【連載コラム】第10回:4月末時点で2ケタ盗塁が8人 パイレーツとガーディアンズは200盗塁超えのペース

写真:4月終了時点で13盗塁を記録しているブレーブスのアクーニャJr @Getty Images

MLBでは今季からベースサイズの拡大、投手の牽制回数の制限といった新ルールが設けられ、盗塁が増加することがシーズン開幕前から予想されていました。実際、4月終了時点で1チーム1試合あたり0.89回の盗塁が試みられており、これは2012年(0.90回)以来の高水準。盗塁成功率は史上最高の79.3%となっており、その結果、1チーム1試合あたりの盗塁数は0.71個と20年以上前の水準(1999年に0.70個)まで回復しています。『マネーボール』以降は出塁率が脚光を浴びるなど、「アウトにならないこと」が重要視されるようになっていきましたが、その過程で「アウトになるリスクを冒す作戦」である盗塁は減少傾向に。2021年には1チーム1試合あたりの盗塁企図数が0.60回まで減少しました。ただし、各選手がセーフになる可能性が高いシチュエーションを選んで走るようになったため、2021年の盗塁成功率75.7%は過去最高でした。

今季は新ルール導入に伴い、盗塁企図数の増加と盗塁成功率の上昇が同時に発生しているため、近年では考えられないくらいの盗塁ラッシュとなっています。4月が終了した時点で2ケタ盗塁に到達している選手は、ブレーブスのロナルド・アクーニャJr.(13盗塁)、パイレーツのペ・ジファン(11盗塁)、マーリンズのジャズ・チザムJr.(11盗塁)、オリオールズのセドリック・マリンズ(11盗塁)、アスレチックスのエステウリー・ルイーズ(11盗塁)、ダイヤモンドバックスのコービン・キャロル(10盗塁)、カブスのニコ・ホーナー(10盗塁)、オリオールズのホルヘ・マテオ(10盗塁)の8人。これは1993年の7人(チャック・カー、アレックス・コール、チャド・カーティス、ダレン・ルイス、ケニー・ロフトン、オーティス・ニクソン、エリック・ヤング)を上回り、少なくとも直近50シーズンでは最多の数字です。

近年のMLBでは盗塁王が30個台の争いになるシーズンも珍しくなく、過去10シーズンだけでも2015年ア・リーグのホセ・アルトゥーベ(38盗塁)、2017年ア・リーグのウィット・メリフィールド(34盗塁)、2019年ナ・リーグのアクーニャJr.(37盗塁)、2021年ナ・リーグのトレイ・ターナー(32盗塁)、2022年ア・リーグのマテオ(35盗塁)と30個台の盗塁王が5人も誕生しています(短縮シーズンの2020年は除く)。しかし、仮に1ヶ月10盗塁のペースで盗塁を積み上げていくと、シーズントータルの盗塁数は60個前後になります。今季は60個台や70個台の盗塁王が久しぶりに誕生する可能性もあり、60個台ならば2017年ナ・リーグのディー・ストレンジ=ゴードン(60盗塁)以来6年ぶり、70個台ならば2009年ア・リーグのジャコビー・エルズベリー(70盗塁)以来14年ぶりです。60盗塁以上の選手が複数誕生すると、これも2009年以来14年ぶりとなります。

また、チーム別に見ると、パイレーツ(29試合で41盗塁)、ガーディアンズ(28試合で35盗塁)、オリオールズ(28試合で30盗塁)、アスレチックス(29試合で29盗塁)の4球団が1試合1個以上のペースで盗塁を決めています。シーズン162盗塁以上を記録したチームは2016年ブリュワーズ(181盗塁)が最後。シーズン200盗塁となると、1997年以降でわずか1度(2007年メッツが200盗塁)しか達成されていません。4月終了時点でパイレーツとガーディアンズの2球団がシーズン200盗塁以上のハイペースで盗塁を積み上げており、今季は60個台や70個台の盗塁王だけでなく、シーズン200盗塁以上を記録するチームも久しぶりに誕生することになるかもしれません。

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