逗子斜面崩落事故 節目迎え遺族「娘の弔い、一歩前進」

娘の筆箱を手に思いを語る父親。父親もこの筆箱を使っている

 逗子市で2020年2月に発生したマンション敷地斜面の崩落事故から約3年4カ月。神奈川県警が、当時マンションを担当していた管理会社の男性社員(36)を業務上過失致死容疑で書類送検し、一つの節目を迎えた。今後、地検が起訴の可否を判断する。18歳だった長女を亡くした父親(57)は「娘を弔うため、前に一歩進むことができた」との思いを胸に、捜査の進展を望む。

 「現場を確認したり、行政に相談して通行止めにしたり、緊急対応をなぜしなかったのか。崩落の兆候が見過ごされた」。父親が告訴に込めた思いだ。

 父親ら遺族は20年6月、業務上過失致死容疑で男性社員を県警に刑事告訴した。事故前日、マンションの管理人が斜面上部に亀裂(約4メートル)を発見し、この男性に報告していた。男性は県横須賀土木事務所などに連絡したが亀裂の存在には触れていなかった。具体的な対策は取られず翌日、事故が起きたと訴えてきた。

 告訴を受理した県警は約3年にわたる慎重な捜査の末、書類送検を決めた。

 「検察にしっかり捜査してもらいたい」と、父親は厳しい処分を求める。

 通学や通勤で多くの住民が使う歩道に70トン近くの土砂が崩れ落ちた事故は、斜面対策がおろそかな現状や、管理責任の重大性を、今も地域に突き付けている。

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