プロでは世界でただ一人? 大槻智春が「TSR1」を使うワケ

練習場でドライバーを打ち比べるのがツアーの日常風景(撮影/服部謙二郎)

◇国内男子◇~全英への道~ミズノオープン 事前(24日)◇JFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部(岡山)◇7461yd(パー72)

大槻智春といえば、練習場でいろんなクラブを試しているのがおなじみの光景だ。クラブ契約フリーで戦っていることもあり、ドライバーに関してはツアー選手の中で誰よりも多くの種類を打っているのではないだろうか。

寛容性が高く、軽量で知られるTSR1(撮影/服部謙二郎)

そんな大槻だからこそ、現状のエースドライバーがタイトリストの「TSR1」というから驚く。どちらかと言えばアマチュアの方がなじみのあるヘッドで、同シリーズの中で最も寛容性が高く、しかも軽量で知られている。海外も含め、男子ツアープロが使っている例を聞いたことがない。ステルス2やパラダイムといった今年のトレンドも打った上で、最終的にTSR1を選んだと聞けば余計に気になる。開幕前の練習場で本人を直撃してみた。

「TSR2やTSR3も打ちましたが、タイトリストのヘッドの中でTSR1の形が一番良かったんです。タイトのドライバーって、バルジ(フェースの湾曲)が効いているというか、フェースが“そって”見えるんです。そっているヘッドだと、どうしてもつかまりづらそうに見えて…。その点、TSR1はタテにスパッと切ったようにフェースが真っすぐに見えます。僕はどちらかというとつかまり顔のほうが好きなんです」

カオも好みというTSR1(撮影/服部謙二郎)

“カオ”の好みに加え、つかまるヘッドを求める理由はプレースタイルとも関係している。「僕は毎ショット、100%で球を打たないんです。フェアウェイに置きたい時に60%で打つこともあります。そういう時につかまらないヘッドだと、右にペラペラーという球が出る。それがイヤ。だから(クラブにも)最低限のつかまりが欲しい。(TSR1は)よくつかまってくれるし、スピンも入ってくれます」。安定性や操作性の高さを重視した結果だ。

「最近のヘッドはスピンを減らして低スピンで飛ばすのがほとんど。それだと飛ばしにはいいと思うんですけど、球がつかまってくれない…」と、選定にはなかなか難儀してきた様子。テストするのは決まって、各社の寛容性が高いモデルだ。「スリクソンもヘッドが大きな、一番簡単なやつを選びました。パラダイムもノーマルのモデル、テーラーだと僕はHDです(笑)」。ミズノのドライバーもやさしいモデルも含めて何種類かを試し、ピンのG430もバッグに入っていた。各社の最新ドライバーを打っている数では、この男が日本一かもしれない。

ミズノの新しいドライバーも試していた(撮影/服部謙二郎)

ただ、軽量モデルとして認知されているTSR1だけに重さの調整が気になるところ。クラブを組み立てたタイトリストのツアーレップ、小林大三さんに話を聞くと「ヘッドにも個体差があるので、その中でも一番重いヘッドを探しました。さらに一番重いウエイト(15g)を装着し、ヘッドの中にはホットメルト(接着剤)を多めに入れて重くしています」と教えてくれた。本人の要望もあって、ホットメルトはトウ側に入れて、つかまり過ぎないようなさじ加減も加えているとか。うーん、そのこだわりはまさにプロの世界。

大槻のドライバー探しの旅は、終着を迎える日は来るのか―。彼のバッグの中身は定期的に調査が必要だ。(岡山県笠岡市/服部謙二郎)

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