「最後の4割打者」以降最も4割に迫った男 安打製造機グウィン

ルイス・アライズ(マーリンズ)が「久々の4割打者誕生か?」と注目を集めている今季のMLBだが、1994年から翌95年にかけてのストライキがなければ、1941年のテッド・ウィリアムス(レッドソックス)以来となる4割打者が誕生していた可能性があった。なぜなら、94年のシーズンにトニー・グウィン(パドレス)が打率.394をマークしていたからだ。前半戦を打率.383で終えたグウィンは後半戦の28試合で打率.423をマーク。特に8月は10試合で打率.475と絶好調だっただけに、ストライキが悔やまれる。

1994年8月11日、MLB選手会が定めたストライキ突入のデッドラインが翌日に迫るなか、グウィンは打率.391で敵地でのアストロズ戦を迎えた。この試合でグウィンは5打数3安打を記録し、打率は.394に上昇。6打数6安打ならば、打率ちょうど4割でストライキを迎えることもできたが、残念ながらそれは叶わなかった。

この年のグウィンの月間打率は、4月が.395、5月が.392、6月が.387、7月が.370と月を追うごとにダウンしていたが、8月に入って盛り返し、10試合で40打数19安打の打率.475をマーク。43打席で三振はわずか1つしかなかった。後年、グウィンは息子のトニー・グウィンJr.(元メジャーリーガー)に対して「1994年のシーズンが続いていれば、打率4割を達成できていたと思う」と話していたという。

ただし、グウィンは個人記録に固執するような男ではなかった。ストライキ前の最終戦のあと、グウィンは「人々は個人記録を作るチャンスが失われたと考えている。でも、俺たちは多くの若い野球選手のために物事をよりよくしようとキャリアを犠牲にしているんだ」とコメント。「打率4割を達成するより労使交渉を決着させるほうが重要だ。あと6厘届かなかったのは残念だが、攻撃面に関してやりたかったことは精一杯できた」と打率4割のチャンスが失われたことを嘆く人々を尻目に、より広い視野で物事を捉えていた。

通算3141安打を放ち、8度の首位打者に輝いたグウィンは2014年6月16日に54歳の若さで死去。アライズをグウィンと比較する声も聞こえ始めているが、グウィンはアライズの打撃をどう見ているのだろうか。

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