阿東の「蘭土」が「LANDMARK.」にリニューアルオープン アグリアートジャパンが複合拠点施設に

 1977年に阿東町(現山口市阿東)徳佐中に開業し、昨年12月末に惜しまれつつ閉店したレストラン「蘭土」が、複合拠点施設「LANDMARK.」(ランドマーク)としてリニューアル。4月25日にプレオープンした。

▲「蘭土」の面影は残しつつ、未来志向の施設に改装

 運営するのは、同地域の農家有志でつくる企業組合・アグリアートジャパン(松浦奈津子代表理事)。昨年夏、蘭土の経営者から「高齢のため事業を譲りたい」と同組合に打診があり、受諾。老朽化した建物をリノベーションし、レストラン、カフェ、マルシェ、ワークショップ、カルチャー教室などの機能を持つ複合施設として、生まれ変わらせることになった。名称には、「蘭土の名前を残しつつ、阿東のシンボル=ランドマークにしていきたい」という願いが込められている。

 レストランとカフェが中心のプレオープンは、4月28日(金)まで。看板メニューとなる「牛骨ラーメン」と、徳佐の「1等級コシヒカリ」を使ったおにぎり、「CAPIME coffee」(山口市大内問田)によるオリジナルブレンドコーヒー等にメニューを絞り込んで営業。期間中は、牛骨ラーメン1杯につき、半ライスがサービスされる。

 通常営業は5月2日(火)から。シェフをはじめ蘭土のスタッフも継続雇用されており、同レストランで提供されていた人気メニューも、少しずつ復活させていく予定だ。また、飲食店以外の機能も、準備が整い次第スタートさせるという。

 「徳佐でお米をつくり、(プレミアム日本酒の)夢雀となり、海外にいき、またそれが徳佐に戻ってくるという、循環型経済圏のプラットフォームとして『LANDMARK.』がシンボルになり、今後、このような形が地方でのサステナブルなイノベーションのモデルケースになればとも思う」と松浦さん。

 1981年に山口県錦町(現岩国市)で生まれた松浦さんは、山口県立大学に進学。卒業後は、大学時代からアルバイトをしていたサンデー山口に入社し、編集者として7年間勤務。編集長も務めた。退職後に「古民家鑑定士」の資格を取り、一般社団法人「おんなたちの古民家」を立ち上げ。中山間地域などの古民家再生に取り組む中で、阿東地域との出会いが生まれ、米作りにも向き合うようになった。そこから誕生したのが、アグリアートジャパンだ。そして、さらなる米の消費拡大をと、別会社「アーキス」を立ち上げて、日本酒作りにも取り組むことに。松浦さんの地元・錦町の堀江酒造に酒造りを委託し、2016年にプレミアム日本酒「夢雀」を誕生させた。ワインと同様に低温保存による長期熟成を前提としており、ドバイでは約60万円の値段が付けられた。昨年6月発売の2022年もの(750ml)は、9万6800円で販売。2021年から2018年ものの「ヴィンテージ」には約14万円から54万円の値が付けられており、ドバイ、中国、アメリカ、タイ、イギリス、シンガポールなどへの輸出もされている。

 「LANDMARK.」では、山口県のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進拠点「Y-BASE」とも連携し、ネット上の仮想空間「メタバース」を活用した情報発信にも取り組む。バーチャル空間には、以前の蘭土も残す予定。松浦さんは「これから様々な人が集い、交流が生まれ、地域活性化の拠点になる未来を想像するとわくわくする。阿東徳佐で長年愛されてきた『蘭土』の第2章となる『LANDMARK.』が本当の意味で徳佐のランドマークとなるよう努めたい」と意欲を見せている。

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