【連載コラム】第15回:MLB公式サイトも大注目 マーリンズの巧打者アライズによる「打率4割への挑戦」

写真:今季からマーリンズで活躍するルイス・アライズ 6月6日時点の打率は.399 @Getty Images

メジャー全体の平均打率が2割4分台まで落ち込むなか、1941年のテッド・ウィリアムス(レッドソックス)以来となる打率4割に挑戦しようとしている選手がいます。昨季ツインズで自身初の首位打者に輝いてアーロン・ジャッジ(ヤンキース)の三冠王を阻止し、今季からマーリンズでプレーしているルイス・アライズです(注:ベネズエラ出身のため、「Arraez」はスペイン語読みで「アラエス」と表記すべきかもしれませんが、MLBの公式資料には「ah-RISE」と書かれており、現地の実況・解説も「アライズ」と発音しているため、ここでは「アライズ」という表記を使わせていただきます)。

写真:2019年にツインズでデビューした当時のルイス・アライズ @Getty Images

26歳のアライズは2019年にツインズでデビューし、92試合で打率.334を記録。新人王投票ではブラディミール・ゲレーロJr.(ブルージェイズ)と並ぶ6位タイにランクインしました(受賞者はアストロズのヨーダン・アルバレス)。短縮シーズンの2020年は32試合で打率.321、2021年は打率.294と毎年安定した成績を残し、初めて規定打席に到達した昨季は144試合に出場して打率.316で首位打者のタイトルを獲得。オールスター初選出のほか、新設のユーティリティ部門でシルバースラッガー賞を受賞し、MVP投票では13位に入りました。ところが、ツインズは投手補強のためにアライズ放出を決断。今年1月、アライズはパブロ・ロペスら3選手とのトレードでマーリンズに移籍することが決まりましたが、首位打者がその年のオフにトレードされたのは1978年のロッド・カルー以来のことであり、大きな話題となりました(カルーはツインズからエンゼルスへ移籍)。

アライズは非常にバットコントロールが上手く、三振の少ない打者として知られています。昨季までのメジャー4シーズンで三振が最も多かったのは2021年の48個。昨季は前年より100打席以上増えたにもかかわらず、三振を43個にとどめ、四球数(50)が三振数を上回っていました。今季は日本時間5月28日のエンゼルス戦で大谷翔平のスプリッターを捉えてライト前へ勝ち越しタイムリーを放ち、日本の野球ファンにも存在をアピールしましたが、昨年6月にイチローさんがアライズについて「現在の球界で一番好きな左打者」と称賛したことも記憶に新しいところです。当時ツインズに在籍していたアライズは、マリナーズ戦の試合前にイチローさんと対面したあと、「彼が僕のことを知ってくれているなんて思わなかった。僕は自分のことをいい打者だと思っているけれど、彼のようにいい打者だとは思わない。彼は本当にいい打者だったから」と謙虚に話していました。

写真:2022年6月にイチローとTモバイルパークで対面した際の写真 @Getty images

今季のアライズは開幕から快調にヒットを量産し、4月末の時点で.438というハイアベレージを記録。5月に入って少しペースが落ち、大谷と対戦した日本時間5月28日の時点で打率が.371まで落ちましたが、そこから再び盛り返し、日本時間6月6日終了時点で.399と4割の大台に迫っています。MLB公式サイトは、アライズの打率が4割目前となったことを受け、アライズの日々の打撃成績を追っていくための特設ページを用意するほどの注目ぶり。そのページによると、1941年以降、チームが開幕61試合を消化した時点の打率としては、アライズは10位にランクインしているそうです(注:現在の規定打席のルールを適用)。史上初となる「異なるリーグで2年連続首位打者」の快挙も狙える今季のアライズ(両リーグ首位打者はヤンキースのDJ・ラメイヒューが達成済)。打率4割の可能性や首位打者のタイトルについて多くを語るにはまだ時期が早すぎるかもしれませんが、今季の残り試合で大きな注目を集める選手の1人となることは間違いなさそうです。

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