「大衆酒場」と聞けば、どんな印象を持ちますか?
「昭和時代を彷彿(ほうふつ)とさせるノスタルジックな雰囲気」「赤提灯」「オヤジが行くところ」「安くてうまい」「ガヤガヤしている」「気軽に飲める」、そんなイメージがあるかもしれません。
しかし、大衆酒場の懐かしい雰囲気やいいところをそのままに、若者にも受け入れられるようにアレンジされた「ネオ大衆酒場」という店が人気です。
そして福山にもネオ大衆酒場があります。
それが「宮通り酒場 ひろや (以下、ひろや)」。
名前のとおり、福山中心部の商店街「宮通り」に店があります。
ひろやは昔の大衆酒場のような雰囲気の店内で、レトロなイメージ。
いっぽう、メニューには昔ながらの大衆酒場的なものから、オシャレで洗練されたものまでそろっています。
しかもリーズナブル。
「懐かしい雰囲気でくつろげ、居心地がいい」「でも、どこかオシャレな感じがある」。
そんな宮通り酒場 ひろやを紹介します。
ひろやとは
ひろやは、JR福山駅前にある商店街「宮通り」にある”ネオ大衆酒場“です。
外観は白を基調にしたオシャレな雰囲気。
さらに、大衆酒場を連想させる提灯や看板が設置されています。
また窓にはメニューが貼られていました。
入口の戸を開けると、昭和時代にタイムトリップ。
大衆酒場のような懐かしい雰囲気の空間が広がります。
店内は奥行きがあって、カウンター席とテーブル席が並んでいました。
一番奥には、半個室の部屋に2テーブルあります。
店内には短冊形メニューなども並び、大衆酒場感を演出。
トタン屋根があり、屋台のような雰囲気です。
懐かしい感じがしながら、どこか新しさも感じます。
昭和のなかに令和が混在している感じでしょうか。
気軽に入りやすい雰囲気があり、ゆとりのある空間でゆったりとくつろげるのがひろやの魅力です。
店内のいたるところに、長半紙でいろいろなユニークな文言が貼られているのに目がとまりました。
- 毎日が崖っぷち
- 毎日が感謝
- あきらめない心
- 一生懸命
実は、これは店のオープン時からの社訓だそう。
なお ひろやは大衆酒場なので、夜にチョイ飲みするのに最適です。
いっぽう、フード・ドリンクとも夜だけでなく昼の時間帯でも注文ができます。
だから昼飲みもできるのです!
ひろやのメニュー
2023年(令和5年)1月時点の情報。 価格は消費税込
ひろやのメニューはとてもたくさんあります。
ひろやの雰囲気を「昭和のなかに令和が混在している感じ」と例えましたが、それはメニューも同じなのです。
ひろやのメニューは、以下のとおり。
大衆酒場で定番飲みメニュー・懐かしいメニューから、新しいメニュー・オシャレなメニューまでそろっています。
これらにくわえ、日替わりで登場する「本日のおすすめメニュー」が置いてあることもあります。
そんなたくさんあるひろやのメニューのなかから、店長のおすすめのメニューをいくつか紹介します。
店長おすすめのメニュー
「和牛ローストビーフ」は手間暇かけた逸品で一番人気!
ひろやの店長イチオシは「和牛ローストビーフ」(750円)です!
看板メニューともいえるメニューで、お客からも一番人気があります。
大衆酒場でローストビーフが出てくるのはめずらしいのではないでしょうか。
この驚きが、ひろやのポイントです。
ひろやのローストビーフは、A5ランクの黒毛和牛のホホ肉を使用しているそう。
文字を目にしただけでヨダレがしたたります。
見た目も美しい芸術品のようなローストビーフです。
ローストビーフを食べてみると、コリッとした食感。
そのあと肉のうまみがジワジワと広がり、脂身の優しい甘さも感じました。
専用のつけダレのほか、ワサビやもろみ味噌もついています。
ローストビーフともろみは、意外な組み合わせです。
でも実際に食べてみると、もろみの甘しょっぱい味と風味、そしてローストビーフがマッチし、まことに美味でした。
「どて煮」は味噌ダレでじっくりと煮込んだひろや名物
ひろやの人気のメニューで名物なのが「ひろやのどてて煮込み(どて煮)」。
さきほどのローストビーフと違って、大衆酒場で出てきそうな料理です。
どて煮は定番の「もつ串」をはじめ、いろいろな種類があります。
どれもおいしそうです。
どて煮の中でも、とくに人気なのが「もつ串」です。
もつ串は牛のモツを串刺しにして、味噌ダレで煮た込んだもの。
味噌ダレの奥深く甘い味わいと、モツの独特の風味がよく合います。
タレは味が濃そうですが、意外とサッパリとしていました。
どて煮は、ごはんといっしょにオカズとして食べても、酒のツマミにしても最高です!
ランチタイムの「お昼の定食」では、「ひろやのどて煮定食」(600円)もあります(ランチの章を参照)。
どて煮をおかずにごはんを楽しめるリーズナブルな定食で、非常に好評です。
「シャルキュトリー盛り」はお得な肉前菜の盛り合わせ
私がいいなと思った料理は「ひろやのシャルキュトリー盛り」(一人前 550円、二人前 1,070円)です。
「シャルキュトリー」とは食肉加工品のこと。
肉を使った前菜が、数種類盛り合わせられています。
取材時のシャルキュトリー盛りは、以下のような内容でした(写真の右下から時計回り)。
- ササミ
- ローストビーフ
- 生ハム
- カモロースハム
- サラミ
- テッドフロマージュ
- ミミガー
とても盛りだくさんです。
盛り付けも美しいので、見た目でも楽しめます。
シャルキュトリー盛りもいい意味で大衆酒場らしくない、ひろやならではのメニューではないでしょうか。
「アボカドきよらのムース」はひろやオリジナルのメニュー
「アボカドきよらのムース」(550円)もおすすめの料理です。
「きよら」は、地元・福山市の鶏卵生産企業・株式会社 アキタフーズのブランド鶏卵のひとつ。
アボカドと卵のきよらをメイン具材としたものです。
アボカドきよらのムースは、アボカドの上にきよら卵の卵黄が載り、さらに卵白のムースがタップリと載せてあります。
黄身を崩すと黄身がトロリと流れ落ちていき、よりおいしそうに。
アボカドの柔らかな食感と風味と、黄身のトロリとした舌触りと濃厚な風味、白身ムースのフワフワ感、海苔の風味が一体となって、まろやかな味わいが舌に絡みます。
さらに白身ムースからは、ほのかなダシ醤油の風味が広がりました。
ワサビと一緒に食べると、ピリリとしたアクセントになっておいしいです。
アボカドきよらのムースも、一般的な大衆酒場では食べられない逸品といえます。
「庶民のフォアグラ」は鶏白レバーの低温調理で、味わいはまるでフォアグラ!
「庶民のフォアグラ」(550円)は、おもしろいメニューです。
名前からは、パロディー料理のように思えるかもしれませんが、食べてみると絶妙な味わい。
庶民のフォアグラは、レストランのようなオシャレな盛り付けです。
食べてみると、トロリとしたとろけるような食感は、まさにフォアグラ。
それでいてレバーの独特の風味を濃厚に感じられます。
添えられたハチミツやバルサミコ酢とともに食べると、また違った味わいになっておもしろいです。
レバーが好きなかたに、庶民のフォアグラをぜひ一度食べてほしいです。
「ガツとパクチーソムタム」はガツの歯ごたえとパクチーの風味がポイント
「ガツとパクチーソムタム」(510円)は、ガツのうえにパクチーを載せた料理です。
たくさんのミミガーが皿に盛られ、さらにそこへ大量のパクチー。
パクチーは、岡山産のものを使っています。
キュウリも入っていました。
食べると酸味のあるサッパリとした味付けに、ときどきトウガラシのピリッとした辛さが感じられてアクセントになります。
パクチーの独特の風味とシャキシャキ感、ガツのコリコリとした食感がおもしろいです。
パクチー好きにはたまらないメニューではないでしょうか。
店長こだわりのドリンク
2023年1月時点の情報。 価格は消費税込
ネオ大衆酒場であるひろや。
もちろんドリンク類もアルコールからソフトドリンクまで充実しています。
そのなかから、店長がこだわるおすすめメニューを紹介!
「メガハイボール」はハイボール好きな店長のイチオシ
ひろやでは、ハイボールを数種類そろえています。
- 角ハイボール (500円)
- メガ角ハイボール (850円)
- ジムビールハイボール (410円)
- メガジムビールハイボール (750円)
- コーラハイボール (550円)
- ジンジャーハイボール (550円)
ハイボールは強炭酸なので、キリッとした味わいが楽しめるそう。
比較すると、メガ角ハイボールの大きさがわかると思います。
ハイボールをとことん楽しみたいなら、メガハイボールがおすすめです。
「瓶ビール」は3銘柄をそろえる
ひろやでは、いわゆる「生中」のほかに瓶ビールもあり、以下の3銘柄をそろえています。
- アサヒ スーパードライ
- キリン ラガー
- サッポロ 赤星
3銘柄もそろっているのは、とてもめずらしいのではないでしょうか。
なかでもサッポロの赤星は、福山では希少だと思います。
瓶ビールは、いずれも600円です。
店長がこだわる日本酒にも注目!
ひろやでは、以下の地元・福山と広島県内の地酒が飲めます。
- 福山市神辺町・天宝一「天宝一 (てんぽういち)」
- 東広島市西条・亀齢酒造「亀齢 (きれい)」
ほかにも、日によってはレギュラーメニューにない日本酒が入っていることもあります。
取材時は、以下の日本酒もありました。
- 福山市の北・神石高原町の三輪酒造「神雷 (しんらい)」
- 京都市・松井酒造「神蔵 (かぐら)」
- 倉敷市・菊池酒造「木村式 奇跡のお酒」
- 三重県伊賀市・若戎酒造「若戎 (わかえびす)」
日本酒好きのかたは、ぜひチェックしてみてください。
「奇跡のお酒」は甘味のある味わいで、フレッシュな口あたり。
神蔵は、キリッとした辛口。
そしてスッキリとした後口で、のど越しがいいと思いました。
神雷は、ほのかな甘みを感じる風味とピリリとした辛口の味わいがありました。
さわやかでサッパリとした、のど越しのいい味わいです。
「若戎」は、キリリとした味わいの辛口のお酒でした。
ランチや弁当も人気
2023年1月時点の情報
ひろやは、昼の時間帯にはランチ(定食)をおこなっています。
昼には、カレーライスが充実しているのも特徴です。
「豆腐飯定食」(半丁:500円、一丁:600円)は人気のメニューです。
豆腐飯は、巨大な豆腐のどて煮がごはんの上に載っていて、ボリュームがあります。
意外と味はサッパリしていました。
ランチでも、ローストビーフは一番人気だそう。
お昼の定食には、「ローストビーフ丼」(850円)があります。
定食店や食堂の定番「日替わり定食」(680円)も。
ほかにも「どて煮定食」(600円)も1・2を争う人気ランチだそうです。
また、ひろやのカツ丼は”あと載せ方式”で、しかも自分でカツの上に具材やツユを載せていきます。
これは大変めずらしく、おもしろいです。
ほかに、ひろやでは持ち帰り弁当もおすすめです。
弁当でしか食べられないメニューもあるので、注目です。
なお一部の弁当は、事前に予約が必要になります。
気軽に立ち寄れて居心地がよく、庶民的でおいしく、ちょっとオシャレで新しい料理も楽しめるネオ大衆酒場。
宮通り酒場 ひろやの店長・山本 大暉 (やまもと ひろき)さんへインタビューをおこないました。
インタビューを読む
ひろやの店長・山本 大暉さんへインタビュー
気軽に立ち寄れて居心地がよく、庶民的でおいしく、ちょっとオシャレで新しい料理も楽しめるネオ大衆酒場。
宮通り酒場 ひろやの店長・山本 大暉 (やまもと ひろき)さんに、開業の経緯や店や料理のこだわり、入社の経緯、今後の展望などを聞きました。
「福山にもネオ大衆酒場のような店があったらいいな」という思いが開店の経緯
──ひろやを開業した経緯は?
山本 (敬称略)──
ひろやを運営している会社は、ひろや以外にも洋食店や肉バル、洋風居酒屋を経営しています。
そして社長と私の「これからの飲食店の形はどんなものがいいのか」という話のなかから、ひろやの開業の話が生まれました。
ひろやのようなタイプの店を「ネオ大衆酒場」と呼ぶんです。
以前に他地方に行ったときネオ大衆酒場に行って、私たち自身が「こんな店が福山にもあったらいいなぁ」と思ったんですよ。
それがきっかけです。
その後、知人から宮通りに空き物件ができることを紹介され、立地面からネオ大衆酒場にピッタリの場所だと思いました。
そして宮通り酒場 ひろやの出店が決まり、私が店長を任されたんです。
──ということは、店名の「ひろや」は店長の名前?
山本──
そのとおりです(笑)
ひろやの「ひろ」は、私の名前「ひろき」に由来しています。
オープンしたのは、2020年(令和2年)1月でした。
コンセプトは「懐かしさのなかに、驚きを感じさせる」「どこでもあるようで、どこにもない」
──ほかのネオ大衆酒場や福山の店との違いや、店のこだわりは?
山本──
こだわりというかコンセプトは「懐かしさのなかに、驚きを感じさせる」「どこでもあるようで、どこにもない」です。
これは外観や店内の雰囲気もそうですが、料理においてもそう。
大衆酒場で定番のメニューのなかに、大衆酒場らしくないような、ちょっと違ったものを入れたり、「この値段でこれが食べられるのか」と思われるようなものを提供したり。
もともと私たちの店は、洋食店や肉バル、洋風居酒屋なども運営しています。
それらのノウハウも生かせます。
あと大衆酒場って値段も安いですが、料理のこだわりの強さってあまり見えてこないイメージがあるかもしれません。
でも、うちは違うんです。
大衆酒場なのに料理にはトコトンこだわります。
たとえば、カレーは一からスパイスを調合してつくっているんですよ。
カレーうどんも、ダシをしっかり取ってつくっています。
どて煮も時間がかかりますし、火加減の調整も大事なので大変ですが、こだわっていますね。
ローストビーフも6時間くらいかけてこだわってつくっていますよ。
お客さんからとくに人気なのが、どて煮やローストビーフ。
時間をかけてこだわってつくったものが、お客さんから人気なのはありがたいです。
──ひろやは、どんなお客さんが多い?
山本──
まわりに企業が多いので、昼はランチを楽しむお勤めのかたが多いです。
また夜には、仕事帰りのチョイ飲みのかたも多いですね。
男女比は半々くらいで、夜は少し男性が多い感じでしょうか。
土曜日はファミリーのほか、昼飲みを楽しむお客さんがすごく多いんですよ。
別の特徴として、同じ飲食店で働いているかたの利用も多いです。
同業のかたに来ていただけるのもうれしいですね。
父やおじが調理人だったので、自然と料理の世界に興味を持った
──山本店長の経歴は?
山本──
最初は学生時代に学校が終わったあとや休みの日に、アルバイトとして働いていました。
卒業後にそのまま店に入社しまして、系列の洋食店や肉バル・洋風居酒屋などで働いて、ひろやに至っています。
ちなみに、ひろやは幅広い料理を扱っています。
系列店にない分野の技術を習得するため、ひろやを開店する前に数ヶ月間、知人の和食店で働かせていただきました。
──飲食店の仕事をしてみようと思ったきっかけは?
山本──
実は、現在の会社は私のおじが経営しているんです。
また父も従業員として働いています。
父もおじも調理人なので、自然と料理の世界に興味を持っていました。
料理したり、接客というか人と関わったりするのが小さなころから好きだったんですよ。
おじのところで中学3年生のころから、お店の手伝いをやっていました。
今後は店舗数の拡大も視野に
──今後の抱負や展望は?
山本──
今後は、ひろやの店舗数を広げていきたいですね。
実際にひろやを出してみて、すごくいい店ができたなぁと思っているんです。
店を出す前の想像を超えた店だなぁと。
だから福山だけではなく、ほかの地域にも店を出してみたいなと思います。
ひろやは昼にランチ、夜は仕事帰りの一杯で気軽に寄れる店
ひろやの雰囲気は独特ですが落ち着き、居心地がよく、ついつい長居をして楽しんでしまいます。
また入りやすい雰囲気なので、チョイ飲みもしやすいです。
定番の料理から、大衆酒場らしからぬこだわりメニューまで、料理を選んだり注文したりするのも魅力を感じます。
さらに昼のランチや弁当もコスパ良好。
私のように、昼間から庶民的な料理を食べながらチビチビと酒を飲みたい飲兵衛から、友達同士やカップルで話をしながら料理や酒を楽しみたい場合まで、幅広く楽しめるのがひろやの魅力だと思います。
ひろやのような店なら、飲むのが楽しくなるのではないでしょうか。