ハンドファーストは右足で作る “すくい打ち”からの脱却

こんなふうに“ハンドファースト”でインパクトするには?

アプローチの距離感がつかめない、番手間の飛距離差が出ない、ダフったり引っかけたりするといった様々なアイアンの悩みは、クラブヘッドがアッパー軌道でインパクトする「すくい打ち」が主な原因となります。これを改善するためにはハンドファーストでダウンブローにインパクトすべきですが、手元を先行させようとしても、なかなかうまくいかないもの。今回は、ロングアイアンで引っかかるという受講者に、ハンドファーストインパクトで打つための基本をレクチャーします。

今回の受講者は…

「5番アイアンに苦手意識があって悩んでいます。もともとはスライスが多かったのですが、インサイドの低い位置からクラブを下ろすように意識していたら強いフックに悩まされるようになりました。また、傾斜地も苦手ですね」(都留さん ゴルフ歴14年、平均スコア90台後半)

スイング解析でアイアンが苦手な原因を究明

インパクトで約10度の過剰なインサイドアウト軌道になっている

アイアンのヘッド挙動のデータでまず気になるのは、インパクトの瞬間の軌道がおよそ10度インサイドアウト、4度アッパーブローになっていることです。ヘッドスピードが遅い場合でも、インサイドアウトの度合いは6度くらいまでが理想。都留さんの場合、ヘッドスピードがかなり速いので、10度のインサイドアウトは大きなミスに直結します。なぜインサイドアウト&アッパーが強くなると引っかけが出てしまうのか、のちほど解説します。

左手首のコックの度合いをグラフ化。プロ(赤線)に対して、都留さんはインパクトに向かって急激にコックが解けていく

さらに、モーションキャプチャーで左手首のコック(親指・小指方向への縦の動き)に注目してみましょう。プロの赤いラインと比べると、トップからインパクトに向かって、コックが急速に解けていき、なおかつ、インパクトでは戻り過ぎています。つまり、インパクトで大きく手元が浮いて、伸び上がらないと打てない状況になっていますね。アイアンのインパクトでは、トップでのコックやヒンジ(手首の手のひら・手の甲方向への横の動き)をできるだけ解かないようにキープして打たないと、ダウンブローにはなりません。

強いインサイドアウト&アッパー軌道では、インパクト付近でフェースが急激に左を向く

さて、どうしてインサイドアウトのアッパーブローでインパクトすると引っかかるのでしょうか。ヘッド軌道に見立てたフラフープと、フェース面の向きがわかる器具を使って説明しましょう。強いインサイドアウト軌道は、インパクトに向かってクラブヘッドがアッパー軌道を描きます(写真左)。さらに、この軌道に沿って進むと、フェース面はインパクト付近で、急激にターンして左方向を向きます(写真右)。これが引っかかる原因です。このメカニズムがピンとこなくても、インサイドアウトが過剰になればアッパーブローになり、アッパーブローが強くなればフェースが左に向く、ということを覚えておきましょう。

ダウンブローで打つためには体のどこを意識すべき?

切り返しから手首の形をキープできれば自然とハンドファーストに

レッスンの目標は、アイアンのアッパーブローを改善して、ダウンブローを目指すこと。ダウンブローでボールに当てるには、ハンドファーストでインパクトすることが基本です。ハンドファーストと聞くと、意識的に手元を先行させればいいと思いがちですが、そうするとシャンクなどのミスが出てボールにうまく当たらないので改善できません。まずはハーフスイング以下の小さいスイングで、切り返しから手首の形をキープする意識で練習しましょう。

右足の内くるぶしを内側に倒す意識が肝心。右足内側の赤いボールを潰すイメージ

コックを解かず手首の形をキープしたままインパクトするといっても、実はそう簡単ではありません。小さなスイングではできても、フルショットになってくるとインパクトで左手首が甲側に折れてしまってうまくボールに当たらずミスも出てしまうなど、手元の意識だけではあまり思った通りにはなりません。そこで、意識を右足に向けます。トップからハーフウェイダウンに向かって、右足の内くるぶしを内側に倒すイメージでスイングしてみましょう。実は、この体重移動がコックの意識よりも重要なのです。

小さいスイングで練習するとアプローチやコントロールショットも上手くなる

まずは、小さいスイングでコックを解かないことを意識しながら切り返しで右足の内くるぶしを内側に倒し、インパクトまでその状態をキープして粘ります。その練習を重ねることで小さいスイングでのインパクトが改善するので、ショートアイアンやアプローチのコントロールショットの感覚が出てきます。フルスイングの練習ではコックを解かないという手元の意識はいったん忘れて、右足の動きだけに集中しましょう。まずは、小さいスイングから右足を使う感覚を覚えていくことが肝心。アイアンショットが全般的に改善するので、ぜひとも練習してみてください。

では最後に今回のレッスンを動画でおさらいしましょう。

動画:「アイアンが苦手」を克服するには?【サイエンスフィット】動画はオリジナルサイトでご覧ください

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