故・福田礼輔さんのエッセー集 「やまぐち菜時記」「続・やまぐち菜時記」が再販

 故・福田礼輔さんによる「やまぐち菜時記」(A5判160ページ、1500円)と「続・やまぐち菜時記」(A5判165ページ、1600円)が、明屋書店MEGA大内店の「郷土の本」コーナーに、あらためてお目見えした。

▲明屋書店MEGA大内店「郷土の本」コーナー

 前者は、今から40年前の1983年(昭和58年)、後者は1987年(昭和62年)にサンデー山口から出版された。山口放送専務取締役や山口市菜香亭の初代館長などを務めた福田さんによる、サンデー山口でのエッセー「やまぐち菜時記」を本にまとめたものだ。この連載は、1980年(昭和55年)10月に始まり、1999年(平成11年)10月の1000回を区切りに終了した。19年間に及んだ連載の、初期のよりすぐりの文が収められている。

 "歳時記"ではなく、野菜や総菜に使われる"菜"の字を使ったのは、「四季折々の季節感ある食べものの話を主体に書いていきたい」との思いから。「鳳翩山があり、椹野川がある。山ツツジの花が咲き、ホタルが舞い、時雨が紅葉をたたき、そして、しんしんと雪がつもる。日本列島にこのような自然の息づいている町は少なくなった。四季の移り変わりがみずみずしく感じられるこの町で、目にふれ、舌に乗せて、気付いたことがらのいくつかを、気の向くままに書きつづったのが『やまぐち菜時記』である」と、福田さんはあとがきに記している。

 また、福田さんの知人でもあった直木賞作家の古川薫さんは「短文の中に、味覚に関する話のほか、それにつながる文学談議あり、民俗学あり、地理から歴史、たまには考古学におよび、またこまやかな自然観察など…。簡潔軽快な文体で、筆は自由に奔放に伸び、しかもまったく破綻がない。その一篇一篇が、私たちに小刻みな『学』を授けながら、そこはかとなき生活の抒情をにじませる珠玉のエッセイとなっている」との評論を寄せている。

 今読み返すことで、40年前の山口を感じることもできる。当時から変わらないもの、逆に変わってしまったものに、あらためて気づかせてもくれそう。2冊とも、福田さんが館長を務めた山口市菜香亭(山口市天花1、TEL083-934-3312)と、サンデー山口でも販売されている。

 福田さんは、1928年(昭和3年)熊毛郡八代(現周南市)出身。旧山口経済専門学校(現山口大学経済学部)卒。1950年(昭和25年)に日本出版配給、1956年(昭和31年)に山口放送入社。山口支社長、報道局長、専務取締役などを歴任し、1995年(平成7年)に退任した。1994年(平成6年)11月から2015年(平成27年)7月までは、サンデー山口の取締役相談役も務めた。2016年(平成28年)12月24日に、88歳でこの世を去った。

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