「解散カード目当て」岸田首相豹変に推進、慎重両派から批判 LGBT法案、与党案で成立へ

国会

 LGBTなど性的少数者への理解増進法案が、今国会中に与党案で成立する見通しとなった。「慎重姿勢の岸田文雄総理が一転、天の声を下ろした」(与党幹部)のがきっかけ。9日に衆院委員会で審議と採決の後、13日に本会議で採決し、16日までに参院通過を目指すという。先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)を終え、国会閉会までの短い日程での成立劇に、推進派、慎重派の双方から「解散カード目当て」と批判の声が上がっている。

 同法を巡っては自民・公明、立憲民主・共産・社民、日本維新の会・国民民主の党別3案が出ている。立民などは以前に与野党協議で合意しながら持ち帰り、自民が党内をまとめられなかった案を踏襲。自公案は「性自認」を「性同一性」、「差別は許されない」を「不当な差別はあってはならない」と書き換えた。維新などの案では「性自認」を「ジェンダーアイデンティティ」と修正している。

 法成立の推進派は与党案の「不当な差別」との表現を「そもそも正当な差別など存在しない」(立民議員)と問題視。「性同一性」への変更についても「性別適合手術の強要など人権侵害を招きかねない」(同)と警戒している。

 一方、慎重派の間では「スポーツにおけるガイドラインはしっかり定めておくべきだ」(自民議員)との意見が強まっているという。「海外の陸上競技大会などでトラブルが生じている」といい、差別や対立は避けるべきとの考えだ。維新などの案は「言葉遊び」(共産党関係者)との批判もされるが、与党内では「幅広い意見や事象を包括し国際的にも通じる」(公明議員)との評価もある。

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