5月2日は hide の命日 − その歌詞から読み取る《現代人が吸収すべきメッセージ》  合掌 5月2日はhideの命日です(1998年没・享年33)

hide突然の訃報から25年

25年前の今日、ひとりの天才アーティストが亡くなった。突然の訃報は彼のファンのみならず社会全体に衝撃を与え、連日ニュースやワイドショーでセンセーショナルに報じられていたのを昨日のことのように思い出す。

彼の名はhide。超人気バンドX JAPANの実力派ギタリストであると同時に、ファッションやメイク、ライブ演出やジャケットデザインといった視覚面でも当時のカルチャー全般に多大な影響をもたらした。音楽シーンのいちジャンルとして定着させた。

まさに “カリスマ” と呼ぶにふさわしい早世の天才は、1994年のシングル「EYES LOVE YOU」「50%&50%」の2枚同時リリース以降、多くのソロ作品を世に残した。今回はそんなhideのソロワークにあらためて注目し、歌詞の中から自身の生き様、ひいては現代人が吸収すべきメッセージなどを読み取ってみたいと思う。

「In Motion 」に込められたhideの問いかけとは?そして約69万枚を売り上げた代表曲「ROCKET DIVE」

__■ In Motion

駆けめぐる季節の中で
見失った夢の続きを
つかまえて抱きしめているだけじゃ
色あせるだけ__

誰しもが漠然と “夢” を思い描くが、大抵は叶うことなくいつしか慌ただしい日々の中で見失ってしまう。夢は見るものではなく、叶えてこそ意味があるにもかかわらず、「つかまえて抱きしめ」ることに甘んじてはいないか? そうhideは問いかける。

現実問題としてどこかで見切りを付けるのも重要。しかし、夢から逃げてしまえば何も残らない。

余談だが私の友人にスポーツアナウンサーを夢見ていた男がいた。彼は大学卒業後、一旦は別業界に就職しながらも、やはり夢を捨てきれず退職して再びアナウンサーに挑戦。結果的に夢は叶わなかったが、その時の縁でスポーツメディアに携わる仕事に就き、今も充実した日々を送っている。

 Emotion Inmotion
 変わらない想いを
 Emotion Inmotion
 胸に刻みつけて
 つきぬけよう
 光失う前に

必ずしも理想通りとは限らないが、夢は逃げずに追いかければ別の形で叶うこともあるのだ。

__■ ROCKET DIVE

だいたいおんなじ毎日
そいで まあまあ それなり OK
だけど なんとなく空見上げちゃうんでしょ?__

hideの楽曲群でも飛び抜けてキャッチーで人気が高く、約69万枚を売り上げた代表曲のひとつ。「In Motion」では夢を諦めないことの大切さが描かれたが、こちらはもっとポップに背中を押してくれる。

 何にもないって事
 そりゃあなんでもアリって事
 君の行きたい場所へ何処でも行ける

そう、いつだって一歩踏み出すのは自分自身だ。特に若者の未来は無限大。そんな果てしない可能性を、hideはロケットにたとえて軽やかに歌う。 衣装で着ていたイエローのラインパーカーも、いかにも自由奔放を象徴しているようで印象的だった。

hideの振り幅の広さに驚かされる「ピンクスパイダー」

__■ ピンクスパイダー

君は 嘘の糸張りめぐらし
小さな世界 全てだと思ってた
近づくものは なんでも傷つけて
君は 空が四角いと思ってた__

一方、束縛された世界の息苦しさを描いたのが「ピンクスパイダー」である。学校、会社、家庭など人は何らかのコミュニティに属すると、その小さな空間が世界のすべてであるかのように錯覚しがちだ。

そうした閉塞感から抜け出すべく「スパイダー」は蝶の羽をむしり取ったり、借り物の翼で飛ぼうとしてみるが、「まっさかさま 墜落」してしまう。

いじめ問題などで大人は簡単に「世界は広い。逃げる勇気を持とう」だなんて言うけれど、当事者にとってそれは羽のないスパイダーが高くそびえ立つ壁を越えるように、とてつもなく難易度が高い。

そんな “地獄” をこの曲はスパイダーの心情を交えながら切実に訴える。底抜けに開放的な「ROCKET DIVE」とは対極ともいえる内容で、hideの振り幅の広さに驚かされる。

__■ DICE

君の思い通りの 花を咲かせよう
むしり取られ 枯れる前に
いつしか つぼみは花となり
昨日を吐き出し 君に話すだろう__

hideがソロとしてこの曲で初めて出演した『ミュージックステーション』は衝撃的だった。牢の中でうごめく全身白塗りで赤い襦袢だけ穿いた無数の女性(?)がhideにまとわりつくという奇抜な演出は、おそらく現代なら過激すぎてNGが出るだろう。

楽曲もハードなロックチューンだが、だからこそ繊細な歌詞とのギャップが独特な味わいを放つ。

 咲き乱れるのか 朽ち果ててるのか
 ニつに一つのダイス

つまり他人の干渉を受けて生き方を妥協するのか、それとも我が道を進むのか、それを振るのは君自身だという強烈なメッセージが、ラストの「Once and for all, Dice away. Up to you」(ただ一度だけダイスを振れ。(決めるのは)おまえ次第だ」という歌詞に集約されている。hideらしいダークで破滅的な応援歌といえよう。

逝去の約半年後にリリースとなった「HURRY GO ROUND」

__■ HURRY GO ROUND

急ぎ 廻れ 砕けても
果敢無(はかな)く散るが故にも
今を待たずに__

未完成のデモ音源を元に逝去の約半年後にリリースとなったシングル曲。人生をメリーゴーランドに例えた芸術作品は他にもあるが、本作では「まわれ Hurry merry-go-round 生き溺れても」と刹那的な人生の輝きと、それがゆえの儚さを描いている点がいかにもhideらしい。

まるで自らの死を予期したような内容が当時話題となったが、本作に限らずhideはどこか達観したように、俯瞰的な視座で生死をみつめる表現がよく出てくる。

hideは最後の瞬間まで立ち止まることなく、狂おしいほど真っ直ぐに自分の信念を貫き通した。まるで生き急ぐかのような在り方はまさに「HURRY GO ROUND」。

―― 歌詞を通してhideは夢のためにがむしゃらに前進することの大切さを盛んに説いてきた。それを端的に示したのが「ROCKET DIVE」のラスト、「待ってるだけの昨日にアディオース」というフレーズだろう。

突然の訃報から25年が経つが、そのアーティスト性、残した楽曲は全く色褪せることなく輝き続けている。あらためて唯一無二の奇才・hideに敬意を表したい。

カタリベ: 広瀬いくと

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