究極速度で撮像できる1蛍光分子感度のカメラ、京都大学などが開発

京都大学、沖縄科学技術大学院大学、株式会社フォトロンの研究グループは、蛍光分子の1個の感度をもち、究極の速度(ビデオ速度の1,000倍)で撮像が可能な顕微鏡用カメラを開発した。

細胞内の分子の動きは速すぎて、普通のビデオ(1秒間に30コマ)では多くの現象が見逃されていると思われる。分子の動きを観察するため、研究グループは新しい超高速・超高感度カメラの開発に乗りだした。

これまで、1蛍光分子感度での撮像のため、撮像速度は遅いがノイズをあまり発生させないカメラが使われてきた。研究グループは逆に、撮像速度がはるかに速いがノイズの大きいカメラを用い、そのノイズが1分子の検出に影響しない工夫を施し、10年かけて開発に成功した。

新しい超高速・超高感度カメラの撮像速度は1秒間に3万コマ(ビデオ速度の1,000 倍)に達した。1秒間に11万コマまでの改善も可能という。従来、細胞膜の分子はバレエ劇場の舞台(細胞膜全体)のようなところで乱雑に動き回っているとされてきたが、今回の成果により実は舞台がパーティションで仕切られ、その中では分子は速く動きつつ、ときどき隣のパーティションに移動していることが分かった。

また、画像1枚の撮影時間を10秒程度に短縮できた。これによって初めて、細胞内の構造が、生きている細胞の中で、超解像の精度で見えるようになった。細胞膜には、細胞の足である「接着斑」という構造が存在し、ガン細胞の転移などに関わる。この超解像画像が刻々と変化する様子と、そこでの分子の群舞の様子も分かってきた。

今後、細胞膜の構造とそこでの受容体や細胞のシグナルの研究、生細胞中での微細構造の解明などへの貢献が期待されるとしている。

論文情報:

【Journal of Cell Biology】Development of ultrafast camera-based single fluorescent-molecule imaging for cell biology

【【Journal of Cell Biology】】Ultrafast single-molecule imaging reveals focal adhesion nano-architecture and molecular dynamics

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