認知症疑いの患者が3億円寄付、遺族「不当」と提訴 金沢医大

 認知症の疑いがある患者に3億円の寄付をさせたのは公序良俗に反し無効だとして、患者の遺族3人が金沢医大(石川県内灘町)と主治医に、寄付金相当額の損害賠償を求め金沢地裁に提訴した。遺族の長女が27日、金沢市内で記者会見し「極めて異常で不当。第2、第3の被害者を出さないために提訴した」と語り、提訴のほかに準詐欺容疑での刑事告発も検討していると説明した。

入院時にMRIで脳萎縮を確認も診断せず

 原告は、東証プライム市場に上場する機械メーカー「渋谷工業」(金沢市)の社長だった渋谷弘利さんの妻と娘2人。訴状によると、渋谷さんは令和3年1月、サウナで脱水状態となり、金沢医大病院に入院した。以前から認知機能の低下が指摘されていたため入院中にMRI検査を実施したところ、大脳の萎縮などが確認された。その後認知症、あるいはMCI(経度認知障害)の診断が下されたかは確認されていない。

 渋谷さんは入院後の同年5月、大学創立50年に合わせて実施された募金に応じ3億円を寄付。同病院にはその後も複数回入院し治療を受け、同年10月に亡くなった。遺族はこの経緯に疑問を持ち、今回の提訴に至ったという。「家族に確認しないまま、認知機能の低下に乗じて非常識な金額を寄付させた」と主張している。

 金沢医大は「正当な手続きを経て寄付金を受け入れている。訴状が届いておらず、内容を確認してから対応したい」としている。

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