地域おこし協力隊員が来ない!? 11人募集で採用2人、退任後の生活に不安? 広島県呉市の周辺部

 広島県呉市が地域おこし協力隊の制度を導入する市内8地区のうち半分の4地区で、隊員不在の状態が続いている。本年度、川尻地区を新たに対象に加え、全地区で2人体制にしようとしたが、人材を確保できていない。市は採用時期の柔軟化を図り定員達成を目指すが、先行きは不透明だ。

 ことし4月の採用に向けて市は昨年度、6地区計11人の隊員を募集した。だが、応募は9人だけ。採用は2人にとどまり、1人は音戸地区に配置された。もう1人はジビエ(野生鳥獣肉)の利活用促進など課題に取り組む「ミッション型」として川尻地区で初の隊員となった。

 現在、定員2人を満たすのは豊地区だけ。安浦、音戸、川尻の各地区は1人。4月採用の募集対象ではなかった下蒲刈地区で2人が最長任期である3年目を迎えることなく3月限りで退任し、倉橋、蒲刈、豊浜を合わせた4地区で隊員がいない状況となっている。

 市は地域課題の解決や活性化に向け、隊員の倍増を計画。2022年度から安芸灘4地区で2人に増やそうと試みたが、蒲刈と豊浜では実現できなかった。人材確保の課題が浮き彫りになる中「各地域からも要望が上がった」として、安芸灘以外の倉橋、音戸、安浦、川尻の4地区でも2人体制を目指した。

 結果的に地区間で偏りが生じる事態を招いたことに、市地域協働課は「本来あってはならない状況。早急に対応しなければいけない」と反省。これまでの年度当初の採用から随時の応募・採用に変更し、人材を確保したい考えだ。

 同制度では、協力隊員が任期終了後も赴任地に定住することも目指す。蒲刈地区自治会連合会の梶本良金会長(73)は「中心部に比べて利便性が低く、就ける仕事も少ない。退任後の生活を考えれば難しい面があるのかもしれない」と複雑な胸中を明かした。

呉市役所

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