スマスイ閉園日、最後の雄姿を見ようと…訪れたのは7000人

「スマスイ」の愛称で親しまれてきた「神戸市立須磨海浜水族園」が、5月31日に営業を終了した。最終日は7263人が来園し、同園のスタッフとともに、思い出の場所との別れを惜しんだ。

「ありがとう!スマスイ閉園」と手作りの横断幕を持って参戦する男性(5月31日・神戸市須磨区)

■ さよならを告げる来場者「当たり前にあった水族館」

1957年オープンの神戸市立「須磨水族館」が、「須磨海浜水族園」(スマスイ)としてリニューアルしたのが1987年。それから35年が経ち設備も老朽化、水族館を含めた須磨海浜公園全体が再整備されることとなり、閉園後は市営から民営へと移行する。

「スマスイ」最後の日、本館に入っていく来場者(5月31日・神戸市須磨区)

新水族館の名称は「神戸須磨シーワールド」に決まり、「スマスイ」ではなくなる。唯一残されていた本館が解体されると、一帯は新しい施設に生まれ変わる。

水族園のTシャツを着た小学生男児2人を連れた母親は、「すぐ近くに住んでいて、だいぶ通ってます。主人は前の水族館から知っていると言っていますので、3代で来ていますよね。子どもたちが生まれる前から当たり前にあったので、閉園は寂しいです。次はそう何度も来れないですし・・・」と残念そう。

取材に応じてくれた神戸市在住の兄弟(掲載許可あり)、おそろいのTシャツを来てうれしそう(5月31日・神戸市須磨区)

また、別の水族館で飼育員として働いていたという男性は、「イルカショーとかもありましたが、博物館(※1958年から文部省からの指定を受けていた)でもあるのでテーマに沿った展示が魅力的だった。生き物たちもみんな生き生きしていたし、同業者のなかでも『須磨っていいよね』って言う人が多いです。いろいろな年代の人が楽しめるようになっていて、地元の人にとっては、すごく通いやすい場所で、愛されているところが魅力ですよね。閉館が惜しまれます」と話した。

■ 65年の長い歴史に幕「新たな時代を迎える」

閉園セレモニー『笑顔と感謝のスマスイラストデー』は、本館に入ってすぐの「波の大水槽」前でおこなわれ、最後を見届けようと集まった大勢の人でホールは埋め尽くされた。

総支配人の中垣内浩さん、スピーチの最後には涙で言葉を詰まらせる(5月31日・神戸市須磨区)

総支配人の中垣内浩さんは、「65年の間に、大きなところでは阪神・淡路大震災、最近は新型コロナウイルスがありました。地域のみなさま、ご利用いただいたみなさまに励ましていただいて、その都度乗り越えてまいりました。今日まで来れたのはみなさまのおかげだと深く感謝いたします」と声を震わせ、その姿を最前列で見守っていた小さな男の子も悔しそうに涙を拭っていた。

そして、「須磨海浜公園は新たな時代を迎えようとしています。みなさんと動物たちと我々職員で会える来年6月を楽しみにしております。本当に長い間ありがとうございました!」と総支配人が締めくくると、ホールはあたたかい拍手で包まれた。

どこかアットホームな雰囲気が漂う展示スペースは、トレードマークのひとつでもあった(5月31日・神戸市須磨区)

本館の場所は、シャチ棟とイルカ棟の間の広場になる予定。なお、神戸市のFAQ(よくあるお問い合わせ)では、「再整備事業者の提案では、須磨海浜水族園で飼育している生物のうち、個体数で約90%を新水族館で継続飼育する予定」と回答している(2023年2月3日)。

取材・文・写真/太田浩子

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