飛行距離は明らかにしなかった。ただし、韓国軍合同参謀本部は13日、北朝鮮が同日午前7時23分ごろ、平壌付近から朝鮮半島東の日本海上に向けて弾道ミサイル1発を発射したと発表していた。ミサイルは通常より高い角度で発射され、約1000キロを飛行した。

発射場所は専門家の分析によるオシント(オープンソース・インテリジェンス)からの情報で平壌郊外の東とみられている。3月17日のICBM「火星17」の発射場所となった通例の平壌国際空港からの発射ではなかった。

ミサイル発射の現場を収めた写真では、金正恩総書記がミサイル発射の成功を喜ぶかのごとく満面の笑みを浮かべている。妻の李雪主(リ・ソルジュ)氏や娘のジュエ氏、実妹の金与正(キム・ヨジョン)も立ち会っている姿が見られる。

北朝鮮メディアは、金正恩氏が火星18の発射実験を通じ、「(敵国が)極度の不安や恐怖に苦しめられ、必ず克服できない脅威に直面させられ、間違った彼らの選択に対して後悔して絶望に陥るようにすることと確言された」と報じた。

北朝鮮メディアが14日に公開した写真では、おそらく発射前に道路トンネルに置かれた火星18が写っている。

北朝鮮メディアは火星18の到達高度や飛行距離は明らかにしなかった。ただし、韓国軍合同参謀本部は13日、北朝鮮が同日午前7時23分ごろ、平壌付近から朝鮮半島東の日本海上に向けて弾道ミサイル1発を発射したと発表していた。ミサイルは通常より高い角度で発射され、約1000キロを飛行したとの見方を示した。

発射場所は専門家の分析によるオシント(オープンソース・インテリジェンス)からの情報で平壌郊外の東とみられている。3月17日のICBM「火星17」の発射場所となった通例の平壌国際空港からの発射ではなかった。

北朝鮮が13日に発射したのは、2月8日の朝鮮人民軍の正規軍創設を祝う「建軍節」の75周年を記念する閲兵式(軍事パレード)で公開した固体燃料式の新型ICBMとみられる。

火星18は9軸18輪車両に載って登場した。これは以前、ICBMの火星15を載せた中国製大型トラック「WS51200」改造型と同じとみられる。ただし、ミサイル自体は見えないようにキャニスター(発射筒)が閉じられていた。新型ミサイルは軍事パレードのフィナーレを飾るように最後に5基現れていた。

なお、道路移動型固体燃料ICBMを運用している他の核保有国も、それらをコンテナ化されたTELに配備する傾向がある。例えば、中国のDF31やロシアのRS24ヤルス (NATO報告名:SS-27 Mod 2)といったICBMがそれに当たる。

左からアメリカ、ソ連、中国、インド、フランス、北朝鮮各国のミサイル名、各国が液体燃料式ICBMに初成功した年、固体燃料式ICBMに成功した年、液体燃料式から固体燃料式ICBM移行にかかった時間(スコット・ラフォイ氏提供)

北朝鮮は、2021年1月の朝鮮労働党大会で決めた国防5か年計画に沿って、固体燃料エンジンのICBM開発などさまざまな兵器の開発を進めている。

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© 高橋浩祐