三位一体の労働市場改革強調もデメリットもある

 岸田文雄総理は都内で22日開催された「令和臨調」で「人への投資を消費につなげ、次の成長につなげ、成長の分配の好循環を実現する」と強調し、そのためには「三位一体の労働市場改革等を行うこと」が重要とアピールした。

 岸田総理の「三位一体の労働市場改革」とは「新たな時代に合わせた学び直しを行うリスキリング、その受け皿となる日本型の職務給の導入、成長分野への円滑な労働移動」だとしている。それは日本の伝統的な年功序列の給与体系や終身雇用から、転職しやすい労働市場への変革を意味している。

実態は企業の「雇用保障・雇用責任」の軽減、社員一人ひとり、自身の力で業績を上げ、社に認められ、勤続年数・年齢に関係なく「給与の高い『職務』に就く」(職務給)社会実現を目指すものになる。

労働者にとって、社員の一体感より、個人磨きに傾斜することとなり、自立心が育つ一方、会社への依存心は弱まり、愛社精神も薄れ、これまで以上に個々の競争社会の路につながることになることは理解しておくことが必要だ。

 岸田総理は今月6日の「新しい資本主義実現会議」で「希望する個人が雇用形態、年齢、性別、障害の有無を問わず、自らの意思で、企業内での昇任・昇給、企業外への転職による処遇改善、スタートアップ等への労働移動といった機会を確保できる社会を作っていく」と語った。これは経団連が求めてきた労働市場に近づけることを意味している。

 岸田総理の「新しい資本主義社会」の実現による労働者にとっての「メリット」「デメリット」(リスク)を慎重に検討する必要がある。(編集担当:森高龍二)

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