立民の惨状ここに極まれり! 度量の狭い「攻撃型リベラル」議員たち|坂井広志 今に始まったことではないが、特に昨今の立憲民主党の状況は「惨状」と呼ぶにふさわしく、目を覆うばかりである。学級崩壊ならぬ政党崩壊の道を着々と歩んでいるようにしか見えず、その動きは加速すらしている。党内抗争にうつつを抜かし、国益そっちのけで先進7ヵ国首脳会議(G7広島サミット)をこき下ろす――。その姿はあまりにも醜い。

枝野、福山、蓮舫、辻元、小西、杉尾……

「僕はこの人たちのことを『攻撃型リベラル』と呼んでいるんです」

立民のある若手議員は筆者にこう語った。「この人たち」とは枝野幸男前代表、福山哲郎元幹事長、蓮舫参院議員、辻元清美参院議員らを指す。

衆院憲法審査会について「毎週開催は憲法のことなんか考えないサルがやることだ」と発言した小西洋之参院議員や、小西氏は憲法審で謝罪する必要はないとの認識を示した杉尾秀哉参院議員も入れていいだろう。

立民は「多様性」「人権」などといった言葉が大好きである。それにもかかわらず、広い心をもって相手を受け入れることなく、都合が悪いと攻撃するという度量の狭い議員が少なくない。「攻撃型リベラル」議員の典型である。

最近の蓮舫氏はいかんなくその「攻撃力」を発揮している。

泉健太代表は党両院議員懇談会で、次期衆院選での獲得議席が150を下回れば、代表を辞任する考えを示し、その後、ツイッターで「できなかったら辞任という発想ではなく、立憲民主党の議席を伸ばすという決意と覚悟を示しました」とトーンダウンさせた。すると、蓮舫氏はすかさず「その場に伝わったとは思えないですが、こういう弁明はどうなのか」とリツイートしてみせたのである。

これに対し泉氏は「なぜ同じ党の仲間であり、幹部経験者でもあるのに、こんな投稿をツイッターでされるのですか?やめませんか」と、直接言えばいいものを、ツイッターを通じて苦言を呈した。このツイートはその後、削除されたが、泉氏と党内非主流派が一触即発の状態にあるのは事実である。

泉氏は結局、その後の記者会見で、150議席未満なら辞任すると明言しており、ぶれまくりである。

立民はすでに共産に「侵食」されている

蓮舫氏は仮にも旧民進党時代に代表を務めた身だ。代表という職責の重さを身をもって体験している。その代表経験者が、今の代表を支えるのではなく、足を引っ張るというのは、あまりにも度量が狭いと言わざるを得ない。蓮舫氏が代表辞任を表明した平成29年7月、記者会見で「私自身をもう一度見つめ直さなければいけないと思いました。なぜ遠心力を生んでしまったのか」と語っている。

今の泉氏にも遠心力が働いている。SNSで嫌みを言うのではなく、直接会って感情的にならずに、適切な助言をするのが、代表経験者がとるべき所作であろう。自分を見つめ直した結果がこれでは、何とも情けない。

蓮舫氏が参院国土交通委員長として開いた記者会見での態度も、あまりの上から目線にあきれてしまった。

筆者の同僚記者が泉氏のツイートについて質問しようと「別件でもよろしいですか」と事前に断ったところ、蓮舫氏は「はい、どうぞ」と応じた。そして、同僚記者が「泉代表がツイートをされて」と語ったところで、「どなた?」「別件すぎる」と言って、質問を最後まで聞かず、答えなかったのだ。別件に「すぎる」も「すぎない」もなかろう。

話を元に戻すと、泉氏には指導力が決定的に欠けている。次期衆院選での共産党との選挙協力を否定し、「独自の道をしっかり訴える」と訴えたまではいいものの、党内からは不満が噴出した。それはそうだろう。立民は枝野代表のもとで戦った前回衆院選で、「立憲共産党」と揶揄されたが、それでも、共産票に助けられた議員は少なくない。この政党はすでに共産に「侵食」されているといっていいだろう。

石垣のりこ参院議員は「立憲共産路線て、なにが悪いんですかね? 人権と議会制民主主義を守ろうとする陣営が、協力し合うのは当然じゃないですか?」とツイッターに堂々と書き込んだ。ご自由にどうぞ、としか言いようがないが、日米安全保障条約の廃棄を訴える政党と手を組んで、政権は取れまい。

妄言続きの原口一博元総務相

このほか、原口一博元総務相はユーチューブなどを通じてこう語るのであった。

「共産、れいわ(新選組)に足向けて寝ちゃだめですよ。あなた方、当選したの誰のおかげだと。向こうが我慢してくださった。候補者降ろしたでしょ。それなのに当選して1年半で『あんた知らん』とよう言えるわ。そういうのは絶対、政権取ったって信頼されませんから」

すでに信頼されていませんから、と突っ込みたくなるのは筆者だけではあるまい。

原口氏はG7広島サミットについて「よりによって広島で、拡大核抑止ってやったんですよ。そんなの許せます?」と語ったほか、こんな驚くべき発言までしてみせた。

「ロシアとの関係だってずたぼろじゃないですか。なんでNATO(北大西洋条約機構)が日本を守ります? アメリカが変わったら、はしごを外される。はしごを外されるどころか、隣の国からは嫌われまくり、アメリカからは粛清される」

被爆地・広島にウクライナのゼレンスキー大統領を招き、ロシアのウクライナ侵略における核の威嚇、使用は許されないとの認識を「核軍縮に関する広島ビジョン」の中で共有し、力による一方的な現状変更の試みに反対する首脳声明を発表――。外交の力というものをまざまざと見せつけた、実に意義のあるサミットだったのは間違いない。平和を勝ち取るために、核抑止についてもっと議論してもいいくらいだった。

ロシアとの関係を「ずたぼろ」と語るが、重大な国際法違反を犯したロシアに対し、どう対峙しろと言うのか。さらには「隣の国からは嫌われまくり」で結構ではないか。台湾統一をにらむ国に対し媚を売る必要がどこにあろうか。

自由主義陣営の間で結束をしなければならないときに、それに水を差すようなことを日本国の国会議員が、しかも閣僚経験者が言うべきではない。そこに与党も野党もなかろう。

泉氏ももっとしっかりしてもらいたい。衆院予算委員会で「広島の被爆者の思いを具体的行動に移していかないといけない。広島ビジョンは被爆者から失望を受けてしまった。大変残念に思っている」と述べた。

核廃絶への道筋が見えなかったからといって、サミットをこき下ろすのは、あまりにも短絡的であり、核抑止の意義について積極的に語ろうとしない政党に政権を任せるわけにはいかない。これでは国民を守ることはできまい。

変わらない「ルーピー鳩山」

旧民主の流れを汲む立民は、旧民主の時代から本質は変わっていない。ちなみに旧民主を結党し、旧民主政権で初代首相を務めた鳩山由紀夫氏の言説も相変わらずで、自らが理事長を務める東アジア共同体研究所が配信しているユーチューブ番組でこんなことを語っている。

「ゼレンスキーを呼ぶくらいならプーチンを呼んで、両方で対話させて、うまく落としどころを見いだしていけるような方向に導くことをG7としてはやったら格好いいなと思う」

ロシアの軍事侵略という重い事実を前に、喧嘩両成敗的な発想はいただけない。「落としどころ」も何も、解はロシア軍の無条件即時撤退しかない。

祖父の鳩山一郎元首相は昭和31年、旧ソ連と国交を回復した「日ソ共同宣言」に署名している。こうした血筋がロシア寄りの姿勢につながっているのだろうが、今の首相が、鳩山氏でなくてつくづくよかった、と声を大にして言いたい。

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坂井広志

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