クラブプロ“奇跡の週” 46歳ブロックはカップ破壊のホールインワン締め

15番でブロックが達成したエースをともに喜ぶマキロイ(Andrew Redington/Getty Images)

◇メジャー第2戦◇全米プロゴルフ選手権 最終日(21日)◇オークヒルCC(ニューヨーク州)◇7394yd(パー70)

スーパースター、ロリー・マキロイ(北アイルランド)のパットの前だというのに、最終18番を囲むギャラリーの歓声は鳴りやまなかった。直前に3mのパーパットを沈めたのはツアープロではなく、普段はカリフォルニア州のゴルフ場に勤務するティーチングプロ。2023年の「全米プロ」は、優勝したブルックス・ケプカと並んでマイケル・ブロックの大会でもあった。

20人が出場した全米プロゴルフ協会(PGAオブ・アメリカ)所属のクラブプロで、ただ一人進出した決勝ラウンドを熱狂の渦に巻き込んだ。予選ラウンドに続き3日目も「70」で回って8位。極めつけは、マキロイと回った最終日の後半15番(パー3)だった。

ピンまでは151yd、7Iで放ったティショットはドロー軌道を描いてピンに向かった。放物線はそのままバウンドすることなくカップイン! 自分の好プレーに「信じられない」と天を仰ぐ仕草をしたのは、今週いったい何回目だっただろうか。「ボールが突然消えたんだ。ロリーが20yd先から歩いて戻ってきて『やったね!』と言ってハグをしてくれた。神様の前で、ロリーからホールイワンの知らせを受けるなんて」

優勝したブルックス・ケプカは13番(パー5)のプレー中、「轟音が聞こえた」と振り返る。「飲み代は彼にツケておこう」(笑)。後続組はホールイワンで崩れたカップ際の修復を待ってからプレーを再開した。

46歳は自身5回目の大会を通算1オーバーの15位で終えたことで、来年大会の出場権を獲得した。さらに来週のPGAツアー「チャールズ・シュワブチャレンジ」(テキサス州コロニアルCC)への推薦出場も決まった。全米プロ史上、クラブプロによるトップ10入りを逃したことなど何でもない。

マキロイは手放しで賛辞を贈る。「僕のパートナーは素晴らしいショットを打っていた。すさまじい応援があった。クラブプロとしてこのポジションで、メジャーの最後まで戦い抜いた。彼の全米プロを締めくくるのにはふさわしかった」と圧巻のエースを喜んだ。

普段では考えられないほどの歓声を浴び、慌ただしく時間が過ぎた1週間。テレビのインタビューが一段落した時、ブロックは目に涙を浮かべた。「私は(2人の)子どもが生まれたときも泣かなかった。でもきょうは泣いた。ゴルフが大好きな人なら分かると思う。ゴルフで泣くんだ。私にとってはゴルフがすべてで人生だ。どうあっても毎日、ゴルフコースに車で行く」。ひとりのゴルフのプロとして、胸を張った。(ニューヨーク州ロチェスター/桂川洋一)

© 株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン