田原俊彦「抱きしめてTONIGHT」のバックで華麗に躍る “BD104” 木野正人の魅力!  トシちゃんやKinKi Kidsの振付も担当!木野正人のダンスの魅力とは?

トシちゃんのバックダンサーとして華麗に魅せる木野正人

ある時期、田原俊彦がテレビに出演し、激しくダンスするのを夢中になって見つめていた頃があった。でも私が見ていたのは、マイケル・ジャクソンを尊敬するトシちゃん… ではなく、その後ろで眩しいほどの光を放っていたジョン・トラボルタに憧れていたダンサーの木野正人だった。

1988年「抱きしめてTONIGHT」が大ヒットしたトシちゃんにはいつも決まったバックダンサーが2人いた。元・ジャニーズの乃生佳之と木野正人の2人。「BD104(バックダンサートシ)」というグループ名もあった。

“のおちん” こと乃生佳之は一時期、実家のうどん店で仕事をしていたこともあり、よく “若旦那” とトシちゃんにイジられていた記憶がある。一方、木野正人は同年、萩本欽一プロデュースによる “歌って踊れてお笑いも出来るアイドルグループ”、CHA-CHAとしてもデビュー。メンバーとして毎週、冠番組も持ち、華麗なダンスを見せてくれた。

少し下がった目尻が可愛らしくてルックスはもちろん、振る舞いもアイドルといえばそうだったかもしれない。けれど私は木野君を一度もアイドルとして見たことはなかった。それは彼のパーソナルな部分ではなく、彼のダンスに魅了されていたから。踊る木野正人が大好きだったからだ。

木野正人のダンスの魅力

トシちゃんがセンター、その後方左がのおちん、右は木野君というのが定位置。トシちゃんと同じ振り付けのときは3人の息もぴったりで、少しのズレもなかった。それはもはや芸術の域だったし、トシちゃんと別の振り付けで踊るときの2人のダンスはもう見事としか言いようがなかった。もうとにかく彼らのダンスの美しさに夢中になって魅せられた。トシちゃんではなくバックで踊る2人を追うのに必死で、「カメラさん、もっと2人を映して!」と何度心の中で思ったことか(笑)。

思えば2人のバランスも非常によかった。ダンス素人なので、詳しいことは語れないけれど、のおちんのダンスは柔軟でバレエダンサーのようだった。しなやかな動きがどこか大人の色気を醸し出していた。一方の木野君は当時10代ということもあって大人になりかけの少年らしさを漂わせつつ、活き活きと踊る姿がとにかくキマッてた! 柔らかなダンスを披露するのおちんと、スタイリッシュにカッコよく踊る木野君のバランスは絶妙だった。

バックダンサーだから出過ぎたパフォーマンスはできなかったけれど、木野君は見せ所として、ダンスしながらコーラス用の手持ちマイクをポーンと高く投げるパフォーマンスを披露することもあった。踊りながらマイクをキャッチ! そんなシーンが見られたのもトシちゃんが容認してくれていたからだろう。そう思うと、木野君ファンとしてはトシちゃんに大感謝だった。

木野君のダンスの魅力は、体の止め方、決め方、手の動き、足の上げ方… と、ド素人の私が語ったところで仕方ないのだけれど、とにかくどれをとっても美しく芸術的。一瞬の間にすらドラマを感じさせられるのは本当にすごかった。そして何より踊る木野君からにじみ出る “踊ることが大好き” という情熱とダンスへのリスペクト… それがテレビの向こう側から強く感じられた。

そんな木野君は90年にアメリカへダンス留学し、CHA-CHAも脱退してしまう。けれどこの決断はファンにとって意外さはなく、 “やっぱり行ってしまうんだな” と思ったのではないだろうか。当時の彼の瞳の先にはいつも憧れの地・アメリカがあったことをみんな知っていたはずだから。

52歳で披露したYouTube「抱きしめてTONIGHT」が話題に

帰国後は、トシちゃんの振付も担当し、現在は故郷の静岡でダンスパフォーマー兼振付師として活動中。2年前にYouTubeチャンネルで、「木野正人が19歳の当時の衣装を着て、52歳で踊ってみた!『抱きしめてTONIGHT』」を披露し話題になった。コメント欄には、

「やっぱり、のおちんと木野君がトシちゃんの最高のバックダンサー」
「また2人に踊ってほしい」

―― などたくさんの声が寄せられている。動画を見て驚いたのは、当時よりもさらにダンスが進化していて、緩急の付け方、表現力に磨きがかかっていたこと。思わず息を呑んだ。しかも50代でありながら体型も変わらず、当時と同じように激しい踊りを披露できることに感心を通り越して感動すら覚えた。そして何より、あの頃夢を追いかけていた青年が、今もこうして大好きなダンスを続けていることが無性に嬉しかった。

田原俊彦という唯一無二のエンターテイナーが生まれた一端に、バックで素晴らしいダンスを見せてくれた2人の存在があったことを忘れたくない。多くの人にショーの素晴らしさ、ダンスの魅力を教えてくれた木野君とのおちん。ダンスを現代に根付かせた彼らの存在は、日本のエンタテインメントの世界にとても大きな役割を果たしたと思う。これからも活躍を見ていきたい。

カタリベ: 村上あやの

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