放出は各国専門家の放出過程チェックオープンに

 政府は東京電力福島第一原発事故で日々増え続ける放射性物質の汚染水のALPS処理水を「安全性の確保や風評対策の取組み状況を政府全体で確認した上で判断し放出する」(岸田総理)として、この夏の放出方針を変えていないが、1日に発生する汚染水は94トン~150トンあり、今年6月29日現在、約133万8000トンのALPS処理水やストロンチウム処理水がタンクに貯蔵されている。東電はALPS処理水を海水に薄め、年間22兆ベクレルの範囲内で海洋に放出する計画。

 ただ廃炉には30年から40年かかることから、この間にも新たに汚染水は約100万トン増えることになる。

 国際環境NGOグリーンピースは「いったん放出された放射性物質は二度と回収されることなく、海流にのって世界中の海に散らばっていく。そうした放射性物質は海水の中で薄まっていくだけでなく、他の化学物質と同じように、海の食物連鎖のなかで起こる生体濃縮によって濃度を高めていく可能性もあると懸念。一方、日本政府は「トリチウムは生体濃縮されない」としている。

 グリーンピースは「ALPS処理でも『炭素14』と『トリチウム』は取り除けない」としたうえで「炭素14の半減期は5730年」と指摘。「炭素14は人間の細胞DNAを損傷する可能性がある」と警鐘を鳴らす。

 そのうえで「欧米で運用されているより高精度な多核種除去設備で限界まで放射性物質を取り除いた汚染水を、現行のタンクよりも堅牢で大型のタンクに移し、さらに高度な除去技術を開発するのが今の段階での最善の解決策」と提案している。

 政府は「ALPS処理水放出に対するプランが、プラン通りなら国際基準に合致する」とのIAEA(国際原子力機関)包括報告書を「安全性のお墨付き」のように活用している。しかしIAEAは原子力の平和的利用促進を図る立ち位置の機関であることや東京新聞が8日報じたように日本がIAEAに分担している分担金は米国(分担金比率25.25%とトップ)中国(11.15%)に次いで世界3位(8.32%)。加えて人的派遣も行っている。省庁の職員のみでなく、電力業界からの派遣もいわれる。公正中立な機関と言えるのかにも疑問視する声がある。

 放出を強行する場合には韓国の尹大統領が求めるように、懸念する各国の専門家を放出過程でチェックできる体制をIAEA職員のみでなく参加できるようオープンにすることが求められよう。それは国際社会からの放出に対する信用にもつながる。(編集担当:森高龍二)

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