⑤Deli Ojigadake(マルゴデリ オウジガダケ)~ 瀬戸内海の絶景を眺めながら味わう、人とのつながりで生まれるカフェメニュー

青い空、穏やかな海に浮かぶ島々、瀬戸大橋、変わった形の岩があちらこちらに…倉敷市と玉野市にまたがる王子が岳で見られる特有の景色です。

アクティビティも盛んで、休日にパラグライダーやボルダリング、ハイキングを楽しむ人も。

他にはない景色を見ていると心が洗われる、そんな場所です。

雄大な自然を感じられるこの王子が岳には、倉敷市が所有する施設、王子が岳レストハウスがあります。

近年、この施設で倉敷市観光課が「トライアル・サウンディング」を実施。

王子が岳レストハウスをおためしで借りて店を開いたり、イベントが不定期で開催されたりしていました。

2023年6月に、ついに王子が岳レストハウスに常設のカフェがオープン。

入店した「⑤Deli Ojigadake(マルゴデリ オウジガダケ)」を取材しました。

マルゴデリについて

岡山生まれのマルゴデリは、フレッシュジュースやコーヒーなどを販売するお店です。

現在、県内外に8店舗を構えています。

第1号店は2000年にオープンした、岡山の中心街のハレまち通り(旧県庁通り)にある「マルゴデリ 田町店」です。

ここではカウンターでジュースを渡す、テイクアウトのスタイルを取っています。

写真提供:マルゴデリ

店内に入ると自分だけの世界になってしまいがちですが、外に持ち出すことで街全体がカフェスペースに。

周りの緑があふれる公園などで飲んで、その空間も楽しんでほしいという想いがあるそうです。

JR倉敷駅前で撮影

提供するメニューは、定番の「バナナ」や「キウイ」、フレッシュスカッシュなどがあります。

岡山県瀬戸内市にある名刀味噌本舗の甘酒を使ったジュースや、岡山県久米郡美咲町のKuumuus Coffee Roaters(クームースコーヒーロースターズ)のコーヒー豆を使ったコーヒーメニューも提供。

地元の食材を用いた、できたてのドリンクを味わえます。

王子が岳に⑤Deli Ojigadakeがオープン

マルゴデリの8店舗目となる⑤Deli Ojigadakeは、店名にもなっている王子が岳へ2023年6月5日にオープンしました。

店が入店している王子が岳レストハウスは、1967年に建築され、地下1階、地上1階、屋上の作りです。

2011年までは倉敷市の指定管理者として、民間事業者が地上1階のレストランを運営していました。

レストラン閉店後は倉敷市直轄の管理となり、ツーリングやハイキングを楽しむかたがたの休憩所に。

2020年からは倉敷市が実施した、「トライアル・サウンディング」で体験型のイベントやマルシェなどが開かれました。

⑤Deli Ojigadakeがあるのは地上1階。

全面ガラス張りで、室内からも瀬戸内海の絶景を拝めます

天気がいい日は、ぜひ屋上へ。

建物外の階段から上がるとそこには…。

大パノラマが広がっています。

訪れた日は風のコンディションが良かったのか、パラグライダーを楽しむ人々が見えました。

余談ですが、「王子が岳」は、地域によって「おうじがだけ」と「おうじがたけ」と呼びかたが異なります。

ちなみに倉敷市は「だけ」派だそうですよ。

⑤Deli Ojigadakeならではの楽しみかた

マルゴデリの店舗のなかでも少し毛色の異なる⑤Deli Ojigadake。

特徴も合わせて、このお店ならではの楽しみかたを紹介します。

ドリンクとスコーン

ドリンクは大きく分けてフレッシュジュースとコーヒーの2種類。

画像提供:⑤Deli Ojigadake(2024年4月時点のメニュー表)

フレッシュジュースのトマトジュースを注文しました。

2024年4月時点は、トマトジュースの提供はしていません

注文後にフルーツを切って絞るのがマルゴデリの特徴です。

店内にジューサーの音が響きます。

できたてのおいしさに勝るものはありません。

訪れた日の本日のジュースは、トマトジュースでした。

児島の「まる児トマト」と豊島のレモンが入った、地元食材を味わえる一杯です。

店内飲食もテイクアウトもOK

マルゴデリの代表取締役 平野裕治ひらの ゆうじ)さんが、「トマト好きではない自分も飲めるトマトジュースを作りたい」と思って誕生したのだとか。

そんなトマトジュースを飲んでみると、まず甘さに驚きました。

自然な甘さで、トマトというより、まるでフルーツのような風味と爽やかさがあります。

トマト丸ごと入っているので、ところどころに皮がありました。

フルーツのような甘さの秘密は、児島の塩田跡で育てることで、糖度が高くなるため。

児島で育ったトマトを地元でいただく、地産地消の一杯

スコーンもドリンク同様、店内飲食でもテイクアウトのどちらでもOK。

素朴でやさしい甘みがします。

買って帰り、リベイクして家で食べるのもおすすめです。

オリジナルメニュー

⑤Deli Ojigadakeのオリジナルメニューはフルーツサンド

2024年4月時点では、イチゴとミックスがあったので、ミックスに。

なかのフルーツは時期によって変わるそうです。

旬のイチゴと柑橘のせとかも入っていました。

たっぷりの生クリームはフルーツの味とバランスよくなるように、上品な甘さでした。

口いっぱいにほうばるほど、意外と大きなサンドイッチ。

ミックスは1つに2種類のフルーツが入っていて、味の変化も楽しめました。

絶景とともに味わう

この⑤Deli Ojigadakeならではの楽しみかたは、やはり景色とともに味わうことでしょう。

ガラス張りなので、どの席からも外が見えます。

広々とした店内はテーブル席とカウンター席が。

白が基調の店内

海に向かって設けられたカウンター席もおすすめです。

瀬戸内の自然が目の前いっぱいに広がり、心もふっと軽くなります。

窓を隔てず、風も感じたい!という場合は、屋上へ。

店内とはまた違う絶景が広がっています。

ただし、テーブルがないのでドリンクのみが良いでしょう。

雄大な自然を堪能しながら飲食ができる⑤Deli Ojigadake。

王子が岳レストハウスを盛り上げるため尽力してきた倉敷市観光課の矢吹健太やぶき けんた)さんと、マルゴデリを運営する代表取締役 平野裕治ひらの ゆうじ)さんに話を聞きました。

岡山県内でコーヒーやフレッシュジュースを販売するマルゴデリ。

8店舗目の⑤Deli Ojigadakeは、今までの店舗とは雰囲気が大きく異なります。

王子が岳レストハウスを盛り上げるためトライアル・サウンディングの実施などをとおし尽力してきた倉敷市観光課の矢吹健太やぶき けんた)さん。

ドリンクを提供するだけでなく、店をとおして人との繋がりを作る、マルゴデリの代表取締役 平野裕治ひらの ゆうじ)さん。

お二人にインタビューをしました。

インタビューは2023年6月の初回取材時におこなった内容を掲載しています。

王子が岳を広めるきっかけになってほしい

──王子が岳レストハウスに常設の店舗、⑤Deli Ojigadakeができたんですね。

矢吹(敬称略)──

王子が岳レストハウスは倉敷市が所有する施設です。

建物を保持するために、施設の活用法を民間事業者と一緒に考える手法のトライアル・サウンディングを2020年からおこなっていました。

写真左が平野さん、右が矢吹さん

イベントや店をするために王子が岳レストハウスを無料で貸していました。

しかし使われたのは観光シーズンや週末でして。

本当は閑散期も、すき間なく開けてほしいと思っていました。

常にひとがいてくれたほうが賑わいもあるし、観光案内もできますし。

そして今回、建物の建て替え時期まで⑤Deli Ojigadakeさんが入店されることになりました。

店長の堀部祐希(ほりべ ゆうき)さん。シーズンに関係なく、定休日を除き毎日店を開けています。

──建物の建て替え時期は決まっているのですか?

矢吹──

建て替えの時期は未定です。

建て替えをするからと空けておくのではなく、景色がいいので、せっかくなら活用したいと思っています。

景色を眺めているだけでも癒される場所ですよね。

内装は、マルゴデリさんにおまかせしました。

もともとあった椅子も自由に使ってもらっています。

張り紙などがあったんですが、空間づくりの邪魔にならないように、取りました。

マルゴデリさんに床を磨き上げていただいて、見違えるほどきれいになりましたし。

マルゴデリさんが望む形になっていればうれしいです。

⑤Deli Ojigadakeさんをとおして、たくさんのひとが来て王子が岳を知って、児島や倉敷・玉野・瀬戸内のエリア全体へ興味が広がっていくきっかけになってほしいですね。

前はここにちらっと寄るだけだったのが、お店があるからじっくり滞在して、景色を眺めてくださればうれしいです。

まずは景色を、ついでにジュースを

平野(敬称略)──

僕はお客さまに、まずは瀬戸内海を、景色を見てほしいですね。

瀬戸内海や他の海を眺められる場所は日本にたくさんありますけど、こういう島が転々とした景色はなかなか珍しいと思うんですよね。

この王子が岳からだと瀬戸大橋の全体を見渡せますし、香川県まで見えます。

建物の周りにも自然があふれていて、たとえば桜があるんですよ。

休日にはパラグライダーが飛んでいて、自然を満喫しているかたもいます。

店内はもちろん、屋上からの眺めも最高で。

この景色を求めて来たついでに、うちの地場の食材を使ったジュースを飲んで「岡山」ってものを味わっていただくくらいがうれしいです。

景色を見るだけだったら滞在時間は短いんですよ。

ジュースや軽食があると、景色をより長く眺めていただけます。

店内は景色の邪魔をしないように、変に色を入れず、白色で統一しました。

本来なら赤色のロゴは、⑤Deli Ojigadakeではメタリックな色合い

出会いから生まれるメニュー

──他のマルゴデリの店舗と違う点は何ですか?

平野──

王子サンド(おうじサンド)というタマゴサンドが、⑤Deli Ojigadakeのオリジナルメニューです。

2024年4月現在、王子サンドは提供中止しています

玉子は倉敷市の玉島にあるのだ初、醤油は児島の塩田屋醸造場のものを使っています。

塩田屋醸造場さんには「王子が岳で地場の食材を使う店を開くから、醤油を使わせてもらえないか」と直接話に行ったんです。

マルゴデリのコンセプトが「自然なものを食べ、有機的な人のつながりを大事にし、人間らしく感情豊かに生活する」なんです。

この「有機的な人のつながり」は、顔が見えて、手から受け取れて、話ができる、オーガニックな関係を意味しています。

ジュースのレシピはアレンジ自在なので、いい素材があればそれを使って新たな商品ができるんですよ。

今後いい出会いがあれば、新たな商品が生まれるかもしれません。

他に違うところは、「ゆっくり」な点ですね。

ショッピングモール内の店舗はどうしてもスピード重視ですが、ここは違います。

景色をのんびり見てほしいと思っているので、提供もゆっくりなんです。

画像提供:⑤Deli Ojigadake(人気の「本日のカレー」)

店をみんなで作っていきたい

──開店したばかりですが、今後どのような店にしていきたいですか?

平野──

アートや音楽イベントをしたいですね。

気候のいい季節には屋上で生演奏をしてもいいかも。

たとえば、これから頑張っていこうとしているアーティストを呼んで、演奏してもらって。

観客としてきたひとが次はアーティストとして演奏して、とつながっていくとおもしろいですね。

アートでは、背景となる景色とマッチするような絵を飾るのもいいかもしれません。

作家さんの作品を展示販売してもいいですね。

店はまだまだ始まったばかりなので、お客さまみんなで作っていけたらうれしいです。

おわりに

取材をとおして、マルゴデリの平野さんも倉敷市観光課の矢吹さんも店からの景色に愛着があるのを感じられました。

他にはない、王子が岳の大パノラマを地元の食材を使ったドリンクや軽食を味わいながら眺める…ぜいたくですてきな時間の使いかたではないでしょうか。

1日のなかでも色味や表情が変わる王子が岳の景色を眺めながらゆったりと過ごしたいものです。

⑤Deli Ojigadakeからでしか見られない特別な景色や空間、時間の流れを感じられることでしょう。

店はまだまだ進化中。

お客さんと一緒に店づくりをしていく、⑤Deli Ojigadakeの今後に注目したいですね。

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