あの天下一品も完全再現、キンレイ「冷凍麺」のスゴさに迫る

ローソン限定で販売されている「天下一品監修 ラーメン」(495円 ※編集部調べ)。冷凍食品なれど「こってりの再現度が高すぎる」と、先日ツイッターで話題となった。

キンレイの「お水がいらない」シリーズ。鍋に入れて火にかけるだけで専門店の味わいに!

容器ごとレンチンするだけの「天下一品監修 ラーメン」。実食したところ、中太麺にまったりとまとわりつくように絡む天一粘度で、風味も上々。口の周りに付くおいしいベタつきまでも店レベルだった。

器ごとチンするだけの「天下一品監修 ラーメン」(ローソン限定販売)。こってりの再現度がすごすぎる!

製造するのは、冷凍食品メーカーの「キンレイ」(本社:京都市伏見区)。スープ・麺・具材が3層構造でひとつになった、鍋ひとつで作ることができる超お手軽な「お水がいらない」シリーズを手がけ、「カドヤ食堂」「横綱」「塩元帥」など関西の名店の味を商品化してきた。

わずか5~6分の調理で、各店の特徴をしっかり捉えて再現。専門店の味にググッと迫った旨さなのだ。そこで今回、専門店の味を再現するこだわりについて、商品部の若生直浩さんに聞いてみた。

■ つゆが先に溶け、次に麺が溶ける三層構造でコシをキープ

──そもそも「キンレイ」は1974年に設立された「近畿冷熱株式会社」が始まりだそうで(現在は「月桂冠」グループ)。

設立当初「大阪ガス」が母体であったため、大阪ガスでは、シェフによるクッキングスクールを開催していたこともあり、一流シェフの指導を受けたレシピで作る料理を冷凍するなど、料理人の味を家庭でも気軽に楽しめる商品を揃えていました。

──冷凍麺のなかでも「鍋焼うどん」は創業当初からのロングセラーで有名ですよね。

「鍋焼うどん」は本格ダシにうどん、具をアルミ鍋に入れたもの。当初はつゆの中にうどんと具を一緒にした状態で冷凍したものを商品化したのですが、コンロで調理する際、煮込むほどにうどんのコシがなくなっていました。

試作中は余ったダシをほかの材料と別に冷凍して保存していたんですが、あるとき、その上に冷凍麺をのせて解凍してみたところ、ダシは濁らず、麺のコシがキープできたんです。

下から、スープ、麺、具の3層構造で冷凍することで理想のバランスが実現でき、1975年に実用新案登録をして、1978年以降、関西のコンビニエンスストアの冷凍食品売り場で発売されるようになりました(2015年で累計1億食突破)。

「お水がいらない 鍋焼うどん」。鍋で温めるだけ!水もいらない!

──今や片手鍋ひとつでダシも麺も具も、専門店レベルの味が楽しめるようになったと。ラーメン店の監修はどういう流れでしたか?

京都の老舗「ラーメン横綱」さんの「お水がいらない ラーメン横綱」から始まり、「お水がいらない 塩元帥ラーメン」。大阪「カドヤ食堂」さんの「中華そば」も話題になりました。

うどんに比べてラーメンはどうしても麺がのびやすく、煮込み過ぎないように作っていただくことが重要になります。いわゆる「浅ゆで」の状態を冷凍して、仕上がる頃にちょうどいいコシを出せるようにしています。

「お水がいらない カドヤ食堂中華そば」 鍋に入れる前の3層はこんな感じ。麺は北海道産小麦100%の麺と、具材は焼豚、メンマ、白ねぎ、九条ねぎ、のり

──それぞれの再現度もすごいですよね。特に麺好きの間では、2023年春発売の「つけそば」の食感や風味が素晴らしいと好評です。

ありがとうございます。

──「春よ恋」という希少な国産小麦を100%使用し、香りよくモチモチ。再現度が高過ぎます。この商品は麺をレンジで温めたあとに冷水で滑りを取り、しっかり冷やして・・・といった手間がありますが、それがまったく気にならないほどおいしいです。

そう言っていただけてうれしいです。「専門店の味を超える専門店の味を提供したい」という思いがありますから。もともと「カドヤ食堂」さんファンの社員がおりまして、我々もレシピそのままというよりは、食べた味をどう再現するか、おいしく提供するにはどうするか、を考えてやっています。

「カドヤ食堂つけそば」

ご家庭でのレンジ調理の逆算をして、いい状態を保つ茹でる温度など最適な条件を見出すまでが大変でした。橘店主にももちろん何度か試作を重ねてチェックしてもらうんですが、唐辛子を漬け込んだお酢でアクセントをつけるなど、アドバイスをもらいました。

(橘店主は「つけそばは『麺を楽しむ料理』なので、この材料とクオリティには正直驚きました。これ、明らかに『ウチの麺への挑戦』ですよね(笑)。私もこの麺に負けんように製麺します!」とコメントしている)

── なるほど普通ならコストがかかる希少な小麦粉を使うことはないでしょう。それを100%で実現するには相当な思い切りが必要だったはず。さらに橘店主にここまで言わせるほどのクオリティを達成されている。乾麺や半生麺、蒸し麺など、さまざまなラーメンが昔からありますが、この質感はなかった。「活き活きとしたコシと弾力と喉越しを実現」されている要因は何でしょうか。

フットワークの軽さと、「つけ麺なら麺で勝負」と予算の割り振りを思い切った判断で進められる組織力でしょうか。ウチは小回りが効くのが強みですから。

──しかもお店のレシピをもらって開発していない、と聞きましたが。

お店のレシピ通りに試作しても、お店と同じコストがかかる。さらに冷凍工程を経ると、同じ品質にはならない。そのため、お店の味を知り、お店の原料やこだわりのポイントなどを事前に調べ、私たちが考えるその店のこだわりやおいしさのポイントをできるだけ作り込んで、お店の方に見てもらいます。そこから何度もご意見をいただき試作改良を繰り返し、監修に至ります。

──なるほど、味覚的にも卓越した感覚が無いとできないことですね。今後もいろんなお店、いろんなお店、いろんなジャンルの麺を開発されるのでしょうか?

監修シリーズを増やすという考え方よりも、もう一度原点に帰って、うどん商品の拡充を考えています。実際今までにも、鍋焼うどんの麺は、エッジを丸くしてダシ馴染みのよい麺にする切り刃に変更していますし。ダシももっとおいしく、と考えて試行錯誤を繰りかえしています。

「キンレイ」開発担当の若生直浩さん

──いやもう十分じゃないですか、と思いますが、まだ追究し続けておられると。そうなるとますます便利でおいしく「麺ライフ」が充実していく予感しかしませんね!

ありがとうございます。また新作が出た際には新情報をお知らせしますので、楽しみにしていてください。

「キンレイ」のお水がいらないシリーズは、スーパー、ドラックストア、一部のコンビニストア、公式オンラインストアで購入できる。

取材・文/曽束政昭

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