鰺の押寿しの「大船軒」が再出発 鎌倉離れるも販売は継続 工場や喫茶店は閉鎖

レトロ感漂う「大船軒」の社屋兼工場=2021年撮影、鎌倉市岡本

 JR大船駅をはじめ首都圏各駅で販売されている「鰺(あじ)の押寿(おしず)し」や日本初のサンドイッチ駅弁で知られる「大船軒」(鎌倉市岡本)の社屋兼工場が5月末で約90年の歴史に幕を下ろした。現在は、合併先のJR東日本クロスステーションの埼玉県内の拠点で弁当製造を続ける。地元住民からは、製造拠点移転やレトロな社屋の喫茶店「茶のみ処(どころ)」の閉鎖を惜しむ声が上がっている。

 大船軒は1898年に営業を開始。創業者の富岡周蔵と親交のあった第2代首相を務めた黒田清隆の勧めで、日本初の駅弁サンドイッチを売り出した。その後、相模湾で大量に取れたというアジを使って押しずしを発売すると、今日まで続くヒット商品になった。

 しかし時は流れ、コンビニなどの競合先が増えたことや電車の高速化で車内で弁当を食べる習慣が減ったことなどにより業績が悪化、2009年にJR東日本のグループ会社傘下に入った。

 十数年前からは1931(昭和6)年に建設された本社の一部を開放。「茶のみ処」として、限定メニューなどを提供してきた。近年は、地元の大学や大手コンビニとタッグを組み「コラボ弁当」を販売するなど話題づくりに努めてきた。

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