松山英樹が語る「ケガをしない」「スピードを戻す」両立への葛藤

プロアマが行われた開幕前日。松山英樹の語った葛藤とは(撮影/服部謙二郎)

◇米国男子◇トラベラーズ選手権 事前(21日)◇TPCリバーハイランド(コネチカット州)◇6852yd(パー70)

「心が折れちゃったから、戻すのが大変でした」

「トラベラーズ選手権」の開幕前日。松山英樹は思うような結果を出せなかった前週の「全米オープン」について、その重い口を開いた。最終日に「75」と失速し、無言でコースを後にした当日のラウンドを次のように振り返る。

「もう序盤のほうできつくなっていました。1番の2打目をバンカーに入れちゃったのもそうだし、2、3番とバーディパットが入らず、6番でバーディを獲ってこれからってときに、あの7番(パー3)ですからね(左に曲げた1打目がロストボールになりダブルボギー)。8番(パー5)のバーディパットを外してガクッときて、11番(パー3)でとどめを刺されました(3オン3パットのトリプルボギー)。12番からはただ回っているだけでした」

スタッフとドライバー調整の話を繰り返す(撮影/服部謙二郎)

3週前の「ザ・メモリアルトーナメント」で優勝争いに絡むプレーを見せ、メジャーに向けて「良くなりつつあった」と自身への期待も高かっただけに、心が折れても無理はないだろう。全米オープンから当地に移動してきてから行った5時間の打ち込みも、その反動からだった。「“打った”って感じもしないですけどね。調子が悪すぎて、ただくすぶっているだけ」。ひたすらボールを打つことで気を紛らわしていたのかもしれない。

調子が上向きかけても長続きしない。きっかけを見つけようにも答えが見つからない。その悩みはなかなか解消されないが、松山はいま具体的に何と格闘して、何にもがいているのか? その問いを投げかけると、心の内をぽつぽつと語り始めた。

「(スイング)スピードが落ちているから戻したいけど、ケガをしないこととの両立が難しくて。スピードを出したかったら無理をして振れば戻ってくるのは分かっているんですが、それをして何回も痛みが出ているから無理にできない。それで、試合中も思っている距離感ではないところでやっているから、どんどんストレスが出て…」

「(体調が)いいときはいいんですよ。そうしたら振れてくるし距離も合う。でも、ちょっと体調が悪いときや疲れているときは、スピードが出ないのでもっと飛ばない打ち方をしちゃう。大き目の番手を持ってスピードが出ないように打つから、もっと距離が落ちるんです。去年に比べてアイアンでも10ydちょっと落ちているから、勝負にならない感じがありますよね」

練習場で入念なスイングチェックを繰り返す(撮影/服部謙二郎)

聞けば、松山はドライバーで平均3、4マイル(約1.5m/s)はヘッドスピードが落ちているという。さらに調子が悪い時は5、6マイル(約2.5m/s)は落ちるというから、飛距離ダウンを痛感するのも無理はない。

ボール初速についても降下を自覚している。「(ドライバーは)言うほど落ちてないですが、アイアンは落ちていますね。今だったら優勝争いしてバリバリ体が切れているときの数字が、昔の普通ぐらいの数字と同じ。そういうのも含めて早く距離を戻したい。(ケガの影響もあって)ここまで何もできなかったので、落ちているのを戻すのもしんどい。連戦で疲れもあるし。結果が出ていればじっくり考えられるんですが、出ていないから早くどうにかしたいとか、いろいろ思考も混ざって…」と悩みは尽きない。

落ちたスピードと向き合って、その距離感で試合を作っていく選択肢もありそうだが、本人に問いかけると、食い気味に「それはないですね」ときっぱり。

「やっぱり飛距離は戻したいですよ。(同じコースで回って)去年よりも飛距離が落ちているって感じるのが一番つらい。落ちているのが分かっていて、元の(昔の)距離で打って戦っているから、そりゃ届かないし飛ばないし。マネジメントを変えなきゃいけないのも分かっているのに変えられない。みんな歳をとったらそうなってくるんでしょうけど、まだ31歳だし、そんなことをいう年齢じゃないですからね。でも、実際に数字は落ちているし、スイングを見ても(スピード感が)落ちているし…ホント葛藤の連続です」

葛藤を解消する着地点を早く見出したい(撮影/服部謙二郎)

そんな中、ツアーで一緒に戦っている歳の近いリッキー・ファウラー(34歳)の活躍が刺激になっているという。「いやぁ、やっぱりすごいと思いますよ。リッキーもあそこ(シード陥落)までいって復活しましたしね。ジェイソンもそうだけど。よく心が折れなかったと思います」。同じく仲のいいジェイソン・デイ(35歳)の5年ぶりの復活優勝も、松山を勇気づけている。

「よし、練習場に行ってきます」

松山は話し終えると、パッと立ち上がって元気よく練習場に向かっていった。心の内を話せてスッキリしたのか、その後ろ姿は少し足取りが軽くなったように見えた(コネチカット州ハートフォード/服部謙二郎)

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