逗子斜面崩落事故 女子生徒遺族とマンション住人側、横浜地裁で和解成立 住人側が1億円賠償へ

崩落したマンション敷地斜面=2020年2月7日、逗子市池子 

 逗子市池子で2020年2月、マンション敷地斜面が崩落し、歩いていた市内在住の高校3年の女子生徒=当時(18)=が死亡した事故を巡り、遺族がマンション区分所有者の住人や管理会社などに損害賠償を求めた訴訟で、住人側と遺族の和解が横浜地裁で成立したことが30日、関係者への取材で分かった。28日付。

 住人側が賠償金として1億円を支払う。責任の所在を追及するためとして、管理会社「大京アステージ」側との訴訟は継続する。

 遺族は、管理会社側は事故前日に斜面の亀裂を発見した管理員から連絡を受けたのに安全対策を怠り、区分所有者の住人らにも危険な斜面に関する責任があるなどとして21年2月、計1億1800万円の損害賠償を求めて提訴した。

 原告側代理人の南竹要弁護士は「請求額に近く勝訴的和解といえる」と説明。住人側は、マンション完成前に斜面の風化による強度低下が指摘されていた地質報告書の開示に応じたといい「誠実に向き合ってくれた。共に暮らす地域住民でもあり、ご遺族の意向で和解に応じることとした」と述べた。

 管理会社側に対しては「裁判所の判断を仰ぎ、責任の所在を明らかにすることに変わりない」と話した。

 提訴から約2年4カ月。一部の相手方と和解が成立し、生徒の父親(57)は「娘の命はお金に代えられるものではない。娘を返してほしいという思いは変わらない」と心境を吐露した。

 ここまでの経過を「裁判を起こしてこそ分かる、さまざまな事実に触れてきた」と振り返り、「考えた末の結論。娘を弔うため、社会で同じことを起こさないために、これからも訴訟を闘っていく」と話した。

 県警は6月23日、当時マンションの担当だった管理会社の男性社員(36)を、前日に亀裂を把握したのに適切な対策を取らなかったなどとして業務上過失致死容疑で書類送検した。検察が起訴するかどうかを検討する。

 崩落した斜面は当時、県が土砂災害警戒区域(イエローゾーン)に指定し、一部は現在、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)となっている。遺族側は、県が事故直前に現場一帯を調査した際、崩落の危険を探知せず、危険な斜面が放置されたなどとして23年、県の責任を問う訴訟を起こしている。

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