月面着陸前の軌道制御完了、4月26日未明に降下予定 民間月探査「HAKUTO-R」続報

株式会社ispaceは4月14日、同社の月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1について、ランダー(月着陸船)を高度100kmで月を周回する円軌道に到達させることに成功したと発表しました。ミッション1ランダーによる民間企業初の月面着陸は、早ければ4月26日に実施されます。【2023年4月17日11時】

【▲ 月面に着陸したispaceのランダーの想像図(Credit: ispace)】

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HAKUTO-Rミッション1のランダーは2023年3月21日に高度100×6000kmで月を周回する楕円軌道へ到達することに成功。4月12日の時点では高度100×2300kmの楕円軌道を周回していました。ispaceによると、日本時間2023年4月13日10時8分に月軌道制御マヌーバ(マヌーバ=姿勢や軌道の制御)を開始し、主推進系を用いた約10分間の燃焼を完了したことで、ランダーは高度100kmの円軌道へ到達しました。

【▲ ispace「HAKUTO-R」ミッション1のマイルストーンを示した図(Credit: ispace)】

HAKUTO-Rミッション1では打ち上げから月面着陸までの各段階に応じて10のマイルストーンが設定されていて、3月21日にはSuccess 7「月重力圏への到達/月周回軌道への到達」の完了が発表されていました。今回のマヌーバ完了により、Success 8「月周回軌道上での全ての軌道制御マヌーバの完了」が完了したことになります。

次はいよいよ民間企業初となる月面着陸です。ispaceによれば、着陸に向けた降下は日本時間2023年4月26日0時40分頃に始まります。着陸体制に入ったランダーは軌道速度からの減速と姿勢制御を自律的に行いつつ、約1時間後に月面へ軟着陸する予定です。着陸地点はバックアップも含めて複数の候補があるため、運用の状況に応じて着陸は5月1日または5月3日に変更される可能性もあるということです。

【▲ HAKUTO-Rミッション1の着陸シーケンスを示した図(Credit: ispace)】

なお、HAKUTO-Rミッション1ランダーに搭載されているペイロードは以下の通りです。

・日本特殊陶業株式会社(HAKUTO-Rコーポレートパートナー)の固体電池
・アラブ首長国連邦(UAE)ムハンマド・ビン・ラシード宇宙センター(MBRSC)の月面探査車「Rashid(ラシード)」
・株式会社タカラトミー等が開発した変形型の月面探査ロボット「SORA-Q(LEV-2)」
・カナダのMCSS社が開発した人工知能(AI)を用いたフライトコンピューター
・カナダのCanadensys社のカメラ
・HAKUTOのクラウドファンディング支援者の名前を刻印したパネル
・サカナクションの「SORATO」(HAKUTO※応援歌)の楽曲音源を収録したミュージックディスク

※…HAKUTOは民間初の月面無人探査を競うコンテスト「Google Lunar XPRIZE」に日本から参加したチームで、HAKUTO-Rの前身にあたる。Google Lunar XPRIZEは勝者がないまま2018年に終了。

【▲ UAEの月面探査車「Rashid」の想像図(Credit: MBRSC)】

【▲ 変形型月面ロボット「SORA-Q(LEV-2)」。左は変形前、右は変形後の様子(Credit: タカラトミー)】

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  • Image Credit: ispace, MBRSC, タカラトミー
  • ispace \- ispace、ミッション1マイルストーンのSuccess8を完了 月周回軌道上での全ての軌道制御マヌーバの完了

文/sorae編集部

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