海で直ちに分解開始、群馬大学が新プラスチック開発

群馬大学食健康科学教育研究センターの鈴木美和助教らは、プラスチックの分解酵素を出す微生物を休眠状態で埋め込んだ新しいタイプの海洋分解性プラスチックを開発した。世界的な環境課題に浮上している海洋プラスチックごみ問題解決の切り札になると期待されそうだ。

群馬大学によると、生分解性プラスチックの大半は土壌中だとすぐに分解が始まるものの、海に出るとなかなか分解が始まらず、十分に生分解性を発揮できない欠点を持つ。

そこで、鈴木助教らは分解酵素を出す微生物をあらかじめ、休眠状態で内部に閉じ込めたプラスチックを開発、素材が古くなった段階で微生物が急速に増殖して分解酵素を産出するように設計した。この微生物は休眠状態なら、高い熱安定性を持つため、プラスチックを溶かしながら練り込むことができる。

その結果、海洋中に放出されても土壌内と同様に高い生分解性を発揮する。海洋プラスチックごみ対策としてはこれまで、分解しやすい構造を組み込むことが研究されているが、微生物の練り込みで海洋生分解性を高める事例は世界で初めてという。

環境保護団体WWFジャパンによると、世界の海に存在するプラスチックごみは1億5,000万トンに達し、毎年800万トンが新たに流出していると推計されている。分解されないプラスチックごみが海の生態系に深刻な影響を与えていることが分かり、対策の促進が求められている。

論文情報:

【Polymer Degradation and Stability】Control of marine biodegradation of an aliphatic polyester using endospores

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