岡山に、2023年4月で10年目を迎えたごみ拾い活動を続けている団体があります。
その名は「greenbird岡山チーム」。
小さな子どもから、学生、社会人、年配の人、そして海外の人や、犬を連れた人まで。
多種多様な人々が大きなごみ袋を持って、ワイワイとにぎやかにおしゃべりしながらごみ拾いをしています。
参加したあとには、ポイントカードにスタンプを押してもらい、スタンプがたまったら、景品をもらえる!?という話も聞こえてきました。
大阪マラソンに参加したり、岡山の島に船をチャーターしてごみ拾いに行ったり。
普通のごみ拾いのボランティアとはちょっと違って、なんだか楽しいイベントも開催しているようです。
一体どんな団体なのでしょうか。
greenbird岡山チームの、倉敷でのごみ拾い活動に参加してきましたので、そのようすをお伝えします。
greenbirdとは
greenbirdは、「きれいな街は人の心もきれいにする」を合言葉にポイ捨てをしない仲間を増やすため、だれでも気軽に参加できるごみ拾い活動を続けているボランティアの団体です。
greenbirdのはじまり
greenbirdは、2002年に東京の原宿表参道で活動が始まりました。
当時は、表参道商店街の事業者が中心となって定期的に清掃活動を実施していました。
しかし、何度清掃活動をおこなっても、ゴミであふれかえっている街のようすに変化はなかったそうです。
そこで、活動の趣旨を「街にポイ捨てしない雰囲気を作ること」に切り替えました。
2003年にNPO法人として発足してからは、全国全世界にチームを展開していきます。
支援の輪は広がり、個人にとどまらず、企業や団体などからも賛同され、寄附金だけではなく、ごみ袋や手袋、ビブスなどの物資の提供もおこなわれています。
greenbird岡山チームについて
greenbird岡山チームは、2012年3月に初代リーダー松原龍之(まつばら たつゆき)さんが立ち上げたチームです。
岡山チームは「ゆるく 楽しく」をモットーに活動をおこなっています。
誰でも気軽に参加できる環境を目指しています。
- 何も準備せず手ぶらで参加できる
- 遅刻しても大丈夫
- 一人でも参加しやすい
- 参加申請の登録も不要
greenbirdのコンセプトに従い、みんなでビブスを着て、トングを持ってごみを拾っています。
新型コロナウイルス感染症流行期間中は登録制にしていましたが、2023年4月以降は、登録は必要なくなりました。
参加しているひとたち
現在は、三代目のリーダー菊竹有希(きくたけ ゆうき)さんと二代目リーダー後藤寛人(ごとう ひろと)さんを中心に、三人の学生リーダーが協力して企画運営をしています。
若い人や学生などが中心メンバーで活動することで、集まってくる年齢層も広がっています。
また、大学の教授や留学生なども参加しており、幅広い年代や国籍、職種の人々が集まってごみ拾い活動をおこなっているのがgreenbird岡山チームの特色です。
greenbird岡山チームの活動場所・時間
greenbird岡山チームの現在の活動場所と時間は以下のとおりです。
- 岡山駅前 第4土曜日 午前10時~11時
- 倉敷美観地区 第2土曜日 午前10時~11時
- 宇野港 第1月曜日 午前6時30分~7時30分
季節により時間が変動する場合があり。
その他にも不定期で高梁市や、児島駅で活動することがあります。
また、定例ごみ拾いとは別にさまざまなイベントも開催されています。
最新の活動予定は、greenbird岡山チームのInstagramを参照してください。
倉敷での定例ごみ拾いに参加しました
筆者は初めて倉敷のごみ拾いに参加しました。
この日の集合は午前10時で、集合場所が倉敷駅前商店街入口付近(中国銀行駅前支店のすぐそば)でした。
緑のビブスを着ている人たちが集まっているので目印となります。
参加する旨を伝えると、以下の道具が支給されました。
- ごみ袋
- 手袋
- トング
- ビブス
ごみ袋は燃えないもの用と、燃えるごみ用の2種類用意されています。
ごみ拾い開始
午前10時になると、リーダーの挨拶が始まります。
ごみ拾いの注意事項など、初めての人でもわかるように詳しく説明してくれました。
ひととおり説明が終わると、リーダーを先頭に数列に並んで美観地区へと歩き始めます。
greenbird岡山チームでは、個人がバラバラにごみ拾いをするのではなく、参加者全員が一緒に練り歩きながら、ゴミ拾いをするのです。
ごみが落ちていないか、念入りに確認し、落ちていそうなところを探しながら歩いていきました。
何度も来ている人は、さっそく柱の陰に隠れているタバコの吸い殻をみつけたようです。
慣れた手つきでトングで拾ってごみ袋に入れていきます。
ごみ拾いをしながらの会話
美観地区なので、海外からの観光客も歩いています。
緑のビブスの集団が気になるのか、旅行客が声をかけてきました。
参加者のなかには、英会話ができる人もいて説明をしています。
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が収まりつつあるので、最近は倉敷を訪れる海外からの観光客が増えています。
greenbird岡山チームの活動を、海外からの観光客が目にすることで、世界中の人たちから注目されるきっかけになりそうですね。
筆者の前を高校生らしき男の子の参加者が歩いていたので、話しかけてみました。
Instagramを見て、「なにかボランティアをやってみたいと思い、ごみ拾いならできるかも」と考え、今回の活動に参加したとのこと。
ごみを隈なく探している姿が印象的です。
次に、近くで目が合った男女の高校生の参加者に話しかけました。
「よく参加しているんですか?」と聞いたところ、「中学生のころから参加しています」とにこにこしながら答えてくれました。
二人は岡山など他の会場も参加しているとのことで、「倉敷(美観地区)は比較的ごみが少ない」そうです。
ごみについて
歩き始めた当初はごみが少ないなと思って歩いていましたが、大通り沿いなどは車からポイ捨てする人がいるのか、風に乗ってごみが流れて落ちています。
また街路樹の木々の奥や電信柱の後ろ側などには割れたお酒の瓶や缶が隠すように捨てられ、表からは見えないところも気を配って探さないといけません。
約1時間はあっという間に終わりました。
みんなが拾ったごみを集め、分別をします。
リーダーが参加者にねぎらいの言葉をかけ、次回の開催場所を案内し終了です。
最後に、参加した人全員で集合写真を撮ります。
この日は風が強かったのですが、過ごしやすい気温で、清掃活動が終わったあとはなんだか清々しい気持ちになりました。
ごみ拾い終了後に、リーダーを含む3人にgreenbird岡山チームの活動についてお話を聞いてきました。
greenbird岡山チームの3人にインタビュー
greenbird岡山チームでリーダーをしている菊竹有紀(きくたけ ゆうき)さん、学生リーダーの金高まりあ(かねたか まりあ)さん、2年前から参加している鈴記優也(すずき ゆうや)さんにgreenbird岡山チームの活動についてお話を聞いてきました。
greenbird岡山チームへ参加したきっかけ
──greenbird岡山チームへ参加したきっかけや参加してからの感想を教えてください。
菊竹(敬称略)──
私は現在、岡山チームのリーダーをしています。
私がgreenbird岡山チームのごみ拾い活動に初めて参加したのは、7年前(2016年)でした。
仕事以外でなにか社会で役に立てることはないかと探していたときに、SNSで活動を知り、ごみ拾いなら自分もできるのではと思い、参加したのがきっかけです。
当時は若い人が少なく、30代から50代の人が多かった印象でした。
続けているうちに、どんどん若い人が参加してくるようになり、人数も増えてきて最高66人の参加者で活動をしたことも。
ごみ拾いを続けていくなかで、実際にごみの量も減ってきたなと感じるようになりました。
金高(敬称略)──
2023年4月から倉敷の学生リーダーをしています。
greenbird岡山チームに参加し始めて、2023年6月で1年になります。
今までは同世代の人としか話すことがなかったのですが、greenbird岡山チームに参加するようになって、いろいろな年代の人たちと幅広くコミュニケーションがとれるようになり、良い経験になっています。
また今までは、一人で行動することに抵抗がありました。
greenbird岡山チームに参加してからは、一人でも行動してみようという気持ちになり、実際に行動できるようになりました。
鈴記(敬称略)──
私が初めて参加したのは、大学3年生の秋でした。
最初は友達と行く予定でしたが、日にちを間違えて、一人での参加になってしまったのです。
けれどもそのおかげで、一人で参加することに抵抗がなくなり、その後は一人でもごみ拾い活動に行くことが多くなりました。
ごみ拾いのあとにみんなでカフェに行くこともあり、楽しい時間を過ごせています。
知り合いがいないからこそ、いろいろな人と話ができて、ほかの参加者とも仲良くなれることが、greenbird岡山チームの魅力だと思います。
greenbird岡山チーム 結成10周年を迎えて
──先日greenbird岡山チームが結成して10周年を迎えられたそうですね。
菊竹──
10周年記念のごみ拾いは雨で中止だったのですが、10周年のお祝いパーティーを2023年3月に岡山で開催しました。
一番の目的は、参加者へ感謝の気持ちを伝えること。
そして、greenbird岡山チームの活動趣旨を参加者に知ってもらいたい。
またコロナ禍で交流がほとんどできていなかったので、その意味も込めて開催しました。
岡山県のさまざまな会場でごみ拾い活動をしている参加者が総勢35名集まり、ワイワイ楽しく親睦を深めました。
2013年にごみ拾いをした人と、2023年にごみ拾いをした人が集まっていることに、greenbird岡山チームの歴史を感じ感慨深いものがありました。
瀬戸内ツーデーマーチへの参加
──定例ごみ拾い以外にもイベントがあると聞いたのですが、今までどんなイベントをされたのですか。
菊竹──
2017年3月に瀬戸内倉敷ツーデーマーチに参加しました。
2日間にわたって倉敷の郊外を歩くイベントです。
1日目は倉敷市市役所から児島駅まで40km、2日目は倉敷市真備町を巡るコースで30km。
合計70kmの道のりをごみ拾いをしながら歩く過酷なイベントでしたが、2日間合わせて30人近く参加してくれました。
ゴールをしたときの達成感もすごかったですが、なにより仲間たちとその感動を味わえたことがとてもうれしかったです。
笠岡諸島での活動
──他にはどんなイベントがありますか。
菊竹──
笠岡諸島でも活動をおこなったことがあります。
これまで行ったことのある島は、北から順に、高島、白石島、飛島(ひしま)です。
2014年から2016年に4回、高島、白石島へ、島にあるお遍路の除草作業をおこないました。
2019年7月には、飛島にある廃校周辺の除草作業や漂流ゴミを拾う活動も実施しています。
笠岡諸島のような離島では、近年、過疎化によって環境を整備をする人が減少し、雑草も漂流ゴミも手がつけられない状態が続いていました。
私たちgreenbirdが島を訪れることで、島民たちに役立てる活動をおこなうとともに、参加者のかたがたに島が抱える課題を伝えています。
また参加者のなかには、岡山に住んでいながら、岡山の自然豊かな島々に行ったことがない人がたくさんいます。
清掃活動をおこなうだけではなく、みんなでスイカ割りを楽しんだり、海に入って遊んだり、瀬戸内の美しい景色を見ながら島の人たちや仲間と過ごす時間は、かけがえのないものになっていることでしょう。
真備の復興支援への参加
──平成30年7月豪雨のときにも活動をされたそうですね。
菊竹──
greenbird岡山チームは、被災直後の8月に2日間、9月に2日間、真備町に行き支援活動をおこないました。
気温35度以上の猛暑のなか、汗まみれ、泥まみれになりながらの作業を覚えています。
そのときは岡山チームだけではなく、全国からgreenbirdの仲間たちが集まってくれたのです。
総勢120人以上。
全国にネットワークがある団体だからこそ、遠く離れている人たちともつながり、なにかあったときにはかけつけてくれます。
またネットワークを使って、真備町の実態を全国に発信することもできました。
私たちも、もしどこかで誰かが困っているのであれば、そのときは助けに行きたいと思っています。
これからのgreenbird岡山チームについて
──いろいろなことをされているのですね。今後やってみたいことはありますか。
菊竹──
greenbirdは、誰でも参加できますので、学生だけでなく社会人ももちろん、ボランティア初心者には、ぜひ参加してもらいたいです。
ごみ拾いはハードルが一番低いボランティアかもしれません。
しかし、ゴミ拾いをしているとさまざまな社会問題に直面することがあります。
ごみ問題、貧困問題、空き家問題、そして災害など。
いろいろな共通の課題があるので、社会問題を一番考えやすいボランティアだと思うんです。
今後は、ボランティアについてみんなで考えるイベントをしたいと考えています。
そして参加者がごみ拾い活動をきっかけに、他のボランティアにも気軽に参加できる環境を整えたいと思います。
ごみ拾い活動へ参加するひとへのメッセージ
──これから参加するかたへのメッセージをお願いします。
金高──
コロナ禍のときは、人がいない時間帯を設定していたので、朝早い時間に活動をしていましたが、2023年4月からは午前10時開始に戻りました。
ぜひ気楽にふらっと遊びにきてください。
一人で参加する人もたくさんいます。
一緒にごみ拾いをしながらコミュニケーションをとって楽しい時間を過ごしましょう。
鈴記──
今の高校生は、ボランティア活動を何時間しないと卒業できないと学校で決まっている人も多いし、ボランティアってハードルが高くていやだなあというイメージがあると思います。
最初は学校の単位のためでも良いので、一回参加して、そこで経験してみて楽しさを感じてほしいです。
参加してみると、今まで気づかなかった発見があるし、自分のなかで得るものがあると思います。
おわりに
ボランティア活動をやってみたいけれど、なかなか勇気が出ない。
また自分には関係のないことだ、と思っている人もいるかもしれません。
「ボランティア活動」と身構えるのではなく、「ごみ拾いって簡単そうだし、なんだか楽しそうだから参加してみようかな」で良いと思います。
greenbird岡山チームのごみ拾いは、予約もいらないし、気が向いたら一人で行って参加できます。
そこでさまざまな人々と出会い、話をすることで、自分の世界が広がるかもしれません。
きれいな街づくりに自分が参加している、貢献できていると思うだけでも、心が洗われるでしょう。
筆者も初めてgreenbirdのごみ拾いに参加しましたが、ごみ拾いをしながら初対面のひとたちと気軽に話しができ、想像以上に楽しく充実した時間になりました。
「ポイ捨てってかっこわるいな」
誰もがそう思える世の中を作るため、greenbird岡山チームでごみ拾いをしてみませんか。