8日に試合が始まった高校野球の神奈川大会。サーティーフォー保土ケ谷球場第1試合は、1回戦屈指の好カードと予想される横浜商大-鎌倉学園だ。
その試合をじっと見つめるのが金沢哲男さん(65)。横浜商大を率いて2度、夏の甲子園に出場した名将は、鎌倉学園のOBでもある。「どっちが勝ってもいい、練習でつちかった力を出してくれれば。出来ればタイブレークになるといいな」と、笑顔の中に複雑な気持ちものぞかせた。
商大と鎌学の過去の対戦を訪ねると、「夏は1992年の平塚球場、2006年の準々決勝。両方、うち(商大)が勝ったね。春は、ともに甲子園に出た93年と03年。やっぱり勝ったよ。93年は9対6、03年は3対2」。驚くほど鮮明に記憶をひもといた。それだけ、母校との対戦は特別だった。
監督を離れてもう8年。かつて厳しい指導で知られた指揮官の表情は柔らかい。「(鎌学の)竹内監督は高校、大学(早稲田)の後輩なんだよ。(商大の)八木沢監督も、よくやってるからね」
座ったのは真ん中のバックネット裏。「監督の時は、自分のチームが勝つことしか考えてなかったけど、今は半分半分。こうやって野球を見られるのが楽しいね。いい勝負になってほしい」。プレーボールのサイレンに、ぐっと身を乗り出した。