フィリピン、コーヒー生産拡大へ舵 希少リベリカ種「バラココーヒー」で日本に照準 国家の輪・UCC共催セミナーで参事官語る

フィリピン共和国大使館貿易投資部ディタ・アンガラ・マサイ商務参事官は25日、一般社団法人国歌の輪とUCCコーヒーアカデミー東京が共同開催した「1DAYセミナー」で、フィリピンがコーヒーの生産拡大へと舵を切ったことと希少とされるリベリカ種の「バラココーヒー」を日本市場に向けてアピールしていきたい考えを明らかにした。

UCCによると、リベリカ種はアフリカのリベリアを原産地とするコーヒーの品種のひとつで、栽培の歴史は現在最も栽培量の多いアラビカ種より新しい。生産国が自国消費している以外はヨーロッパ向けに輸出されることが多く日本ではほとんどなじみがない品種とされる。

フィリピン共和国大使館貿易投資部ディタ・アンガラ・マサイ商務参事官

フィリピンのコーヒー発祥の地は、マニラから南へ車で3時間ほどにあるバタンガス州リパ。1740年、ここに初めてリベリカ種のコーヒーノキが植えられた。
19世紀には一時期、世界4位のコーヒー輸出国となるまで生産量は拡大したものの、1889年にさび病と害虫が直撃すると衰退。

なかなか復活できずにいる中、フィリピン国内でコーヒー消費量が増え、世界的にコーヒー需要の高まりが見込まることから、国際コーヒー機関(ICO)に背中を押されて、フィリピン政府は2018年にコーヒー生産支援を開始した。

「取り組みは主に3つある。1つ目は生産地を増やすこと。2つ目は政府による生産者への資金援助。3つ目は特別な市場を開拓すること。日本にはスペシャルティコーヒーとしてバラココーヒーをプロモーションしたい。バラコとは“強い”を意味し、バラココーヒーは同じリベリカ種でも、フィリピンオリジナルのリベリカ種」とディタ・アンガラ・マサイ商務参事官は語る。

オンラインでつながるリッチ・ワタナベさん

現在、フィリピンでは、台風の通り道から外れたミンダナオ島を中心に各地でアラビカ種・ロブスタ種・リベリカ種のコーヒーが栽培されている。

IDAYセミナーでは、コーヒー・ヘリテージ・プロジェクトを主催しリベリカ種の保存と農家の生計向上に取り組むリッチ・ワタナベさんがオンラインで、マニラとバタンガスのほぼ中間に位置するアルフォンソの低地で栽培されるリベリカ種のコーヒーと、ルソン島山岳地帯で栽培されるアラビカ種のコーヒーを紹介した。

UCCコーヒーアカデミーでは、コーヒーを切り口にコーヒー生産国への興味関心を促すことを目的に、生産国を特定した1DAYセミナーを定期的に開催している。

コーヒー・ヘリテージ・プロジェクトで製品化された4種類のシングルオリジンコーヒー(缶入り豆)の詰め合わせ

今回で8回目の開催となり、7月1日にはドミニカ共和国産コーヒーにフォーカスした9回目を予定。UCCコーヒーアカデミーの公式サイトで参加募集している。

UCCコーヒーアカデミーの大澤優二氏は「生産国内でしか飲まれていないコーヒーがあり、調べるともっと知りたくなる。生産国についても興味が涌き、セミナーではコーヒーを生産する70数か国全てを取り上げていきたい」と意欲をのぞかせる。

フィリピンとUCCの関わりについては、フィリピンに営業所を構え日本から輸出した製品を販売しているほか、UCCコーヒーアカデミーを運営している。

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