富士山噴火で12日以内に町外へ 神奈川・開成町、避難の独自計画 風評で人口増への影響を懸念  

富士山ハザードマップ改定を受けて、噴火被害の想定について報告した開成町による住民説明会(2022年6月撮影)

 富士山の大規模噴火によって町内全域に溶岩流が及ぶ可能性が指摘されている神奈川県開成町は4日までに、全町民約1万9千人が噴火から12日以内に町外へ避難する町独自の避難計画を策定した。今年3月の富士山火山防災対策協議会による避難基本計画の策定を受けたもので、個別計画をまとめるのは県内初。町は溶岩流の到達可能性を0.1%と試算しているが、風評が人口増加率に影響しかねないこともあり、いち早く策定に踏み切った。  

 神奈川など3県でつくる同協議会は2021年に「富士山ハザードマップ」を改定し、最新研究から過去5600年間で175回に及ぶ噴火データを元に被害想定を見直した。最悪のケースでは溶岩流の流出量が従来の2倍となる13億立方メートルと試算し、新たに県内7市町にも溶岩流が到達する可能性が明らかになった。

 過去最大級の貞観噴火(864~866年)と同規模の噴火で、溶岩流は酒匂川水系を下る形で町北部に128時間(6日目)で到達。県内では唯一、全域6.6平方キロメートルが噴火後18日目までに溶岩にのみ込まれることから全住民が町外への避難を余儀なくされる。

 町によると、人口1万9千人のうち、6千人が自主避難する想定で町が1万3千人の避難先を調整。具体的な避難計画を噴火20時間後までに決め、3日目に町北部の岡野、金井島、上延沢地区から順次避難を開始する。14自治会を8グループに分け、最後のみなみ地区も12日目までに住民の避難を完了させる。役場機能も9日目までに移転する。

 全住民が町役場などの集合場所で広域避難者カードを受け取って避難し、原則として自家用車で移動。車がない住民向けに町がバスも用意し、降灰により車での移動が困難な場合は自衛隊車両を確保する。

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